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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 世界同一賃金① (国際経営、国際物流/星野裕志)

世界同一賃金①

星野裕志 国際経営、国際物流

13/09/17

 アナウンサーという仕事も大学の研究者という仕事も、国を超えれば待遇も違えば、給料も異なるわけですが、どうしてなのでしょう。仕事の内容自体は、各国で大きな差はないのに。
 今年の4月の末だったと思いますが、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井会長が、「世界同一賃金」という考え方を提示されて、賛否の様々な論議を呼びました。その考え方は、店長候補として採用した全世界の正社員と役員をグローバル総合職とし、世界で同一賃金にして、それ以外の社員は給与設計の枠組みを世界で統一するということでした。その根底にあるのは、同じ職位であれば「国籍、年齢、性別関係なしでどこの国で働こうが同じ収益を上げていれば同じ賃金というのが基本的な考え方であって、新興国や途上国にも優秀な社員がいるのに、同じ会社にいても国が違うから賃金が低いというのは、グローバルに事業を展開しようとする企業ではあり得ないということでした。長く温めてこられたアイデアとのことですし、これをコンセプトしてだけではなく、実際に今後導入されるのであれば、非常に興味深い取り組みだと思います。
 この同一労働同一賃金という考え方は、性別、フルタイム、パートタイム、派遣社員などの雇用形態、人種、宗教、国籍などに関係なく、同一の職種に従事する労働者に対して同一の賃金水準を適用するということで、ILO(国際労働機関)では、この原則を基本的人権の一つとして、憲章の前文に掲げています。でも現実を見ると、日本でもそうですが、同じ仕事に従事する人でも、同じ賃金が払われているかというとそうではありません。最近の非正規雇用の増加は、正社員としての負担を軽減する目的で、パート、派遣・契約社員に置き換えられた結果です。
 それではなぜ各国の賃金には格差があるのでしょうか。例えばユニクロのようなテキスタイル業界の最低賃金を調べてみると、JETROによると労働者の月額の最低賃金は、中国の328ドルに対して、ベトナムではその半分の145ドル、バングラディシュでは4分の1以下の74ドルとのことです。1ヶ月働いて得られる給料が約7000円という最低賃金を考えてみると、福岡県の最低賃金の701円の10時間分にしかなかならないとうことになります。
 ユニクロの生産の主体は、以前は中国でしたが、2010年前後からより人件費の安いベトナムやバングラディシュに一部をシフトさせています。多国籍企業がなぜ生産拠点や調達を本社の置かれる国から開発途上国に移すのかと考えると、当然ながら人件費を含む生産コストの安さや労働や安全の基準が、本国よりも緩いなどの理由が挙げられます。
 それについて、開発途上国であれば、生活費も安いから賃金も安いのはあたりまえと、私たちもつい考えがちですが、本当にそうなのでしょうか。最近自殺の相次いだ中国の工場労働者のことでも報じられますが、年齢が若く、地方からの出稼ぎ労働者を中心に生産に従事している工場で支払われる給料は、生活に必要なまさに最低レベルの賃金であり、狭い一部屋に何人もが居住するということも珍しくありません。そう考えると、開発途上国でつくられるから安いと思って受け入れている製品は、単に賃金差で可能になっているだけではなく、労働者に相当な無理が強いられているように思います。
 ユニクロは7月にバングラディシュの首都ダッカに、初めて2店舗を出店しました。そこで販売される商品は当然現地価格になるわけですから、現地では少し高めとは言っても、全体としての売上は低い。その中で本当に先進国と同様の賃金が払われるのでしょうか。そして、販売では店長としてユニクロのグローバル総合職となっても、生産レベルでの賃金が同様に支払われることはありえないと思います。このように店長が日本人であれば、海外駐在員として高い給与が支払われるのでしょうが、いずれバングラディシュ人の店長に置き換わられた時に、どのような待遇になるのか、また生産の現場ではユニクロの直営にはならないものの支払われる賃金は、どうなるのかが大変興味深いです。
 性別、雇用形態、人種、宗教、国籍などに関係なく、同一の職種に従事する労働者に対して同一の賃金水準を適用するという考え方と先進国・開発途上国の賃金格差の意味することについて考えてみました。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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