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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 第4回 歴史的転換期に直面する日本(三つの課題:企業経営) (国際経営論、経営戦略論、アジア産業論/永池克明)

第4回 歴史的転換期に直面する日本(三つの課題:企業経営)

永池克明 国際経営論、経営戦略論、アジア産業論

13/02/13

第三に、企業経営面です。目下、日本の家電3社が巨額の赤字を計上し、苦戦しています。その遠因には、90年代以降の①グローバル化の波(世界的競争の激化と業界再編)、②デジタル化・ネットワーク化にともなう製品アーキテキチャの変化(インテグラル化からモジュラー化、新しいビジネスモデルの出現、後発の利益などの変化と自前主義から外部資源活用(提携・M&A、アウトソーシング)への戦略転換、③サービス経済化(ハードからサービス・知識重視へのシフト)という3つの世界的な潮流に日本企業の対応が遅れたことが原因です。すなわち、国内市場での同業同士の競争に勢力を使い、外の世界へ視野を広げることが少なかったことです。世界の潮流に即した事業ポートフォリオの変革(事業の選択と集中)による戦略的な資源配分と俊敏な決断と実行(agility)の遅れとなりました。さらに、Appleのi-phone, i-padに代表されるアイディアと製品コンセプト重視とアウトソーシングの組み合わせという新しいビジネスモデルの創造やモノづくりの変革への対応が遅れました。デジタル製品は前述のように、「後発の利益」(注)が働き、短期間に後発国にキャッチアップされやすいのです。成熟期・衰退期を迎えた事業は過去の成功体験に固執せず、後発国へ移転し、日本企業は果敢に次世代製品へシフトするという努力とタイミングを逸してはなりません。グローバル・ネットワーク時代に生きている日本企業はこうした環境に順応し、今後、すべてを自前でという垂直統合型に固執せず、一方で、台湾のEMSやアジアの企業との国際戦略提携による外部資源活用という水平分業型もとり入れるといった柔軟性と戦略性も必要です。

【注:ガーシェンクロン(A.Gerschenkron)が見出した経験則。後発国は先発国の開発した新しい技術を導入しながら工業化を推進するため、潜在的には後発国の技術進歩は急速であり、経済成長率も先発国を上回る高さを示す。技術のデジタル化はによって技術の移転はさらに容易となり、キャッチアップ速度が速まっている。】

おわりにー悲観論は本当か

今、日本のマスコミや学界では電機業界衰退論やモノづくり産業への悲観論が高まっています。しかし、筆者は日本の製造業の将来を悲観視してはいません。時代をさかのぼると20年ほど前までは、日本と米国企業の立場は全く逆の状況におかれていました。今度は日本企業が逆に米国
企業のコンセプト重視や戦略重視の経営に学ぶ番でしょう。今後の競争は企業の事業レベル、全社レベルでのビジネスモデルの構築や戦略の再構築が求められています。日本の製造業の底力はまだ、捨てたものではありません。すそ野産業の広がりは広く、世界的競争力を持つ要素技術や素材を持つ企業は山ほどあります。また、これからの日本のモノづくりは、単なるハードウエアの時代ではなくシステム商品・ソフトとの複合製品など、日本が持つ中核技術を組み込んだ商品にシフトしていく必要があります。新興国向けのビジネスもあります。社会インフラの充実や新エネルギー開発、環境技術、省エネ技術、素材技術等が必要です。こうした技術では日本は世界最高水準にあります。今後、最も必要なことは、これら技術を生かせる人材の育成とそれを後押しする行政の強力なバックアップです。

ポルトガル人が鉄砲を日本に伝えたのが1542年、まもなく日本各地の刀鍛冶が国産化・量産化に取り組み、58年後の関ヶ原の戦い(1600年)では、日本は世界一の鉄砲保有国になっていました。明治維新(1867年)の時、日本の海軍は幼児期でした。しかし、それから38年後、日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を壊滅させました。その時の戦艦の中にはすでに多数の国産艦も含まれていました。第二次大戦に敗れ,焼土の中から出発した日本は11年後(1956年)の経済白書で『もはや戦後ではない』と宣言し、12年後(1968年)にはGNP世界第2位となり、その1年後からは日米貿易摩擦が始まり、日米間の技術格差が一気に縮まったことを世界に示しました。それにともない、円の対ドルレートは一貫して切り上げられていきました。その後、現在まで世界初という多くの製品が日本から生まれました。日本の基盤は、古来からモノづくりでした。その基盤を失えば、日本の将来は真に危ういのです。日本は今、歴史的転換点に立っています。そしてこうした歴史の転換点にはいつも危機意識を持った偉大なリーダーと教育水準が高く、熱い志を持った若者たちがいました。現在の日本はまさにそれが求められているのです。

4回を通じて言えるのは、日本人はもっと国際性を身につけることです。現在日本が直面していることは結構沢山ありますが、皆が国際的視野を持って決断し、叡智を結集すれば必ず乗り越えられるということでしょう。モノづくりについても、そんなに悲観する必要はなく、日本人の能力を確信して戦略的に頑張れば絶対未来は開けるでしょう。

分野: 国際経営 |スピーカー: 永池克明

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