QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 京セラの稲盛会計学③ (日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学/岩崎勇)

京セラの稲盛会計学③

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

13/06/12

(1) 京セラ会計学
前回は、京セラの稲森会計学という経営活動に非常に有用な会計についてお話をしました。これは、下記の図のように、経営理念を、会計を通して経営に反映させるというもので、最も前提となるのが、全従業員の物心両面の幸福を追求するという経営理念です。
 稲盛会計学の体系
①経営理念 → ②会計思想 → ③会計原則 → ④経営
この経営理念を前提として、会計思想としては、人間の心には弱い面も強い面もあるのですが、特に心の弱い側面を前提として、不正を起こさせないように、従業員の行為や処理等の正しさを追求します。これを現実的に規定しているのが、すぐ後で見る一対一対応の原則等の会計原則で、それは、きっちり間違いなく、会計処理等を行い、経営の真実の姿をありのまま決算書等に反映させるというものです。これを行うことで、経営理念を経営に反映させることが出来るという体系となっています。

(2) 七つの会計原則
稲森氏は、経営のために次の七つの会計原則を示しています。
1 キャッシュベース経営の原則
2 一対一対応の原則
3 筋肉質経営の原則
4 完璧主義の原則
5 ダブルチェックの原則
6 採算向上の原則
7 ガラス張り経営の原則

(3) キャッシュベース経営
第1の会計原則は、「キャッシュベース経営の原則」です。普通の会社経営は、会社の目的が社会に有用な商品・サービスを提供する対価として利益を追求することですので、利益を上げることを目的としています。これは、利益をベースにした経営をしているといえます。利益をみるためには、財務諸表を作ればいいのですが、時間的に遅くなり、経営判断には、必ずしも有用であるは限りません。それに対して、稲森氏がいうキャッシュベース経営とは、金庫を開ければすぐにわかるような、キャッシュの動きに焦点を当てて経営活動を行うというものです。公認会計士や税理士は、よく決算書を経営者にみせ、利益が出ている旨を伝えます。例えば、100億の利益が出ていると経営者に伝えると、経営者は手元に100億の現金があるのかと思いながら話を聞いてきます。ところが実際には、現金が手元にはないことが多いのです。一体どうなっているのかというと、車や建物等を購入した場合、それらは資産であって費用とはされないので、損益計算書上では、利益が計上されているのですが、貸借対照表において(キャッシュが資産に姿を変えた)資産がたくさんある状況となっています。つまり、これらの資産はお金を払って購入されたものですので、現金が資産に変化している状況を示しており、その結果、利益は計上され、資産はあれども、キャッシュは手元にないという状態となっているのです。

他方、キャッシュベース経営では、現金(キャッシュ)の収支計算を経営判断の一番の基礎におきます。今日の会計は発生主義会計といわれる複雑で、利益とキャッシュとが一致していない会計となっていますが、以前の最も原初的な会計は現金主義会計ということで、現金の収入支出、すなわち現金の出入りの差額で利益計算をしていました。稲森氏はこれに近い形で、キャッシュに着目し、それをベースにして正しい経営判断を行うこと、言い換えると、経営そのものを、経営者の感覚に近い、実際のキャッシュの動きと利益とが直結するようなものに近づけるべきであると考えているのです。

(4) キャッシュベース経営の具体例
すなわち、より具体的に説明すれば、キャッシュベース経営では、できるだけ不要な(キャッシュ以外の)資産をもたないこと、また不要な負債を持たないこと(つまり不要な借金をしないこと)を目指します。例えば、前者の例としては、無理な設備投資はせず、中古の機械等を有効活用したり、不良在庫等をいつまでの資産として計上しておくのではなく、実体に合わせて損失で処理をすること等があります。また、後者の例としては、例えば、無借金経営があります。無借金であれば、銀行などの借入先からの圧力がかからないため、経営者が思い通りに経営を行うことができますし、また、借金返済のための金策のために経営者が飛び回る必要もなくなります。

また、キャッシュベース経営では、例えば、キャッシュの在高に応じた設備投資やキャッシュの回収可能性を考慮して借入を行うこと等も行われます。このような設備投資や借入金の返済を考えた場合、そのために使える資金(キャッシュ)は利益と減価償却があります。例えば、車を購入すると、これは資産計上ですので、購入するときには支出があります。しかし減価償却によって価値が減少すると、費用化して行きます。費用化した段階では、費用は計上されますが、キャッシュの支出はありません。こうしたものがキャッシュとして手元に残るので、このキャッシュをベースとして投資などを行っていきます。

このように、キャッシュベース経営では、会計上の利益と手元のキャッシュとの間に介在するもの(すなわちキャッシュ以外の資産負債)をできるだけ無くした経営を行うことを目指しています。

(5) キャッシュベース経営と自己資本比率
また、できるだけ借金や無理な投資をしないで経営をしていくためには、利益を計上することによって内部留保を高めて、これにより自己資本比率を高めていくことが重要だといいます。こうした経営こそが、稲森氏がいうところのキャッシュベース経営なのです。

(6) まとめ
今日は、稲森氏の七つの会計原則のうちの一つである、「キャッシュベース経営の原則」についてお話しました。黒字倒産等を未然に防止し、健全な経営をおこなうためには、キャッシュをベースに経営を行うことが一番合理的です。

〔参考〕 稲盛和夫[2009] 『稲盛和夫の実学 経営と会計』日経ビジネス文庫

分野: 会計 |スピーカー: 岩崎勇

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ