QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 市場の暴走 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

市場の暴走

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

13/08/30

リーマン・ショックは、市場が暴走する時の恐ろしさを見せつけました。経済学の世界では、「売り注文が買い注文よりも多いと値段が下がる。値段が下がると売り注文が減って買い注文が増えるので、結局売りと買いは等しくなる」と教えていますが、リーマン・ショック後の市場では決してそうではありませんでした。

まず、住宅市場ですが、住宅価格が下がると銀行は住宅を担保とした住宅ローンを貸さなくなりました。人々は住宅ローンが借りられないと住宅が買えないので、住宅の買い注文が減りました。一方で、住宅ローンが返せずに破産する人が増えたので、住宅が大量に競売にかけられました。住宅の売り注文が増えたのです。こうして住宅価格は下がり続けました。

こうなると、買おうと思っている人は値下がりを待つようになり、売ろうと思っている人は値下がり前に急いで売ろうとしますから、値下がりは一層加速します。

株価についても、同様の事が言えます。借金で株を買っている投資家は、株価が下がると不安になった銀行から返済要求が来ます。投資家は借金を返すために手持ちの株を売るので、株価は一層下がります。

そうなると、買い手は値下がりを待つようになり、売り手は売り急ぐので、株価は一層下がります。

景気についても、似たような事が言えます。景気が悪化すると倒産が増えて失業が増えて、失業者が物を買わないので一層景気が悪くなります。物が売れないと設備投資をする会社が減るのでセメントや鉄や設備機械が売れなくなります。

景気が悪化すると赤字企業が増えるので、銀行が融資に慎重になります。そうなると給料が払えずに、あるいは材料の仕入が出来ずに倒産する会社が増えて、景気が一層悪くなります。

また、景気が悪くなると銀行借入が返済出来ない借り手が増えて来ます。そうなると銀行は損失が膨らんで自己資本が減ります。銀行には自己資本比率規制があるので、自己資本が減った銀行は貸出を減らす必要が出て来ます。貸し渋りです。これによって、貸し渋りを受けた会社が設備投資を諦めたり、悪くすると倒産したりするので、景気は更に悪くなります。

景気が更に悪くなると、銀行の不良債権が膨らみ、取り付け騒ぎが発生します。危ないと思われた銀行は、皆が預金をおろしに来るので、本当に倒産してしまうのです。実際には預金者よりも他の銀行の方が行動が素早いので、他の銀行から一斉に返済を求められて倒産してしまう銀行の方が多いのですが、考え方としては同じ事です。

ここで問題は、危ないという噂が出ただけで他の銀行から返済要求が来るので、実際には危なくない銀行でも倒産してしまう可能性がある、ということです。この事が、リーマン・ショック後の事態を悪化させました。

A銀行とB銀行がC銀行に貸しているとします。A銀行は、C銀行が黒字である事を知っています。しかし、B銀行はC銀行が赤字ではないかと疑っています。A銀行は何を考えるでしょうか。「もしB銀行がC銀行に返済を求めたら、C銀行の金庫はカラになり、倒産してしまうだろう。そうなる前にC銀行に返済を求めておこう」と考えるのです。こうして銀行間の貸出が回収されて、米国の銀行の多くは資金不足に悩んだのです。なお、C銀行としては、A銀行とB銀行が返済を要求してくる前に、顧客に対する融資を回収して現金を用意しておく必要がありますから、顧客に対して貸し渋りをします。これが景気を悪化させたのです。

金融は経済の血液だ、という言葉があります。人間は、血液が止まると死んでしまいますが、経済は金融が止まると死んでしまう、という事です。金融は経済にとって非常に大切なのですが、血液と違っているのは、皆が危ないと思うと取引が止まってしまうという所です。事態が悪くなると皆が危ないと思うので、事態が一層悪くなるのです。

こうなると、政府や中央銀行が悪循環を止めるしかありません。中央銀行が大量の資金を供給して銀行の資金不足を補ってあげる、政府が銀行の増資を引き受けて銀行の自己資本比率を増やして、銀行の貸し渋りを止めてあげる、といった事が必要になるのです。

経済学者アダムスミスは、神の見えざる手という言葉を作りました。経済の事は、政府が手出ししなければ神様が上手に調整して下さるから、政府は何もしない方が良い、というわけです。これは、現在でも経済学の基本的な考え方となっていますが、市場が暴走した場合には、そうも言っていられない、ということをリーマン・ショックが教えてくれたのです。

まとめ:市場は暴走する事があります。事態がある程度以上悪化すると、売りが売りを呼ぶなど、悪化が更なる悪化を招く悪循環に陥ります。そうなると、政府などが悪循環を止めるしかなく、大変なコストがかかります。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ