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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 消費者物価 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

消費者物価

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

13/11/18

日本経済は長期にわたるデフレに苦しんで来たと言われています。デフレとは、消費者物価指数が下がり続ける事です。戦後からバブル期までは、インフレが問題だとされていたのとは正反対になったのです。
物価が下がるのは、消費者としては嬉しいことですが、デフレだから景気が良くならない、と言っている人は大勢います。理屈としては、物価が下がると思えば人々は買い物をせずに値下がりを待つようになるから物が売れなくなる、といった事が言われています。だからデフレは悪いことだ、というわけです。
理屈はその通りですが、実際には、年平均で0.3%程度の物価下落ですから、ほとんど横ばいであって、デフレだと騒ぐほどの事ではありません。海の水を一口飲んだから海の水が減った、と言っているのと同じような話だと思います。
デフレであるか否かはともかくとして、物価が上がらないというのは世界的に見ても珍しいことですし、日本経済の歴史を見ても珍しいことです。
では、どうして物価が上がらないのでしょうか?景気が悪くて値上げが出来ない、という話を耳にしますが、赤字なのに値上げをせずに我慢をしているとすれば、15年もデフレが続いていたのですから、多くの会社が倒産しているはずでしょう。実際には倒産件数はそれほど多くありませんし、企業の利益は過去と比べても悪くないので、景気が悪くて値上げが出来ない、というのはデフレの主因ではないでしょう。
円高で輸入品の値段が下がっているからデフレなのだ、という事も、理屈上は正しいのですが、バブル崩壊前の方がバブル崩壊後よりも円高のペースが速かった事を考えれば、これもデフレの主因とは言えません。
技術進歩でテレビなどの値段が下がっているからデフレなのだ、という面も少しはありますが、バブル崩壊前も技術進歩による値下がりはありましたから、これも主因とは言えません。
消費者物価が上がらない最大の理由は、賃金が上がらない事なのです。たとえば牛丼の値段は、牛肉の値段と牛丼屋の家賃と従業員の賃金の影響を受けます。家賃は、牛丼屋を建てた時の大工さんの賃金とセメント代と土地代の影響を受けます。セメント代はセメント会社の社員の賃金の影響を受けます。人々の給料が下がれば土地を買える人が減るので、土地代も下がるかも知れません。このように、牛丼の値段は様々なルートで賃金の影響を受けているのです。
つまり、賃金が上がらずに済んでいるから、企業は売値を上げなくて済んでいる、だから物価が上がらない、ということなのです。
賃金が上がらない最大の理由は、労働力の需給が緩んでいることです。バブル崩壊後の日本経済は、長期的に低迷していました。需要が足りずに景気が悪い状態が続いていたのです。そうなると企業は人を雇いませんから、働きたい人の方が雇いたい人の数よりも多くなります。そうなれば、労働力の価格である賃金は下がっていきます。これも、下がるスピードはそれほど速くありませんから、下がった事を強調するのはどうかと思いますが、給料が上がらないから物価も上がらない、という事は間違いない所です。
もう一つ、企業が正社員を減らして非正規雇用を増やしている事も物価の安定の原因となっています。これは、正社員よりも非正規雇用の方が、同じ仕事をしても給料が低いので、非正規雇用の比率を上げることによって、企業は人件費を引き下げる事ができるのです。人件費が下がれば、あるいは人件費が上がらずに済めば、企業は売値を上げずに済むので、物価が安定する、というわけです。
さて、アベノミクスは、大胆な金融緩和などにより2年後の消費者物価上昇率を2%にしようとしています。しかし、金融を緩和したからと言って賃金が急に上がるとは考えにくいでしょう。
もちろん、消費者物価を決めているのは賃金だけではありません。たとえば景気が良くなれば、企業は強気になって値上げをするでしょう。しかし、それほど景気が良くなるには何年もかかります。円安で輸入物価が上がれば消費者物価も上がるでしょうが、それも限度があります。従って、せいぜい2年後の消費者物価が1%上がれば御の字ではないでしょうか。
金融緩和で世の中にお金が出回ると、世の中のお金の量と物の量の比率が変わるので、お金の価値と物の価値の関係が変わり、物価が高くなる、という考え方もあります。貨幣数量説と呼ばれているものです。しかし、今回のアベノミクスでは、そうした事は起こりそうにありません。
第一に、日銀が銀行に資金を提供しても、銀行が貸出を増やさなければ、世の中にお金が出回ることにならないからです。第二に、世の中にお金が出回っても、それがタンス預金として眠ってしまったり、もっぱら株や不動産などの取引に使われていれば、牛丼やテレビの値段が上がる事にはならないからです。

まとめ: 消費者物価は賃金の影響を強く受けます。過去20年間にわたって物価が上がっていない主因は、賃金が上がっていない事です。アベノミクスでインフレになるか否かは賃金が上がるか否かにかかっています。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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