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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 稲盛会計学 6・採算向上の原則3 (日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学/岩崎勇)

稲盛会計学 6・採算向上の原則3

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

13/10/31


(1) はじめに
京セラの7つの会計原則、いわゆる稲盛会計学ということで、キャッシュベース経営の原則、1対1対応の原則、筋肉質経営の原則、完璧主義の原則、ダブルチェックの原則、ガラス張り経営の原則について、これまでシリーズでお話ししました。

(2) 採算性向上の原則と時間あたり採算
今日は前回の続きで採算性向上の原則についてお話しします。この採算性向上の原則は、社会貢献をしながら効率的に利益をできるだけ多く獲得するという原則です。投下資本に対する利益の率を示す株主資本利益率について、アメリカでは10%から20%位であることを求められますが、日本では一般に5%から10%とかなり低いのが実状です。しかし、京セラはこれが高くて10%から20%位であることが多いです。しかも設立からの50年以上もの間1回も(期間)損失を出したことがありません。これは採算向上の原則のおかげでしょう。時間当たり採算について簡単に復習しますと、前回ご説明しましたように、「総出荷」である外部販売分と社内の他のアメーバへの販売分、そこから社内の他のアメーバからの購入分を引いたのが「総生産」でネットの生産高です。それから更に原材料費や外注加工費等を差し引いたものが「差引売上」で、付加価値となります。それが採算ですが、それを総時間で割ると「時間あたり採算」が計算できて、それをベースに経営を行います。
1. 総出荷(グロス生産高)-社内買=総生産(ネット生産高)
2. 総生産(ネット生産高)―(原材料費+外注加工費等)=差引売上(付加価値)
3. 差引売上(付加価値)÷総時間=時間当り付加価値(時間当り採算)

(3)  売価還元原価法による経営
製品等の棚卸資産の評価に関して、京セラでは売価還元原価法による経営を行っています。普通は標準原価計算等というしっかりとした原価計算制度を持っていますが、京セラの場合は違います。その理由は、標準原価計算を行うと、標準原価は過去の数値をベースにして、目標的なものを経営者が決定しますが、そこでは主役は製品や原価であり、あくまでも焦点が原価に当たっています。他方、京セラの場合はアメーバ経営なので、主役は人間であり、現在の価格に焦点を当てて、売上を多くして経費を抑え、差額としての利益(或いは付加価値)をできるだけ高めていくことを目指しております。それゆえ、そこでは、原価ではなく、売上等をベースとした利益や付加価値に焦点を当てています。
原価と売価 (また、その結果としての利益) との関係について、普通は原価よりも売価のほうが高いので標準原価計算等でも問題ありません。しかし、もし原価より売価が低くなった場合、標準原価では損失がでるのですが、それでは結局利益がマイナスになり、会社が困ることになります。そこで、京セラでは、どのような売価の状況が生じても、常に一定の利益が確保できるように、売価還元原価法を使っています。この売価還元法とは、売価から原価を還元する(導き出す)という意味です。例えば、売価が100円で原価率が60%なら、原価は100×0.6で60円とする方法です。売価を先に決め、それに値入率や原価率を掛け、原価を計算する方法が売価還元原価法です。売価は市場で決まっているので、常に変動しています。その結果として、どのような売価の状況が現れても、常に一定の利益が確保できるように、例えば、80%のコストで20%の利益を出せるようにする、コスト削減や効率性の向上などの経営努力をするのです。そうすると必ず一定の利益が出るのです。このためには、前述の売価還元法の考え方が経営上非常に重要なのです。

(4)  時間当たり採算制度に魂を入れる
前述のように、時間あたり採算制度は、アメーバ経営にとって非常に重要な制度です。そこで、そのような制度を構築するだけではなく、それが上手く働くように、そこに魂を入れることが重要です。もちろんそれを行うのは経営者の仕事です。そのためには経営者はまず信頼されなくてはなりません。従業員に信頼されないと経営者に従業員が付いてこないのですが、ただ単に信頼されるということにとどまらず、さらに尊敬されることが重要です。そのためには、経営者自ら人格を高めるように常日頃から自己完成の努力をして、信頼はもちろん尊敬されるように自己修練をしなければいけません。アメーバ経営は心の経営ですので、従業員等が同じベクトルに向かうように、経営者は、会議、現場やコンパなどに足繁く通って、従業員に会社の目的や働くことに意義などを熱っぽく語り、アメーバ経営の諸制度に魂を吹き込むことが非常に重要になるのです。

(5)  まとめ
今日のまとめとしては、採算性向上は、心の経営の下で行われるものなので、経営者は、従業員の心の動きを良く理解し、それを企業の競争力や利益に結び付けていかなければなりません。このためには、リーダーシップを発揮する経営者は従業員に信頼され、尊敬される経営者でなくてはいけないということが非常に重要です。

〔参考〕稲盛和夫[2009] 『稲盛和夫の実学 経営と会計』日経ビジネス文庫


分野: 会計 |スピーカー: 岩崎勇

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