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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 就職活動のタイミング (産業政策、通信政策、通信経済学/実積寿也)

就職活動のタイミング

実積寿也 産業政策、通信政策、通信経済学

13/06/21

就職活動解禁の時期を遅らせようという動きがあります。私が学生のときは、好景気だったせいもあるのでしょうが、大学4年生の4月になってから企業情報を集めれば十分に就職活動をすることができました。その後、就職活動の前倒しが進み、3年生の後期になると企業説明会などで学生がリクルート姿で講義もそっちのけでキャンパスを右往左往する姿が見られるようになったのがここ数年の状況です。おかげで、学生が大学生として勉強あるいは遊びに勤しむことができるのは3年生の前期までという状況になり、本来の大学入学目的であった専門教育に十分な時間を割くことができなくなっていました。そこで、現在の安倍政権では経団
連、経済同友会、日本商工会議所のリーダーたちと会談し、就職活動の解禁時期を大学三年生の3月からにするよう各企業に働きかけていくことになりました。
ただ、これはあくまで働きかけにとどまるもので、インターネットを利用したコンテンツ産業を行う企業群が参加する経済団体である新経済連盟の代表理事である三木谷さんは会員企業の就活解禁時期を制約しないという意向を示しているそうです。
就職活動を早めることは大学生の勉強時間を奪うことになりますし、加えて、無事内定を得た学生は成績を改善する必要がなくなるため、それ以降、あまり真面目に勉強しなくなる可能性があります。そのため、就職活動を早くはじめることは、大卒学生を求める採用側の要望に反する新卒学生、つまり、大学卒業の資格は持ってはいるものの十分に専門的知識を学んではいない卒業生を企業に送り込むことにつながる可能性があります。現実には採用企業同士が優秀な学生を求めて競争するという側面もあるのですが、今回は、企業側は実は大学の専門知識を十分に備えた卒業生を求めているのではないかもしれないという点から少し考えてみようと思います。

長期雇用を前提としている日本企業は、中途採用が珍しくない欧米企業とは異なり、立派な内部教育のシステムを有しています。そのため、日本では、大学時代の専門と全く異なる職種にダイレクトに就職することは珍しいことではなく、現に大学時代に考古学を専攻し、卒業直前まで北海道で発掘調査をやっていた私の友人はとあるコンピュータ会社のSEとして採用されたりしています。企業内にそういったシステムを有する場合、大学の専門教育課程で何を学んだか、どういう成績であったかはあまり価値を持ちません。むしろ、入社後の厳しく長いトレーニングに真面目に取り組むことができるか否かが重要になるかもしれません。
そういった企業にとって、大卒学生を採用することは、「専門教育を受けた人材を採用する」というよりも「厳しく長い受験勉強を真面目に取り組んだ結果、難関の大学入試に合格した人材を採用する」という意味を持つ行為になります。社内の教育システムで真面目に学ぶことができるポテンシャルをもつ人材を採用することこそが至上命題というわけです。その場合、就職活動時期を早めることに何の問題もありません。加えて、大学生として講義とゼミとバイト、さらには楽しいキャンパスライフを両立させた時間管理能力もビジネスにおいて大きな意味を持つかもしれません。この場合も就職活動解禁を早めても何も失うものはないですし、競合企業の存在を考えれば、入学直後の新入生に就職内定を出す戦略が合理的となります。そういった企業が重視するのは大学で学んだ知識でなく、大学というプロセスを無事に通過したという経験ということになるわけです。
企業の採用基準がこのようなものであるということがわかれば、大学卒業後に良い会社に就職したいと考える側の行動パターンにも一定の影響が表れます。良い大学に入って、落第しないで卒業すれば良いのですから、受験勉強には全精力を傾け、難関校の合格を目指す一方で、大学入学後は最低限の勉強だけを行い、明るく楽しいキャンパスライフを謳歌するというのが最適戦略になります。たとえ大学に入ってからの勉強についていけず高い成績を収めなくても、卒業さえすれば大丈夫ですから、「高望み」は合理的な大学選択基準といえるかもしれません。とにかく、難関と言われている大学に入学し、あとは落第さえしなければ目標は達成できるのです。私の友人の例からも明らかな通り入社後の職種転換は問題ありませんから、「入学できる限りの難関」であることが重要で、学部・専攻などは重要ではないということになります。入学後も必要な講義、面白そうな講義ではなく、楽に単位がとれるいわゆる楽勝科目を選択することが合理的です。このように考えると、「日本の大学生は遊んでばかりで勉強しない」とか「大学生活は4年間の夏休み」という巷の評価は、もともとは企業の採用戦略に、さらには人材の内部育成をベースにする日本型の長期雇用慣行システムに由来するといっても良いかもしれません。

楽しい大学生活が送れるか否かは企業の人材育成システムの有無によっても左右されるのかもしれませんね。

分野: 産業政策・通信経済学 |スピーカー: 実積寿也

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