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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アンケート調査結果の正しい使い方① (産業政策、通信政策、通信経済学/実積寿也)

アンケート調査結果の正しい使い方①

実積寿也 産業政策、通信政策、通信経済学

13/10/09

アンケートの正しい使い方についてお話ししましょう。

他人を説得するためには、自分の考えを裏付ける様々な証拠を示すことが有効です。証拠として使える材料には様々なものがありますが、その中でも非常に強力なものが数字による裏づけというものです。特に、アンケート調査で得られた数字に基づいて説得力のある議論を展開することは、新聞や雑誌、ひいては企業内の営業会議でもよく見られる光景だと思います。7月の参議院選挙の前にはさまざまなメディアで各政党の支持率が報道され、投票日には午後8時の投票締め切りと同時に出口調査に基づく当落予想がテレビ画面を彩りましたが、あのようなものもアンケート調査の結果です。

新製品の認知率や、サービスへの満足率といったものが明確な数値で示されると、「この製品は市場にウケている」とか「当社のサービスを受けた顧客からは多くの感謝の声をいただいている」といった感覚的な議論では対抗することが難しくなります。そのため、アンケート調査がさまざまな場面で利用されるようになってきています。
アンケート調査を行うために必要な手間や費用が非常に少なくなったこともこの傾向に拍車をかけています。15年くらい前までは調査対象者の住所をいちいち調べて封筒を用意し、アンケート票を一枚一枚封入するという労働集約的な作業が必要だったわけですが、最近ではホームページやメーリングリスト、あるいはソーシャルネットワークを利用してほとんど費用をかけずに多くの調査対象者にアンケートを配布することができます。ウェブ上のアンケート調査を専門に行ってくれる会社もあります。記入してもらったアンケート票の回収にしても、かつては一軒一軒に切手と封筒を用意する必要がありましたが、今ではインターネットを使うので無料で集めることができます。その意味で、アンケートを利用しようという人にとっては本当に良い時代になったといえます。
ただし、アンケートの利用がどれほど簡単になっても、その使い方は正しくなければ意味がありません。19世紀のイギリス人の政治家であるディズレーリという人は、「嘘には三種類ある。嘘と大嘘、そして統計である。」という格言を残していますが、アンケートから得られる統計数値は正しく利用方法を守って使用しないと大きく判断を誤らせることになります。

今日と明日は、アンケートを正しく利用するための注意事項からいくつかお話しようと思います。

まず、当たり前のことですが、アンケートのための質問票を配布する対象を慎重にデザインする必要があります。例えば福岡県民の一人当たりの日本酒消費量を調べる場合、アンケート票を日本国民全体にばらまいて、そこから平均値を求めても意味がありません。そんなことをすれば、飲酒量の水準が異なる他府県のデータが混じってしまうので、正確な値が算出できません。実際、西暦2010年の一人当たりの日本酒消費量の全国平均は年4.96リットル、つまり一升瓶にして3本弱であるのに対し、福岡県は全国平均を大きく下回る3.86リットル、つまり一升瓶2本強です。ですから、全国を対象にしたアンケート調査では過大な統計数値が得られる可能性が高いことになります。福岡県民の平均値を知りたいのであれば、福岡県民だけを対象にしてアンケート調査を行う必要があります。

また、ある製品の市場での認知度や評判を調査するために、その製品の利用者に対してアンケートを実施するという話もよく耳にするところです。でも、そういった調査では、その製品を購入しなかった人の感想が反映されません。製品を購入した人は、品質や価格に納得して購入を決めたはずし、いったん購入した人は自分の選択が間違っているとは認めにくいものです。そのため、現在の利用者に対して実施されたアンケート調査で得られた結果は、その製品の本当の評判よりも高い数値になっている可能性が高くなります。つまり、この場合は、その製品の利用者だけではなく、その製品を利用していない人たちも含めて、理想的には消費者全体にアンケート票を配布して調査を行う必要があるわけです。

つまり、アンケート調査を行う前には、何を調べたいのかをきちんと考えてから、アンケート票を配る必要があるということです。無計画に実施されたアンケートでは欲しい調査結果を得ることはなかなか難しいのです。
さらに言えば、アンケート票を配った相手が、調査したい対象をきちんと代表しているものである必要も忘れてはなりません。インターネットが利用可能になったので、アンケート調査を行う費用は以前と比べればずっとずっと安く済みますが、それでも調査対象全体に配ることは至難の業です。対象全体にくまなく調査を行うことを悉皆調査といいますが、これは大変な手間とコストがかかるので簡単に実施することはできません。お酒の消費量を知るために福岡県民にインターネットアンケートをしようとする場合、県民一人ひとりの電子メールアドレスや携帯電話番号を事前に知っている必要がありますが、そういった情報を県民全員から漏れなく集めるのは大変な作業になり、集められたアドレスが正確なものであるかどうかを確認するコストも馬鹿になりません。
そのため、アンケート票を実際に配布する対象は、ある方法によって調査対象から選択された比較的少数の集団になります。つまり、アンケート調査から計算される平均値というのは、正確に言えば、調査対象となっている集団の平均値ではなく、実際には、アンケート票の配布対象になった人たち、さらに言えば、その中から実際にアンケート票にきちんと情報を記入して返送してくれた人たちの平均値ということになります。ですから、アンケートによって意味のある統計数値を得るためには、調査対象をきちんと代表するような平均値を算出できるような小集団をピックアップすることが重要だということになります。ここで通常利用されるのが「無差別抽出」という方法ですが、なぜそういった方法が有効なのかについては明日の話題にしたいと思います。

分野: 産業政策・通信経済学 |スピーカー: 実積寿也

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