QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 海運業の集積としてのパナマ (国際経営、国際物流/星野裕志)

海運業の集積としてのパナマ

星野裕志 国際経営、国際物流

13/04/18

 先日パナマに出張してきました。一度行ってみたいと思いながら、ようやくその思いが実現したのですが、いろいろと考えることがありました。おそらくみなさんパナマから連想されるものとしては、パナマ運河とパナマ船籍の貨物船がほとんどではないかと思いますが、まさに運河の経営、経済特区を利用した貿易やパナマ船籍という海運業で成り立っている国であり、2011年の経済成長率は中南米で最も高い10.6パーセントを記録したようです。

 今日はパナマの海運業について考えてみたいと思います。一昨年の調査では、世界の貨物船の数の合計は、約10万3千隻で、総トン数で言えば9億6千万トンでした。総トンというには、船の大きさを表す単位であり、船全体の容積ということになります。総トン数で計算してみると、その世界の貨物船の21パーセントがパナマ船籍ということになります。船籍というのは、人に戸籍があるように、船が登録している国ということになり、つまり世界の5隻に1隻がパナマ国籍ということになります。もうひとつよく耳にするのが、リベリア船籍ですが、こちらが世界の11パーセントですから、いかにパナマ船籍の船が多いかということをおわかりいただけると思います。

 ちなみに日本は、世界で13番目で、日本籍の貨物船の数は6,159隻と数こそ首位のパナマの7,986隻に近いですが、さきほどご説明した総トン数で世界の船籍に占める割合は、わずかに1.7パーセントにしかなりません。実は日本の海運企業が所有する船舶の数で45パーセント、先程の総トン数では65パーセントが、パナマに船籍をおいているといわれています。日本を含めた世界の海運企業が、パナマという国に便宜上のペーパーカンパニーを置いて、船舶を登録するには理由があります。それは多くのメリットあるからです。
 
まず海外で船舶を保有し登録することで、登録税や法人税が非常に低く済むということがあります。次に乗員の国籍などが自由であり、その結果パナマ人にこだわることなく、非常に賃金の安い外国人の船員を雇用できます。日本の海運企業が自社の船舶を日本に登録すれば、一定数の日本人を雇用せざるを得ず、その賃金の高さからコスト競争力が低下することになります。例えば、日本人船員の人件費は、フィリピン人の4−5倍といわれていました。それがパナマに船籍を置くことで、自由に船員を雇用することが可能になります。3番目の理由は、安全基準です。日本籍の船舶であれば、国土交通省の定める厳しい船舶の安全基準に適合することが求められますが、パナマのような国であれば、かなり基準が緩やかであり、また船の年齢である船齢についても自由が認められています。

 このように海外の海運企業が、優遇税制、船員の雇用の自由度、緩やかな船舶の安全基準などの便宜的な理由で、海外へ船籍を置いた船のことを便宜置籍船(Flag of Convenience)といいます。パナマ、リベリア、バハマ、マルタ、キプロスなど国内に大きな産業のない国々が、このような制度を考案して、便宜置籍国として世界の海運企業の登録を誘致していますが、その筆頭がパナマになります。船舶の衝突や座礁や油濁事故などの際には、パナマ船籍やリベリア船籍の貨物船などとニュースで耳にすることが多いですが、それらの船のすべてが一概に危険だとは言い切れません。ただ、これらの国に実際に船籍をおいている貨物船が圧倒的に多いことを考えると、確率の問題とやはり基準が甘く十分に管理されていないために、安全性に問題のある船舶が運航されているという問題の両方があるかと思います。便宜置籍国のパナマを支えているのは日本の企業であり、パナマの経済とは大変に緊密な関係にあります。

 今日はパナマ最大の産業である海運業について、中でも「パナマ船籍の貨物船」についてお話をしました。

分野: 国際ロジスティクス |スピーカー: 星野裕志

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ