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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 科学技術の商業化に必要なギャップ・ファンド(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

科学技術の商業化に必要なギャップ・ファンド(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/03/06

今回は、技術商業化を実現するときに必要な"ギャップ・ファンド"について解説したい。

以前も話をしたように、基礎的な科学技術を商業化するプロセスの初期では、イマージニングという商業化のアイデアをふくらませる段階から、インキュベーティングという、商業化の方向性をある程度絞って実用化の可能性を検証する段階へと移行する。このインキュベーティング段階では、プロトタイプ(試作品)を作ったり、追加の技術開発を行うことになるので、それなりのコストがかかる。

そのために必要となるのが、"ギャップ・ファンド"だ。通常、大学などでの基礎研究は、研究の商業的価値が不明なため、民間企業が投資判断するには早すぎる。従って、国民の税金を原資とする"グラント(研究開発補助金)"が措置される。そして、実用化の目処がたって商業的な価値が見えてくると、民間企業がビジネスベースで"投資"を開始する。

難しいのは、"グラント"で行われる基礎研究から"民間投資"に至る間に大きなギャップが存在することだ。このギャップは、せっかく生まれた新技術が、陽の目を見ずに忘れ去られてしまうことから、「死の谷」とも呼ばれる。ハイリスクなビジネス案件に投資するVC(ベンチャーキャピタル)も民間投資のひとつだが、"グラント"で研究された成果は多くのVCにとってハイリスクであり、投資判断がしづらい。この「死の谷」を乗り越えるために、ギャップ・ファンドが重要なのだ。

例えば、科学技術の商業化が盛んな米国では、「SBIR」と呼ばれる開発補助制度がある。Small Business Innovation Researchの略で、1982年にスタートした。米国の11省庁が予算の2.5%をSBIRに拠出することを義務化し、毎年2000億円超が中小・ベンチャーの先端技術開発に充てられている。また、商業化が成功した製品は、優先的に政府調達に組み込まれる、つまり「政府のお墨付き」を得られるメリットがある。

SBIRは具体的に3つのフェーズに分かれる。第一がフィージビリティで、商業化に取り組む価値があるかを、約半年間、最大10万ドル程度で検証する。第二がプロトタイピング(試作品開発)で、約24ヶ月間、最大75万ドル程度が投じられる。さらに、第三フェーズは商業化段階で、この段階は政府資金ではなく民間からの投資を引き出すことが義務付けられる。つまり、最初は政府資金を利用するけれども、段階を経ながら民間資金の呼び込みを行うことが特徴となっている。

また、政府だけでなく、近年は大学が独自にギャップ・ファンドを提供するケースも出てきている。例えば、MIT(マサチューセッツ工科大学)では、デシュパンデ・センターが2種類のギャップ・ファンド(①イグニッション・グラント=アイデアを発明に結びつけるため5万ドルを上限に拠出、②イノベーション・グラント=民間資金を呼び込めるレベルまで技術開発を行うため25万ドルを上限に拠出)を提供している。

国家や大学、地域経済界は、「死の谷」の所在とそれを乗り越えることの意義を明確にして、通常では資金拠出が難しいところにギャップ・ファンドを提供しているのである。

次回は、日本でどのようなギャップ・ファンドの提供が行われているかについて解説したい。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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