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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 最近の米国経済 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

最近の米国経済

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

13/03/13

今日は、米国の景気の現状について、御話します。米国は、4年半前のリーマン・ショックで急激に景気が悪化しましたが、その後はだいぶ回復しています。バブルの後遺症も残っていますが、少しずつ緩和されてきました。こうした状況を理解するためには、リーマン・ショック前のバブルに戻って考える必要があります。

2005年頃まで、米国では住宅バブルが起きていました。住宅の値段が上がり、人々は借金をして住宅を買っていました。銀行は、信用力の劣る人々にも積極的に住宅ローンを貸していました。また、米国人は借金が好きですから、値上がりした住宅を担保にして住宅ローンを借り増しして、自動車やヨットなどを買って贅沢をしていました。

住宅バブルが崩壊すると、困った事が3つ起きました。第一は、返済されない住宅ローンが増えて、金融危機が起きました。詳しく話すと長くなりますので、省略して、非常に大雑把ですが、米国中の銀行が貸し渋りをしたのです。借金が出来ずに住宅購入や設備投資を諦めた人が多く、景気が急激に悪化したのです。これに関しては、政府が必死の対応をしたので、銀行の貸し渋りは止まりました。

困った事の第二は、米国人がバブル期に家や車やヨットを買ってしまったために、新しく買う人がいなかったのです。特に住宅は深刻です。住宅ローンが返せない人が増えましたから、銀行が担保の住宅を取り上げて競売にかけました。そもそも住宅を買いたい人が少ないのに、大量の住宅が競売にかかって売り出されましたから、新しい住宅を建てようという人などいなかったのです。そこで、大工さんが大量に失業してしまいました。この状態は、バブルが崩壊して5年経って、ようやく少しずつ改善し始めています。

困った事の第三は、米国人が多額の借金を抱えていて、その返済のために節約をしたという事です。バブル期には借金をして給料以上の生活をしていたのが、今度は給料以下の生活をしたわけですから、落ち込み幅はダブルで効いたのです。これについても、漸く最近になって借金が適正水準にまで減って来たようです。

こうして、リーマン・ショックの後遺症も次第に和らいでいますが、景気は本調子とは言えません。住宅バブルの後遺症が未だに残っていて、住宅建設は未だに多くありませんし、失業率も低いとは言えません。喩えて言えば、病み上がりの病人のようなもので、方向としては回復に向かっているが、水準としては未だに元気だとは言えない、といったところです。欧州の景気が冴えない事もあって、輸出が伸びていないことも、景気にはマイナスになっています。

一方、明るい材料もあります。第一は、「財政の崖」と呼ばれて心配されていた事態が何とか回避できたことです。これは、昨年末で大型減税などの期限が切れることになっていたので、景気が急激に悪化する、と心配されていたものです。米国も上院と下院で多数派が異なる「ねじれ国会」となっているので、交渉の決裂が危ぶまれていましたが、何とか妥協が成立しました。

もっとも、全面的な妥協が成立したわけではなく、一部の問題は先送りされただけですので、手放しで安心するのは少し早いかもしれません。

今一つの明るい材料は、技術進歩により、今まで掘れなかった石油や天然ガスが安く掘れるようになり、米国のエネルギー生産が急激に増加していることです。これらはシェール・ガス、シェール・オイルと呼ばれているものです。国際的な値段よりも安く生産できるので、こうしたエネルギーを掘る会社だけでなく、使う会社も米国に工場を建てる動きを見せており、これも景気にはプラスに働きそうです。

なお、短期的な景気とは別に、エネルギー生産の増加は、中長期的な米国経済にとって非常に大きな意味をもちますので、その意味でも注目が必要です。

米国は現在、大量の石油を輸入しています。現在はこれが米国の経常収支赤字の一因となっているので、石油の輸入が不要になる事は米国の経常収支を改善します。今一つ、エネルギーの調達に関する安全保障の問題が改善することも重要です。米国は中東から大量の石油を輸入していますが、中東産油国には、米国と仲が悪い国も少なくありません。そこで、石油の輸入が必要なくなることは、米国にとって大きな安心材料になるのです。

日本にとっても影響は小さくありません。米国のエネルギー生産が増えれば、世界のエネルギーの需給が緩み、価格が下がるでしょう。ここ数年は、中国などの急成長によって世界的な石油などの需要が増えて、値段が上がる傾向にありましたが、これが逆転して下がることになれば、エネルギーのほとんどを輸入に頼っている日本にとっては大きな朗報です。

【まとめ】
米国経済は、リーマン・ショックによる落ち込みから4年かけて回復し、住宅バブルの後遺症も少しずつ緩和されてきました。病み上がりの病人のように、「水準は元気とは言えないが、方向としては改善しつつある」、という状況です。

今回は以上です。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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