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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 小泉改革の評価 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

小泉改革の評価

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

13/07/09

小泉内閣が推進した構造改革は、不良債権処理、財政再建、グローバル・スタンダード志向、規制改革、民営化など広範囲に及びましたが、その背景にあったのが、無駄を省き、経済を効率化しようという事です。

経済が効率化する事自体は、大変良いことですから、反対する人はいないのですが、問題は、小泉改革が景気の事を気にしなかった事にあります。景気が悪くなっても経済が効率化すれば良いのだ、と考えていたのです。たとえば、駅前商店街の零細な商店は、大型スーパーに比べれば非効率ですから、駅前商店街を取り払って大型スーパーを作れば経済は効率的になります。しかし、零細商店の人々は失業して収入が無くなるので、消費をしなくなります。つまり、需要が減って景気が悪くなるのです。これをどう考えるべきか、大いに議論が盛り上がりました。

経済学の主流派である新古典派は、失業の事を気にしません。失業者がいるという事は、労働力の供給が需要よりも多いという事だから、労働力の価格である賃金が下がっていくだろう。そうなれば労働力の需要が増えて失業者が仕事にありつくだろう、というわけです。今少し短く言えば、失業している人は贅沢を言わずに給料の安いアルバイトでも何でもすればよいのだ、というわけです。小泉内閣は、こうした考え方に立っていたわけです。

一方、活きた経済を見ている人々は、失業問題が実際には深刻で、簡単には解決しない事を知っていますから、「経済を効率化することも大事だけれども失業が増えてしまうような政策は困る」、と考えました。これが大きな論争となったわけです。

失業を気にするかどうか、という立場の違いは、日本経済が何故低迷しているのか、という問題とも密接に関係しています。日本経済が低迷している原因が非効率にあるのならば、効率化を推し進めるべきでしょうが、原因が需要不足にあるのであれば、経済を効率化する事よりも需要不足を何とかする事を優先すべきだからです。

私は、経済予測の仕事に長い間携わって来ました。その経験からすれば、需要が増えた時は景気が良くなって経済が成長し、需要が減った時は景気が悪くなって経済が停滞します。つまり、日本経済の問題は需要不足にあるのです。

経済学者の中にも、需要不足が問題だと考えている人はいます。「生産や供給が非効率な事が問題ならば、物が足りなくなってインフレになるはずだ。しかし日本では物が売れ残ってデフレになっている」というわけです。

一方で、非効率を問題にする人々は、「政府が公共事業を増やすから、多くの人々が効率の悪い建設会社に就職してしまう。公共投資をやめれば、もっと効率の良い会社に人々が就職するだろうから、日本経済全体としても効率的になるはずだ」と主張します。

これは、理屈としてはある程度正しいのでしょうが、日本経済の実情に照らしてみると、的外れだと思われます。

日本経済の中に、効率の悪い会社がある事は確かです。もしも効率の悪い会社が人を雇っているために効率の良い会社が人を雇えない、という事が起きているならば、それは問題です。それならば効率の悪い会社は潰してしまった方が日本のためになるでしょう。

しかし実際には、失業者がたくさんいるのですから、効率の良い会社が人を雇いたければいくらでも雇えます。効率の悪い会社を潰しても、良い事は一つもありません。効率の悪い会社であっても、人を雇い、給料を払っているだけで、日本経済に大きな貢献をしているのです。

こうした考え方を持っている私は、小泉内閣の構造改革に反対でした。景気が悪くなって小泉内閣の人気がなくなって、退陣するのだろうと思っていました。しかし、そうはなりませんでした。それは、米国の景気が好調で、ドル高円安になって輸出が増えたため、景気が良くなったからです。

景気が良くなった事は大変良い事なのですが、おかげで小泉構造改革に対する賛成派と反対派の論争には決着が着かなくなってしまいました。賛成派は、「改革をしたのに景気が良くなったのだから、大成功だった」と主張しますが、反対派は「もしも輸出が増えなければ、改革によって深刻な不況が来ていたに違いない」と主張するからです。

こうして、今でも論争は続いています。日本経済を良くするためには需要を増やすべきか供給を効率化すべきか、という論争です。これを上手く捉えたのがアベノミクスの3本の矢です。金融緩和や積極財政という景気対策と、成長戦略という供給の効率化を両方進めることによって、幅広い人々の支持をとりつけよう、というわけです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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