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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 産学官連携のエコシステム(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

産学官連携のエコシステム(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/04/17

前回は、科学技術商業化に不可欠な地域のエコシステムについて解説しました。今回は、その具体的事例として、アメリカのてオースチン(テキサス州)の事例を紹介します。

オースチンの取り組みは、1970年代に遡ります。テキサス大学オースチン校ビジネススクールのディーンだったコズメツキー博士は、自身がテラダインという大手半導体企業の創業者の一人でもあったことから、科学技術が地域経済に与えるインパクトの大きさに早くから着目していました。そこで、地域のビジネスの活性化と、新事業のインキュベーション、資金提供、起業家の育成を目的として、IC2(アイシー・スクエア)という研究所を1977年に設立した。IC2とは、イノベーション(Innovation)、クリエイティビティ(Creativity)、キャピタル(Capital)の頭文字から名付けられた。

IC2は、従来のビジネススクールの役割とは異なり、実践的な"Think & Do" Tankとして設立されました。初期からオースチンの起業家を支援するために、エコシステム形成を目的に活動し、政府や産業界、大学、投資家を束ねてネットワークのハブとなりました。IC2は、産学官の役割について、次のように位置づけています。

1. 大学
- 卓越した科学と起業家育成教育の提供
- 卓越した科学技術の商業化の促進
2. 産業界
- 大企業のネットワーク
- 新興企業のネットワーク
3. Government
- 科学技術商業化を支援する補助金プログラム
- 起業家支援プログラム
4. その他、資金や見識、インセンティブを持ったグループ

その中でも特に特徴的なのは、ATI(オースチン・テクノロジー・インキュベーター)の運営、およびMSTC(科学技術商業化修士課程の提供)です。ATIは、1989年に設置され、技術を活用した起業家が入居し、IC2のネットワーク(行政、投資家、大手企業、専門職)を利用して短期間での成長を支援しています。近年は、ITやクリーン・エネルギー、ワイヤレス通信、ヘルスケアの領域で起業家による科学技術商業化を支援しています。現在の入居企業は約70社で、20%はテキサス大学の技術の商業化を行いますが、80%は全米の他地域で生まれた技術の商業化が行われています。ATIは、設立以来、2億ドル以上の投資を呼び込み、1億ドル以上の経済波及効果と毎年400人以上の雇用を地域にもたらしました。

MSTCは、1994年に全米初の科学技術商業化に特化した教育課程として設置され、600名以上の卒業生を輩出しました。また近年は、ロシアやポーランド、メキシコにも移転され、各国での起業家育成に貢献しています。当初は、ビジネススクールと切り離しされIC2の中でスタートしましたが(大学のMBAコースと競合するのではといった懸念が学内から示されたため)、2010年にはビジネススクールに統合され、従来にも増して受講者が増え、直近では80名を越える学生が在籍し、1年間の集中的な修士課程で学んでいます。

MSTCでは、"クイックルック"という技術アセスメントのツールが開発されました。これは、大学などの基礎的な研究成果の技術特性や知財取得状況を踏まえて、参入市場分析とその戦略を40~50時間で検討するもので、技術の価値提案を踏まえて、最も適した参入市場を短時間で探索します。このツールは、現在QBSの「産学連携マネジメント」において、習得すべき技術アセスメント手法として取り入れています。

オースチンのエコシステムは、コズメツキー博士のビジョンを産学官が共同で実現した例で、現在、メキシコやポルトガル、韓国などが、その経験に倣ってハイテク産業が集積する地域の形成に取り組んでいます。日本でも、日本の環境に適合的なエコシステムを形成することで、地域の産学官が連携して科学技術の商業化を加速する動きが、今後更に増えてくるでしょう。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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