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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 中小企業金融円滑化法(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

中小企業金融円滑化法(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

13/02/27


前回は中小企業金融円滑化法の概要及び3月末の期限を取り巻く議論についてお話ししました。
今回はこの法律の意義や問題点について考えてみましょう。

前回も説明しましたとおり、この法律の目的は、リーマンショック後の貸し渋りや貸し剥がしから、中小企業や住宅ローンを借りる個人などを守ることでした。中小企業に焦点当てて考えて見ると、それ以降の中小企業の倒産件数は寧ろ減少しており、当初の直接の目的は達したかに見えます。しかしながら、それが破綻の単なる先送りにすぎなかったか、或いは事態をより悪化させていないかという点については、この法律からのイグジットを終えてからでないと正しい評価はできないでしょう。ただ、一般的には、「金融機関にコンサルティングを含む経営相談など本来の機能を発揮させる」ことにより中小企業の経営状態が改善するという、やや抽象的なところに改善の根拠を置いている点で、これを懐疑的に見ている人は学者を中心に多くいます。また、信用保証協会による信用保証の拡充が支えになっているというあたりも、結局、国民・県民の負担になって跳ね返ってくる事になりかねないので、寧ろ弊害が勝ると見ている人も少なくないでしょう。

この信用保証協会による融資保証付き与信は、金融機関への返済が滞ると、信用保証協会が代位弁済を行うものです。借入人に代わって金融機関に対して支払をするわけです。その分、金融機関にとって融資に応じ易いわけですが、この信用保証協会による代位弁済の原資は、大半は国を株主とする日本政策金融公庫の信用保険でカバーされています。それ以外の部分については信用保証協会自身の負担となりますが、この信用保証協会は地方自治体による出援及び政府からの補助金で運営されているので、何れにしても負債者から回収できなかった債権については、最終的には税金に行き着くことになります。実際に信用保証協会による代位弁済は、2011年までの5年間の平均で、9万3千件、金額では9500億円に達しています。

この制度が3年あまりにわたって運用されたことの1つの意義は、寧ろ金融機関の側に見出せるのではないか考えています。というのも金融機関は、業務内容が拡大し多様な業務を遂行する中で、他行と競合しなくてはいけない状態にあります。その中で従業員には多様な業務知識が求められる結果、ある意味分散化し、中小企業融資の分野では従来のようなプロの育成は難しくなったと考えられます。つまり中小企業融資への注力といっても、実は割けるリソースにはおのずと限界があり、中小企業の経営を正しく評価できる人材を育成する余裕がこれまで失われていた可能性があるということです。

ところが、この3年のあまり金融機関は否応なく相応のリソースを割いて中小企業と向き合い、再生計画の策定を支援する業務にあたることを求められました。その結果、中小企業の経営に対する目利きができる人材が、金融機関の中で増えつつあることが期待されます。これまでわが国の中小企業金融の制約要因としては、企業の側で正確な財務情報の提供ができていないことと並んで、金融機関の側に中小企業を企業経営の観点から考えられる人材、所謂目利きのできる人材が不足していることもあげられてきました。この点では、この3年間は一時的にせよ、集中的なトレーニングができる機会であったと思います。この目利きのトレーニングが出来たということが、中小企業金融円滑化法のコストを上回るようなベネフィットをもたらしたかは別として、これからのイノベーションの担い手としてのベンチャー企業の育成など、中小企業金融の為の人材の裾野を広げる効果につながる可能性を持つものであれば、積極的に評価できる部分ではないか考えます。

肝心の中小企業金融円滑化法に関しては、3月に恐らく期限が満了になるでしょうが、金融検査マニュアルを含めて、法律が打ち切られても実際の取り扱いは変わらない、というメッセージが金融庁から発せられてはいますが、廃止後の姿は極めて見通しにくくなっているので、こちらは暫く注意して見守っていく必要があるでしょう。

ここまでの話をまとめますと、中小企業金融円滑化法により得られた1つのメリットは、金融機関が強制的にしろ、中小企業金融に正面から向き合う機会をもったということでしょう。この経験を通じて金融機関の中に目利きが育つベースとなることを期待したいと思います。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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