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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > レバレッジ② (企業財務管理、国際金融/平松拓)

レバレッジ②

平松拓 企業財務管理、国際金融

13/10/01

前回に引き続いて、今回も「レバレッジ」と企業の財務の関係についてお話をしたいと思います。

前回、「レバレッジ」というのは、「梃子(てこ)」のことを意味しており、「小さな力を大きな力に変える仕組み」であるということ、そして、経済・経営の世界でも利用されているということをお話しました。今回は、企業の財務における「レバレッジ」、すなわち企業が、相対的に小さな資本を利用して大きな投資を行うための仕掛けについてお話します。

企業財務の世界でいう「財務レバレッジ」とは、「企業の総資産と株主資本との比率」のことです。株主が払い込んだ資本金や企業が過去の利益を蓄積した留保利益などからなるのが株主資本です。企業はこの株主資本に加えて負債、すなわち企業間の信用取引や社債の発行、銀行借り入れなどによって、株主資本の何倍かの資産を取得するのに必要な資金を賄っています。例えば「レバレッジ」が2倍と言った場合、株主資本の2倍の金額に相当する資産を維持している状態ですが、言い換えれば、株主資本とほぼ同額の負債を抱えて、資産への投資をしている状態なわけです。

普通の企業、すなわち営利企業にとってみると、通常、第一の目的は利益を確保することです。そう考えると、株主資本で賄える資産でその十分な利益があげられるのならば、無理に借り入れするなどして資産を拡大する必要がないかもしれません。しかし、目的とする金額の利益をあげるためには、相応の規模の工場設備や、在庫、売掛金などが必要になり、それらの資産をまかなう為には、株主資本だけでは足りないのが普通です。その場合、企業は社債発行や銀行借り入れを行うわけです。債務を増やせば、社債の利払いや借入金の利息の形でコストが増えます。しかし、そのコストが利益に与えるマイナスの影響よりも、大きな資産に投資をすることで得られる利益のプラスの影響が上回る場合には、全体の利益は増加することになります。そのため企業は、マイナスよりもプラスの影響が大きいと考えられる場合には、債務を増やし「レバレッジ」を高めることで利益を増やそうとするわけです。株主の立場から見ても、これは株式の数が変わらずに利益額が増える、つまり、一株当たりの利益が増えるという点では、好ましいことになります。

では「レバレッジ」は高ければ良いのか、ということなのですが、やはりそう単純にはいきません。投資にはリスクが付き物で、レバレッジを高めることで、コストが増える一方で、期待通りのリターンが得られなかった場合、コストがリターンを上回ってしまう可能性も当然高くなるわけです。これは、それだけ企業が倒産する可能性が高まることを意味します。また、企業に倒産されると貸した資金も返ってこなくなるため、「レバレッジ」の高い企業に対しては、貸し手が金利を引き上げてきます。これは企業にとって「コストの増加」を意味しており、さらに損失を出すリスクを増やすことになります。また、損失のリスクが高まれば、その企業の株式も売られ、その意味でも株主の期待を裏切ることになります。従って、「レバレッジ」を上げて利益増を狙うには自ずと限界があるわけです。

それでは、どの程度の「レバレッジ」がその企業にとっては適当なのでしょうか。これは、企業の構造や経済の構造、証券市場の発展度合い、歴史的な経緯などもあり、一概にはなかなか言えず、また業種によっても大きな違いがあります。従来日本では、上場会社の平均のレバレッジは、欧米諸国の企業よりもかなり高い水準にありました。要は、企業が借り入れ中心の資金調達を行っていたのです。ところがバブル崩壊以降、急速に「レバレッジ」が低下し、今では欧米諸国の企業と大きな格差はなくなっています。業種別で言えば、例えば、電力会社など、キャッシュフローの予測が比較的容易な業種では、「レバレッジ」が高めでも相対的にリスクが少ないということがあります。従って、電力会社の場合、「レバレッジ」は高めとなっており、その分大きな設備を抱え、事業を行っています。また銀行は「レバレッジ」が非常に高いのが普通です。これは事業の性格からして、「預金」という形で取り入れた債務を広く分散投資し、非常に流動性の高い資産を保有しているからです。つまり、「レバレッジ」が高くても、全体として見た場合、キャッシュフローが安定しているということがあります。ただし、一旦危機の噂が流れたりすると、負債の主体が短期の資金なので、「取り付け騒ぎ」が生じて一気に資金不足に陥る可能性もあります。そのため、中央銀行による最後の貸し手機能といった、制度的な安全装置が用意されています。

リーマンショックの時、投資銀行や銀行などの金融機関が、本体あるいは子会社を使うなどして、サブプライムローンなどのハイリスクの貸付やそこから発生した証券化商品などに高い「レバレッジ」で多額の投資を行っていたことが、「金融危機」と言われるまでに事態を深刻化させる結果となったとされています。そのため、G20などでは金融機関のレバレッジ規制が金融機危後のシステム再構築のひとつのテーマになっています。

それでは今日のまとめです。「レバレッジ」、つまり梃子(てこ)のことですが、これを利用することにより、企業は大きなリスクと引き換えに、収益の拡大を図ることが可能になります。しかし、高過ぎるレバレッジはリスクを増大させるだけでなく、コストも増加させることから、運用に当っては、適切なレベルにコントロールしていくことが重要です。

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分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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