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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > パナマ運河拡張後の世界貿易への影響 (国際経営、国際物流/星野裕志)

パナマ運河拡張後の世界貿易への影響

星野裕志 国際経営、国際物流

13/04/19

 昨年11月のこの番組で「国際輸送の変化」として、パナマ運河を取り上げました。パナマ運河は、来年2014年に建設から100周年を迎えます。現在一日平均40隻の船舶がパナマ運河を通行しています。年間にすると、約1万4千隻の船で約2億トンの貨物がパナマ運河を通じて輸送されるまさに世界の貿易の大動脈であるといえます。パナマ運河を利用する理由は、北米から南米までで地形的に最も幅の狭い全長約80キロの運河を横断することが、大西洋から太平洋、またその逆を結ぶ最短のルートだからです。船の大きさにもよりますが、1隻あたり2,000〜3,000万円の通行料を支払っても、通過するのは時間の短縮や燃料の大幅な節減が可能になるからです。2010年9月には、通算100万隻目の船舶が通過したそうです。

 来年の100周年には若干遅れそうですが、現在パナマでは2007年から始まった拡張工事が急ピッチで進められており、この工事が完成すれば、現在よりも幅も全長も水深もはるかに大きい船舶が通過できるようになります。拡張工事は、太平洋と大西洋の両方の運河に入る航路を深くする工事と、太平洋と大西洋側で水位を変えるロックと言われる装置を並行して建設しています。

 運河には、26メートルの高低差があるために、3段階で水位を変えていく必要があります。私も大西洋側から太平洋側に向けて、実際に、船に乗ってきましたが、このシステムのダイナミックさとそれが1世紀も前に建設されたことには驚かされました。

 現在のパナマ運河を通過できる最大の船舶をパナマックス(=パナマのマキシマム)と呼んでいますが、これが全長で294.1メートル、幅で32.3メートルであるとすれば、拡張工事後には全長366メートル、幅49メートルの船が通過できることになります。幅が約1.5倍になるといわれてもあまりピンと来ないかもしれませんので、具体的な例を挙げてみます。コンテナ船は、穀物などを輸送するバルカーという貨物船と共にもっともパナマ運河を通行していますが、コンテナ船であれば、現在の最大積載量の4500個から、12,000個に3倍くらいの輸送能力ある船舶が航行できるようになります。

 完成すると世界の貿易に大きな影響をあたえることになるかと思います。その理由の一つは、パナマ運河がボトルネックになって大型船が通行できないために、アジアからの北米向けの貨物の多くは、現在北米の西海岸の港で陸揚げされて、列車で北米東岸やメキシコ湾岸に輸送されています。それが今後は、直接パナマを超えて輸送されるようになることです。さらに今話題のシェールガスですが、主にアメリカの東岸や南部で産出されており、オバマ大統領がアメリカからの輸出を許可することで、パナマ運河経由で日本に輸出される可能性が高まってきました。そうなると日本のエネルギーの中東への依存や、従来の液化天然ガス=LNGの調達ソースが多様化することになります。これもパナマ運河の拡張で初めて可能になります。

 またそれだけではなく、パナマ運河を巨大なコンテナ船が通過することになり、その太平洋岸の入口であるバルボア港や大西洋岸の入り口であるクリストバル港でも貨物の積み下ろしをすることになれば、中南米との貿易の可能性が一層拡大することになり、原料調達地としてあるいは市場としての中南米がクローズアップされることになるかもしれません。日本にとって、中南米は従来それほど市場として重視されてはいませんでしたが、今後は大きくかわるかもしれません。来年以降に控えたパナマ運河の拡張工事の完成によって、世界の貿易構造が変化する可能性を秘めていると思います。

分野: 国際ロジスティクス |スピーカー: 星野裕志

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