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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 産学連携におけるマーケティング(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

産学連携におけるマーケティング(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/06/20

・前回も話したが、そもそも、大学で生まれる基礎的な科学技術の成果は、どのように世の中で役に立つのか、イメージすら明確になっていないことが多い。

・今日は事例として、スタンフォード大学で1970年代に発明された遺伝子組み換え技術のマーケティング活動を紹介したい。

・1972年、スタンフォード大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者だったコーエンとボイヤーが、遺伝子組み換えの方法を考案して論文で発表した。

・当時、スタンフォード大学の技術移転オフィス創設者のニルス・ライマースが、そのことを報じる新聞記事を目にした。ライマースは、どのような商業化が可能かは不明だが、遺伝子組み換えが産業に大きなイノベーションをもたらすのではないかと直感的に思い、早速コーエン教授に会いに行って特許出願手続を行った。(ちなみに、知的財産について解説した際に、学会や論文で発表すると「新規性」が失われるので原則としては特許が取れなくなるが、アメリカは1年間の猶予期限があるので、この「遺伝子組み換え特許」はギリギリのところで特許出願を完了できた)

・さて、特許出願を終えたライマースは、どのようにこの技術をマーケティングし、ライセンスすべきかを考えた。ざっと用途を考えただけでも、医薬品、診断薬、実験用試薬、発酵などの化学プロセス・・・、広い範囲で基盤的に使われる技術なので、独占権を付与すべきか否かは慎重な判断が求められる。

・ライマースは、大手医薬品メーカーの担当者の意見なども聞いて、最終的に、非独占ライセンスとし、その条件を用途に合わせて4種類設定することとした。

・ただ、非独占の場合、広く企業にこの技術のことを知ってもらわなければならない。(この段階では、遺伝子組み換え技術が本当にどの程度社会に普及するかは不明だった)

・そこでライマースが取った方法とは、ネイチャーやサイエンスといった有名な科学雑誌に、広告を出すということだった。「スタンフォード大学は遺伝子組み換えの技術を次の条件でライセンスします。契約期限は1981年12月末、期限までに1万ドルの契約金の小切手を送付のこと。」といった内容。

・有名な科学雑誌は、企業の研究者も日常的に目を通しているので、彼らを「実用化を担うユーザー層」と想定したのだ。また、大学の研究者がこの技術の存在を知れば、自分でも研究を行うために試薬メーカーから試薬を買いたいと思うようになる、つまり、研究者コミュニティで遺伝子組み換え技術の需要を喚起することにもつながる。

・結果的に、81年の8月に広告を出し、その年の年末の〆切までに、75社がライセンスを申し込んだ。それだけで、75万ドル(7千5百万円)の収入を得たことになる。最終的に、この遺伝子組み換え技術は、450社以上にライセンスされ、2.5億ドル(250億円)ものライセンス収入を大学にもたらした。

・この事例は、大学の技術移転では伝説的な事例となっている。それは偶然ではなく、ニルス・ライマースというマーケッターによる周到な戦略と行動で実現したのだ。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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