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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 人は現状を好み変化を望まない :現状維持バイアス (社会心理、組織心理 /藤村まこと)

人は現状を好み変化を望まない :現状維持バイアス

藤村まこと 社会心理、組織心理

13/10/04


■ 現状維持バイアス
人は,損失に対して臆病です。そのためか,人は何かを失うことを避けて,出来るだけ現状を維持しようとする傾向があるようです。このように,現状がとりわけ不快でなければ,できるだけそこにとどまろうとする傾向を,サミュエルソンとゼックハウザーは,「現状維持バイアス」と呼んでいます。
今日は,そのことについてお話しします。

■ 保有効果
まず,人は所有しているものや状態を,それを所有していないときよりも高く評価する「保有効果」があります。ある実験を見てみましょう。そこでは,実験参加者を2つのグループに分けて,一方には抽選券を渡して,もう片方には2ドルの現金を渡しました。そして好きに交換してもよいと伝えます。しかし,殆どの人が今のままでよいらしく,交換をしませんでした。同様の実験で,最初にチョコレートバーを渡した群とマグカップを渡した群と設定しました。こちらも,別のものに取り替えてよいと伝えますが,9割近くの人が取替えをしないままでした。いずれの実験でも,自分で選んだわけでもないのに,抽選券やマグカップなど,最初に与えられたものに対して,ある程度の満足を示し,それを保有することを選ぶ様子が伺えます。

■ 初期値効果
それではもうひとつ,「初期値効果」を紹介します。これは最初の状態を意味する"初期値"や"デフォルト"をそのまま維持し,継続してしまう傾向のことです。

例えば,自動車保険の例で考えてみましょう。
アメリカのある2つの州では,2種類の自動車保険が選べます。ひとつは,保険料は安いけれども適用範囲が小さい保険で,もう片方は,値段は高いけれども適用範囲が広い保険です。片方の州では,初期設定として,自動車所有者は自動的に安い保険に加入されるようになっていました。もちろん,本人が希望すれば高い方に変更することも可能です。しかし,およそ8割の人が初期値のまま変更をしていませんでした。一方,別の州では,初期設定として高い保険に自動的に加入するようになっていました。そちらも手続きをすれば安い保険に変更可能です。しかし,こちらも75%が初期設定のままだったそうです。このふたつの州で市民の年間支出を比較すると,年間約20億ドル以上の金額の違いがあったそうです。

なぜ人は初期値をそのまま維持するのでしょうか。その理由としては3つが考えられます。
ひとつは,お勧めは良いものだという安心感です。相手や会社が設定しているのだから,おすすめの設定なのだろうと考えてしまうということですね。そして次の理由は,変更や変化のコストです。別の選択肢はどうだろうか,どちらがよいだろうかと考える負担。実際に変更の手続きに必要なコストがありますね。そういったコストは,変更を促さず,妨害する可能性もあります。最後に,現状維持バイアスが考えられます。初期設定は後に"現状"となります。そのため,人は現状を維持し,現状の放棄を回避する傾向があるのではないかと考えられます。

■ まとめ
私たちの日常の買い物や生活にも,初期値効果は存在しているかもしれません。携帯電話やパソコンを買うとき,インターネットでの通信販売など,初期設定で最初から組み込まれているものが沢山あります。会社のおすすめということも考えられますが,変更が大変なので変えずにそのままという方も多いかもしれないですね。「変えたい」と思ったときには,重い腰をあげてみてもよいかもしれません。

また,現状を維持したいという傾向は,組織の中でもよく見られます。会社やチームの中で新しいことをはじめようとしても,人はなかなか変化に適応できません。変革を行う際,この変化への抵抗は避けられないものです。今日お話したように,人は基本的には現状を維持し,変化に対して抵抗を示すのかもしれないですね。

<引用参考文献>
・友野典男 (2006). 行動経済学 経済は「感情」で動いている 光文社新書
・Knetsch, J. L. & J.A. Sinden (1984). Willingness to Pay and Compensation Demanded: Experimental Evidence of an Unexpected Disparity in Measures of Value, The Quarterly Journal of Economics, 99, 507-521.


分野: 心理 |スピーカー: 藤村まこと

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