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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 産学官連携のエコシステム(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

産学官連携のエコシステム(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/04/16

今回は、技術商業化の実現に必要な"エコシステム"について解説します。

科学技術の商業化を実現するには、多様な専門家が協力しあうことが不可欠です。そのような、多様な専門家が存在し、協力しあう環境や仕組みのことを"エコシステム"と呼びます。

エコシステムは、そもそも生態系という意味ですが、サンゴ礁をイメージすると解りやすいでしょう。サンゴ礁には、いろいろな魚やサンゴや海藻、目には見えない微生物など、多様な生物がバランスを保ちながら生存しています。ある種の魚が生きるためには、清浄な海水、餌、外敵から身を守る隠れ家、糞や死骸などの有害物を無害なものに分解するバクテリア(目には見えない)などが必要で、魚は生存に必要なものを周囲の環境から得ながらが成長していきます。

科学技術の商業化を担う起業家や企業内起業家(イントラプルナー)は、新しい技術や特許、情報、資金、支援してくれる仲間(人材)など、必要なものを必要なタイミングで手に入れなければなりません。起業家の周囲に、そのような必要なものが必要なタイミングで提供される環境があるか無いかで、起業家の事業の成功率は大きく変わってくるのです。だから、世界中のハイテクで有名な地域は、地域内にエコシステムを形成しているか、形成しようと努力しています。

エコシステムに存在が必要な要素として、まず先端的な科学技術の研究成果を生み出す大学が挙げられます。大学はエコシステムの中核的存在で、そこから生み出される新しい研究成果は、それまで想像もしなかった新ビジネスに結びつく可能性があります。古くは1980年代に発明された電話も、ボストン大学の教授だったベルによる大学の研究成果で、彼は特許を取得し、AT&Tという有名な会社を設立し、世界中に広まりました。

大学で研究成果が得られたら、それを特許化する弁理士も必要になります。折角の素晴らしいアイデアも、誰でもが使える状態では逆に誰も投資しません。特許で独占が守られるから、安心して投資ができるのです。弁理士は、特許で強力な参入障壁を築く際に専門的で重要な役割を果たします。

起業家が科学技術の商業化の機会を発見したら、それが本当に製品に出来るのか、試作品などを作って試してみなければなりません。その後も、商業化を進めるためには資金が欠かせません。商業化の確率があるていど高ければ、企業が資金提供するでしょうが、確率が低くリスクが大きい段階では、リスクマネーの供給が必要になります。そこで、エンジェルやベンチャーキャピタルが登場します。エンジェルとは成功して財を成した元起業家であることが多く、起業家のアイデアや情熱に共感して、初期の資金を提供します。同時に、創業と成長のノウハウも持っているので、起業家に対して経営のアドバイスも提供します。

ベンチャーキャピタル(VC)は、様々な投資家から資金を集めてファンドを組成し、リスクの高いビジネスに投資を行います。シリコンバレーのVCは、数千億円規模のファンドを組成することも珍しくありません。起業家にとって、エンジェルやVCとの人脈は極めて重要です。

エンジェルやVCが関心を示すに至らず、基礎的な研究に留まる案件の場合は、政府(官)が税金を原資とした開発資金(補助金)を提供することも少なくありません。更には、政府は、地域づくりのビジョンやその実現に向けた計画を策定し、関係者を束ねるという重要な役割を果たします。

更に、起業家が商業化を実現するためには、必要な原材料や部品を供給する会社、あるいは、出来た製品を販売してくれる会社も必要です。そのようなビジネス上の取引相手が地域に多数立地していると、それだけ商業化は楽になります。その他にも、弁護士や会計士、マーケティングやPRの専門家など、様々な専門家の力を借りることで、商業化が前に進むようになります。

上記のような機能を地域のエコシステム内に豊かに持てると、科学技術の商業化は加速されます。世界中のハイテクで有名な地域は、多かれ少なかれこのエコシステムを持っており、あるいは、持とうとして努力を続けています。シリコンバレーは、その最たるものです。起業家が活躍するエコシステムでは、当然失敗例も多数生まれます。しかし、失敗の経験が蓄積されることは、よりよい方法を見出すためには不可欠です。従って、エコシステムをもつ地域は、失敗に寛容な風土も形成します。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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