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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 電波のオークション (産業政策、通信政策、通信経済学/実積寿也)

電波のオークション

実積寿也 産業政策、通信政策、通信経済学

13/04/12

オークションという取引形態があるのはご存知ですね。

サザビーズで開催される美術品のオークションは有名で、昨年5月にはムンクの名画「叫び」に1億1990万ドル(約111億円)という高値がつきました。そこまでの高値は望めないかもしれませんが、いらなくなった日用品をネットオークションで売って、思わぬ臨時収入を得た人も多いかもしれません。こういった場合、オークションの大きな目的は、できるだけ高値で入札してもらい、売り手が最大の収入を得ることにあります。
では、電波のオークションの場合も同じでしょうか?スマートフォンの爆発的普及で、携帯電話サービスに対する需要が大きく伸びています。携帯電話サービスを行うためには電波が必要ですが、みんなが勝手に電波を使いだすと、混信が発生して、通信ができなくなります。そのため、電波を利用する場合には、政府が利用する権利を電波免許という形で与え、利用者間の交通整理をすることになります。一つの電波免許に複数の利用申し込みがある場合には、政府が調整するというのがこれまでのルールでした。電波オークションというのは、そういった場合、つまり、一つの電波免許に複数の申し込みがあった場合に、オークションの仕組みを用いて、誰に電波免許を与えるのかを決定する仕組みのことです。

この場合、大切なことは、電波というのはそもそも国民全体の資産であり、電波を与えるのであれば、最も有効に利用してくれる人に与えるべきだという原則です。スマートフォンの時代には電波は貴重な資源ですから、無駄にしたり、非効率に利用したりということでは社会全体にとって大きな損失になります。

では、有効に電波を利用するということはどういう意味でしょうか?携帯電話事業の場合は、より多くの利用者により高品質なサービスを、より低コストで提供できるということになります。このことは競争市場においては、最も効率的に電波を利用できる事業者は、最も儲かる事業者であることを意味します。では、事業者の立場にたって考えてください。ある電波免許を得られたら、10億円の儲けを得ることができるとすれば、その免許のオークションにはいくらまで払うことができるでしょうか?電波免許を落札できなければ携帯電話ビジネスを行うことができず儲けはゼロになりますから、電波免許の落札金額を差し引いた儲けがゼロ円以上であればOKと考えるのが合理的です。つまり、10億円の儲けが予想できるのであれば入札金額は最高10億円です。儲けの予想が20億円であれば、最高20億円まで入札に参加できます。もちろん、最高額まで入札すれば儲けはゼロになりますが、例えば、値段が上昇するに連れて入札者の数が減っていく競り上げ型のオークションであれば、自分が残り2名の入札者に残り、その後、相手より1円だけ高い入札額を提示すれば落札できますから、必ずしも自分の儲けがゼロになる最高額まで入札を続ける必要はありません。この場合、最も効率的で、最大の儲けを予想していた入札者は、二番目に効率的な事業者の最高入札可能額と、自分の最高入札可能額の差に等しい儲けを確保できるわけです。

このように、電波オークションは入札額がつり上がるプロセスを通じて、最も儲ける力を持った携帯電話事業者、つまり最も電波を効率的に利用できる携帯電話事業者を選びだす仕組みです。ポイントは、効率的な事業者の選抜が、政府の関与なしにできるということです。技術が急速に進歩し、市場も大きく変化しつつある今日、霞ヶ関の官僚には10年後の市場を正確に予知することはできません。そこで、数多くの民間事業者自身の知恵と予想を使って効率的な将来の産業の姿を描こうというのがオークションなのです。

電波を売ることによる収入を最大化することは実は二の次です。詳しい説明は省きますが、落札金額が高騰して政府が大きな収入を得ても、落札金額がそれほど高くならず携帯電話事業者に大きな収益が発生しても、日本経済全体としてみれば同じです。つまり、有限な資源である電波を有効に利用することで、得られた収入をどう分配するのかは、別の問題だということです。
電波オークションについて様々な立場から様々な意見が表明されていますが、私たちが日常生活で経験するオークションとはその目的が大きく異なりますから、私たちは十分に注意して、そういった意見を判断する必要があるわけです。また、貴重な資源は電波にかぎりませんから、そういった資源を効率的に分配するためにオークションという仕組みを利用する可能性について考えてみてもよいと思います。

分野: 産業政策・通信経済学 |スピーカー: 実積寿也

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