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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 知的財産権(7)「企業の特許戦略(その1)」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

知的財産権(7)「企業の特許戦略(その1)」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/01/08

前回は、近年の先進国で支配的となった特許重視政策が成立させる「強い特許」の存在が、実は常にイノベーションを促進する効果を持つとは限らないという話をしました。これは、一国における産業技術のイノベーションに対する効果を俯瞰的にみた議論です。一方、個別の企業にとって、自社の保有する特許は常に強い方が望ましいことは言うまでもありません。企業は強い特許を取得し、その権利を自社のイノベーションを有利に進めていくために行使する戦略、すなわち特許戦略を策定、実行するという課題に直面します。これから何回かに分けて、企業の特許戦略における課題についてお話します。

 まず、特許戦略の目的とは何かについて触れておきます。いま、個別企業にとって強い特許を保有することは常に望ましいと言いましたが、この命題には特許戦略の目的からみて重要な2つの注を付けておく必要があります。
 第1に、どのような技術に関する特許でも、強い特許ならば取得しておいた方が良いというわけではないということです。自社の事業に密接に関連する技術に関する特許でなければ、戦略的に意味がありません。特許を取得する方法には、自ら研究開発を行って新技術を創出した上で特許出願を行う方法と、外部から特許を獲得する方法(例えば、他社が保有している特許を譲渡してもらったり、その特許を保有している他社を買収したりする方法)がありますが、このうち自らの創出した技術によって特許を取得する方法をとるのであれば、どのような技術について研究開発を行うのかに関する意思決定が重要な課題となります。この場合、特許戦略は研究開発戦略と不可分な関係を持つことになります。
 第2に、特許戦略の目的は、単に強い特許を保有すること自体にあるのではないということです。そもそも何のために強い特許が必要とされるのかと言えば、自社の事業を有利に展開し、業績に結びつけるためであり、それこそが特許戦略の目的であると言ってよいでしょう。この観点からみれば特許戦略は、どのような事業を展開するのかという課題、すなわち事業戦略と不可分な関係にあると言うことができます。
 要するに、ここで注意しておきたいことは、研究開発戦略および事業戦略と一体のものとして、特許戦略は立案・実行されなければならないということです。当たり前のことを言っているように思われるかも知れませんが、実は、この当たり前のことを実行できている日本企業は多くないと私は見ています。大方の日本企業にとって、特許戦略の重要性が理解され、その組織的な取り組みが開始されたのは、精々ここ15年以内のことです。そのため、特許戦略ないし知財戦略を担当している部門の組織的な配置をみても、研究開発戦略や事業戦略との連携を意図しているとは思えないケースが見受けられます。

 私は10年前に発表した論文の中で、日本企業を対象に実施した質問票調査のデータを用いて、この点に関する分析を行いました。その結果、明らかになったポイントのひとつは、知財部門の活動がイノベーションに寄与するのは、単に特許の取得や、その権利行使を遂行することによってではなく、研究開発、生産、マーケティングなどに関する他部門との連携を通じて、イノベーション・プロセス全体の中で有機的に働く場合であるということでした。

 その後、2007年に特許庁が『戦略的な知的財産管理に向けて』という冊子を刊行しています。これは知的財産戦略をこれからの課題としている日本企業に向けて戦略のガイドラインを示したもので、その策定に当たった調査研究委員会には私も委員として参加しました。このガイドラインでは、事業戦略、研究開発戦略、知財戦略の間にあるべき関係を「三位一体」と表現し、その関係を深めるための課題が示されています。豊富な事例紹介を含んでおり、いま読んでも興味深い内容になっていますので、特許戦略ないし知財戦略を構想する立場にある方に参照して欲しいと思います。

今回のまとめ: 特許戦略は、事業戦略および研究開発戦略と一体のものとして立案・実行されることが肝要です。

分野: 知的財産 |スピーカー: 永田晃也

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