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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ナレッジマネジメント(13)「発想支援の方法」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

ナレッジマネジメント(13)「発想支援の方法」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

13/03/20

 最近2回のお話の中では、知識移転と知識共有の方法を取り上げました。それらはナレッジマネジメントが経営手法として導入される際の中心的な取り組みを構成するものですが、それらによって促進されるのは既存の知識の再利用や蓄積に止まります。一方、前にも述べたように、ナレッジマネジメントの究極的な目的は、新しい知識を創造し、イノベーションを実現していくことにあります。これは方法論的なアプローチが最も困難な課題であり、もとより確実に知識創造を可能にする条件的方法などないわけですが、その確率を高めるための手法は様々に工夫されてきました。今回は、その一端である発想支援の技法と、その技法を工学的にサポートする試みを取り上げてみたいと思います。

【知識発見を支援する2つの技法】
 一般的に発想ないし知識発見を支援する方法には、発散的思考支援と収束的思考支援があると言われています。
 このうち発散的思考支援とは、ある課題に関連する知識を、できるだけ幅広く大量に抽出する思考作業を支援することを言います。その代表的な方法は、今日広く知られている「ブレイン・ストーミング法」です。この方法は、アメリカで広告会社を創立したアレックス・オズボーンという実務家が、1939年に考案したものだと言われています。
 この方法は、「ブレスト」などと略称されることがあり、我々が同僚とアイデアを出し合うためのミーティングを行う際、日常的に用いられている方法と言ってよいでしょう。ただ、そのやり方には、自由にアイデアを出し合うということ以外にも、いくつかの基本ルールがあるということは、あまり広く知られていないかも知れません。
 重要な基本ルールのひとつは、この方法がまずアイデアの質よりも量を重視し、出せるだけのアイデアを大量に出すということを目的にしていることから、当面は互いのアイデアを批判しないということです。つまりアイデアの良し悪しに関する判断を延期させるというルールです。しかし、どうもアイデアを出し合うためのミーティングは議論に陥りがちで、このルールは忘れられる傾向があるようです。
 もうひとつの重要な基本ルールは、出されたアイデアをすべて全員のものと考え、相互に便乗し、工夫を加えていくということです。逆にアイデアの個人的な帰属に拘ると、それをグループでより面白いアイデアに発展させていくというダイナミックスが妨げられてしまうわけです。
 また、こうした基本ルールとは別に、ブレイン・ストーミングの効果を高めるための工夫が挙げられています。例えば、出されたアイデアを整理しておくために発言の全てを記録してキーワードに要約しておくことや、アイデアの評価は1日くらい寝かせてから行うといったことです。
 さて、もう一方の収束的思考支援とは、このようにして出された様々なアイデアを、まとまりのあるものに集約する思考作業を支援することを言います。
 その代表的な技法として、文化人類学者の川喜田二郎氏によって考案されたKJ法がしばしば挙げられてきました。KJ法自体は、問題提起にはじまって、取材、本質追究から具体策の実施、結果の検証などに至る思考作業の全プロセスを含むものなのですが、このうち核心をなす本質追究の作業に関連して、収束的思考を支援するための技法が考案されています。
 それをひとことで言えば、収集された情報やアイデアに関するラベルを作成し、それらの似たもの同士をグループ化して、そのグループの意味するところを表現するといった手順を繰り返していくといった方法です。さらに、グループ化されたラベルの関連を空間的に配置して表現し、その関連を叙述することを通じて問題解決策などが探求されることになります。

 今日、このような発想支援の方法は様々に新たな工夫が加えられており、グループワークないしワークショップの方法として発展させられ、アントレプレナー(起業家)の育成などに活用されています。しかし、近年注目されている「デザイン・シンキング」のような方法も、その根幹は発散的思考支援と収束的思考支援という2つの系統からなっているようです。

【情報技術の応用】
 思考作業を技術的に支援する方法も発展しています。既にご紹介したイントラネットによる知識共有システムにも、知識発見を支援する機能が搭載されてきています。
 また、情報技術を応用した思考支援の代表的なツールとして、グループウェアが挙げられます。これは、グループで仕事を進める上でのコミュニケーション機能、文書ファイルの共有・検索機能、ワークフローの管理機能、テレビ会議機能、電子フォーラム機能などを搭載した統合ソフトウェアです。
 イントラネットやグループウェアは、ナレッジマネジメントの導入に意識的に取り組んでいるわけではない組織にも、広く普及していると言ってよいでしょう。このことは、ナレッジマネジメントが品質管理のような標準的な経営管理の手法として定着してきたことを端的に示しています。

 大量の文書から有用な知識を発見するための技術としては、人工知能研究と自然言語処理の応用技術である「テキスト・マイニング」が挙げられます。これは、文書間の関連性を分析してグルーピングしたり、それらの内容を分析して隠れた知見を取り出す作業を支援してくれます。
 さらに、人工知能研究を応用した知識発見のための技術として「事例ベース推論」(case-based reasoning)が挙げられます。これは、過去の類似問題に関する解法から、新たな問題の解決策を推論するという技術で、1980年代以降、医療診断、法的推論、工学的問題解決などの領域でシステム開発が進展し、実用化されてきたものです。
 私は現在、科学技術振興機構が推進している「政策のための科学」研究開発プログラムに採択されたテーマで、「地域科学技術政策を支援する事例ベース推論システムの開発」というプロジェクトを研究代表者として進めています。これは、地域の科学技術イノベーション政策の立案・実行に当たっている実務家のために、過去の政策事例に関するデータベースと、そこから有用な知識を発見するシステムを開発しようとするものです。ナレッジマネジメントの技法をイノベーション政策に応用する試みですが、これについては機会を改めて紹介したいと思います。

分野: ナレッジマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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