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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 利得と損失の枠組み :フレーミング効果 (社会心理、組織心理 /藤村まこと)

利得と損失の枠組み :フレーミング効果

藤村まこと 社会心理、組織心理

13/10/03


今日は、フレーミング効果についてご紹介します。
「フレーム(Frame)」とは日本語でいえば「枠組み」を意味します。つまり、同じ意思決定の課題でも枠組み(フレーム)を変えることで見え方が異なります。すると、意思決定の結果が変わる現象が生じます。これをフレーミング効果と呼んでいます。まず、具体例を見てみましょう。

■ 同じ事実をどう表現するか 〜 フレームの違い
みなさんが、健康診断受診後にお医者さんから、手術を受けるかどうか聞かれたとします。あなたは手術を受けようと思うでしょうか。竹村(2009)が示した例を見てみましょう。ひとつは、以下のように聞かれたとします。

「これまで1000人の患者の手術をしてきましたが、950人が5年以上生存しています。あなたは、手術を受けますか」

もうひとつ別のいい方です。こう聞かれたらどうでしょうか。

「これまで1000人の患者の手術をしてきましたが、50人が5年未満で亡くなられています。あなたは、手術を受けますか。」

さて、どちらが手術を受けようという気持ちになったでしょうか。
ひとつめの「950人が5年以上生存している」といわれたほうが受けようと思う方が多いのではないでしょうか。しかし,1000人中"950人"が生存しているということは,"50人"が亡くなっているわけですね。ということは、ひとつめの言い方とふたつめの言い方は,表現の仕方は異なりますが,言っている内容は同じです。ただ生き残っている人数というポジティブなフレーム(枠組み)を用いているのか、亡くなった方の人数というネガティブなフレームを用いているかの違いです。このフレームという枠組みの使い方の違いは,具体的には表現の仕方の違いですね。ささいなことですが,この違いによって、選択肢に対する感情が変わり、どちらを選ぶかも変化するという現象が「フレーミング効果」です。

■ フレーミングによる選好の逆転
フレーミングの用い方は、ときに何を選ぶかという選択や選好の逆転を生じさせます。これも例を見ていきましょう。

ある国で600人の方が亡くなると予想される、とても珍しい病気が流行っています。それに対してどの対策を取るか決めなければならないとします。あなたはどちらを選びますか?

 対策A 200人が救われる。
 対策B 600人が救われる確率は3分の1で、誰も救われない確率は3分の2。

この選択肢の提示に対して、欧米の調査では約72パーセントの方が対策Aを選んでいます。それでは、以下の場合はどうでしょうか。

 対策C 400人は死亡する。
 対策D 誰も死なない確率は3分の1、600人が死亡する確率は3分の2。

このふたつの場合は,多くの方が対策Dを選びます(78%)。
しかし、お気づきでしょうか。選択肢Aと対策Cは同じものです。また,対策Bと対策Dも同じです。ただ,同じことの言い換えですね。これはTvelsky & Kahneman(1981)が行った「アジアの疾病問題」とい呼ばれるものです。

対策Aと対策Cは同じ、対策Bと対策Dも同じ。違いは,対策AとBのときは「救われる」というポジティブな表現(利得場面)を使っていますが、対策CとDでは人が死亡するというネガティブな表現(損失場面)が使われています。このように,フレームがポジティブかネガティブかの違いによって、選択が逆転してしまうのは興味深いですね。

■ 人は利得と損失の捉え方が異なる
なぜこの現象が起こるのでしょうか。人が価値を判断するとき、「助かる」や「手に入る」という利得のフレームと、「何かを失う」や「亡くなる」という損失のフレームでは、価値の感じ方が異なることが分かっています。つまり、人は得る時の喜びの大きさよりも、失う時の悲しみのほうが大きいようです。たとえば、友達を1人見つけたときの喜びと、友達を1人失ったときの悲しみは、同じではなく、悲しみの方が大きいかもしれないですね。そういう意味で、人間は利得よりも損失に対して臆病だと言われています(損失回避性)。

今回の対策ABと対策CDで用いたフレームは、ポジティブかネガティブか、言い換えれば利得か損失かです。中身は全く同じなのに、人にとって重要な利得か損失かという表現を変えるだけで、人の選好や選択は変わる可能性があるようです。

■ まとめ
フレームの用い方や表現の仕方を変えることで、人の意思決定が変化するということは興味深いですね。だまされないように、と気をつけておくことも防御をする上では大事です。また良い用い方として、モチベーションや動機づけにも応用可能です。例えば、何かしらの行動を起こすか起こさないかというとき、何事もよい点と悪い点があります。そのとき、ポジティブな側面や利得の側面に注意を向ければ、そのフレーミングによって、人がやるかやらないかの意思決定が変わるかもしれません。よしやろう、と動機づけを高める上では、ポジティブなフレームをあてたほうが良さそうですね。最終的には、表現や見かけに惑わされず、メッセージの中身、事実の内容をしっかり見て理解できるようになればと思います。


<引用参考文献>
・友野典男 (2006). 行動経済学 経済は「感情」で動いている 光文社新書
・広田すみれ・増田真也・坂上貴之 (2003)  心理学が描くリスクの世界 行動意思決定入門 慶応義塾大学出版界
・竹村和久 (2009). 行動意思決定論 経済行動の心理学 日本評論社
・Tversky, A & Kahneman, D (1981). The framing of decisions and the rationality of choice. 211, 453-458.

分野: 心理 |スピーカー: 藤村まこと

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