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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 京セラの稲盛会計学(2) (日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学/岩崎勇)

京セラの稲盛会計学(2)

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

13/06/04


今日は前回に続いて、京セラの会計の目標等についてお話しします。

1 経営の2つの柱
京セラは経営理念に基づいて企業経営をしていますが、その手段として二つの大きな柱として会計とアメーバ経営を考えています。アメーバ経営については後でお話しますので、ここでは会計のお話をします。

2 会計管理の2つの目標
 京セラでは、上述のように、会計を経営管理等の目的のために使用しています。この場合、会計管理の目的は、①会計管理を通じて、経営理念を経営に反映させること、及び②経営の実態をガラス張りにすることです。

3 会計管理を通じた経営理念の経営への反映
先程お話したように、京セラでは、会計管理を通じて、次のような形で、経営理念を経営に反映させています。
(1) 経営理念
京セラでは、驚くことに会計の基礎にまず経営理念があります。すなわち、アメリカ流の株主価値の向上とか、企業は株主のためにあるということを言いません。非常に日本的で、企業は全従業員の物と心、つまり物心両面の幸福を追求するということを経営理念として掲げております。経営目標の相手(対象)が株主ではなく、従業員です。しかもその幸福を追求することです。この場合物心両面の幸福、すなわち経済的豊かさと心の豊かさ・幸福を目指しています。
企業経営をする場合、企業は法的には存在しても、それには実体がなく、それを動かしているのは人間・従業員です。もちろん経営者をトップとして従業員が幸せにならない限り、他の人は幸せになれません。まず会社は従業員を幸せにして、従業員は顧客等を幸せにします。一般に会社はお客さんを幸せにするとよくいいますが、実はその前に従業員が幸せでないとお客さんを幸せにはできません。従って、会社は従業員をしっかり守るので、その代わり従業員はお客さんを大切にして下さいという2段構えのスタンスです。一般的に直接言っているのは、真ん中の従業員を省略して軽視しているのです。会社は従業員を守るので、従業員は安心してお客さんに大いに喜んでもらうように一生懸命努力しなさいというのが経営理念であり、企業の価値観や人間観です。
(2) 会計思想
次に、前述の経営理念をベースに会計思想を考えます。人間には、心が強い場合と弱い場合とがあります。従業員が連帯し、一生懸命仕事に励んでいる場合には、心は非常に強いのです。反対に、心の弱い面が出たときに、不正などに繋がります。そこで、この心の弱さを前提に正しさを追求するということが会計思想です。
(3) 会計原則
(2)のような会計思想、すなわち人間は心が弱った時に不正を行う可能性・危険性があるということを前提に、これを未然に防止するような原則(会計原則)が必要となります。従って具体的な会計原則は、従業員或いは経営者を含めて間違いを起こすものだという前提の下に、彼らを守るために間違いを起こさせないシステムを作ることです。これは、人間性悪説ではなく、反対の人間性善説に基づいて、従業員を犯罪者にさせないようにいるのです。その為に、あとで(後日)説明する会計原則があり、会計管理を通じて経営を行っていくことなのです。
(4) 経営
最後に、前述の会計原則を実際に適用することによって、会計管理を通して経営理念を経営に反映させていきます。
 ①経営理念 → ②会計思想 → ③会計原則 → ④経営

4 経営管理の四つの特徴
京セラの場合は、上述の会計管理について、次の四つの特徴があります。
第1は、「心の弱さの認識」です。すなわち、前述のように、人間は心が弱まった場合に、不正等を起こす可能性があるという前提を認識していることです。
第2は、「数字の重視」です。すなわち、客観的な数値で管理をするという数値の重視です。
第3は、「価値観・フィロソフィの重視」です。すなわち、価値観や哲学を重視して会計管理や経営を行うことです。
第4は、「数字と価値観・フィロソフィーの統合」です。すなわち、数値を非常に重視するという米国流のやり方や反対に精神論等を重視する日本流のやり方という両者の良い面を統合し、価値観・哲学を重視しながらも、同時に客観的な数字に基づいて会計管理や経営を行おうとするものです。

5 管理会計の使命:四つの正しさの追求
京セラの会計では、会計管理の目標を達成するための会計管理の使命として、次の四つの正しさの追及をしています。
第1は、「倫理性の追求」です。これは、職業倫理或いは企業倫理と言われます。倫理教育が必要で、会計や普段の行動において倫理的な正しさ或いは公正公平さを追求するということが基本となります。
第2は、「正確性の追求」です。これは、当然ながら会計数値の正確性を追求することです。当然のことが当然として行われていれば、不正は起こりませんが、それがなされてないことが多いので、その会計情報の数値の正確性を追求するということです。
第3は、「透明性の追求」です。これは、経営や会計数値をガラス張りにするということです。経営者は当然会社の状況を知っていますが、従業員にも知らせて一緒に頑張るということです。もちろん外部への開示なども含めて透明性を追求していくことです。
第4は、「規範遵守の追及」です。これは、社内外の規則を遵守して必ずその規則に従うことを要求するもので、非常に重要なことです。このことによって信頼が生まれます。継続的に成長していく為には、信頼性や健全性といった会計管理の使命が非常に重要です。

4 まとめ
このように、京セラ会計(管理)の目的は、会計管理を通じて、経営理念を経営に反映させること、及び経営の実態をガラス張りにすることであり、この目標を達成するために、前述の4つの特徴を持った会計管理手法によって、四つの使命を追求するものです。この場合、次回以降に説明する七つの会計原則が使用されます。これによって会計管理により経営理念が経営に反映され、従業員の物心両面の幸福を追求すると共に、企業のコンプライアンスと効率性とを同時に達成しながら、永続的な発展を可能にします。

〔参考〕
青山敦[2012] 『京セラ 稲盛和夫 心の経営システム』日刊工業新聞社
稲盛和夫[2009] 『稲盛和夫の実学 経営と会計』日経ビジネス人文庫


分野: 会計 |スピーカー: 岩崎勇

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