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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ナレッジマネジメント(9)-マトリックス型組織でSECIを回す (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

ナレッジマネジメント(9)-マトリックス型組織でSECIを回す

永田晃也 技術経営、科学技術政策

12/12/17

前回は、知識創造を促進する上でミドルマネジャーが果たす役割の重要性に触れ、野中先生によって提唱された「ミドル・アップダウン・マネジメント」という意思決定のスタイルについて説明しました。今回は、このミドルマネジャーの役割に関連して、もう少し知識創造を促進するリーダーシップのあり方について論じてみたいと思います。
 
 
【自律分散型リーダーシップ】
 創造的な組織というものは、市場という環境の変化に俊敏に対応し、あるいは変化を先取りできる組織。また、そのために組織の内外にある様々な経営資源を統合して、新しい価値を創出できる柔軟性を持った組織であると、定義することができるでしょう。

 組織がそのような俊敏性(agility)や柔軟性を持つためには、中核的な業務プロセスを先導するリーダーの役割も、公式のルールによって定義された職務のみを遂行するという硬直的なものではなく、臨機応変に決まるものである必要があります。野中先生は、そのように文脈に応じて役割が決まるリーダーシップを、「自律分散型リーダーシップ」と呼ばれたことがあります。

 このコンセプトを、経営の実践に活かしていく上での課題は、どのような場合に、どのようなリーダーの役割が重要になるのかについて、具体的な指針を得ておくことでしょう。
 
 
【知識創造とリーダーの行動様式】
 この点について考えるための材料として、私が以前行った実証研究の結果を紹介しておきたいと思います。
 その研究では、日本の機械産業に属する企業約520社を対象として、各社の製品開発プロジェクト・リーダーと技術開発部門リーダー、各1名に対する質問票調査を実施しました。有効回答は、それぞれのリーダー約200名、全体としては約400名から得られています。その質問票には、リーダーの日頃の行動様式に関する多くの質問項目が設定されており、その中には知識変換モードに関する項目も含まれていました。項目の具体例を挙げておきます。

 まず、知識の「共同化」に関する行動様式については、「言葉にし難い考えを部下や同僚との共同体験を通じて浸透させる」、「共同作業を通じて部下や同僚に業務上のコツやノウハウを伝授する」などといった項目です。
 表出化については、「喩えとなる言葉を活用して周囲とイメージを共有する」、「社内で共有されている暗黙の想いをコンセプトとして言葉で表現する」などの項目が挙げられました。連結化の項目は、「情報・データの記録、整理、管理を行う」、「得られた情報・データを体系的に分析する」などです。最後に「内面化」の項目としては、「新たなノウハウやマニュアルを部下や同僚に反復させることで定着させる」などが挙げられました。

 質問票の中では、こうした項目の記述が、回答者の日頃の行動様式にどの程度当てはまるかを、5点尺度法で回答してもらっています。ここでは、分析方法に関する詳しい説明は省きますが、こうして得られたデータを用いて、まず因子分析という方法を使い、それぞれの知識変換モードに関する複数の項目の間に共通する因子が抽出できるかどうかを調べてみました。
 その結果、プロジェクト・リーダーの行動様式からは表出化と連結化の因子が抽出され、部門リーダーの行動様式からは共同化、連結化、表出化の因子が抽出されました。

 さらに、こうした行動様式とパフォーマンスの関係を分析したところ、表出化と連結化の因子スコアが高いリーダーに統率されたプロジェクトでは、開発成果である製品の新規性や収益性、そして開発のコスト効率などが高いことが分かりました。一方、共同化と連結化の因子スコアが高いリーダーに統率された技術開発部門では、開発成果である技術の完成度や開発コスト効率が高く、また組織的な対応能力の蓄積が進んでいることが分かりました。
 
 
【知識創造とマトリックス型組織】
 以上を要約すると、製品開発プロジェクト・リーダーにおいては特に表出化と連結化を促す行動様式、技術開発部門リーダーにおいては特に共同化と連結化を促す行動様式が重要であり、それらの行動様式が組織の多様な業績に結びついているということです。

 プロジェクト・リーダーと部門リーダーの間に見出された差異は、どのように解釈できるでしょうか。製品開発プロジェクトでは、様々な部門からメンバーが結集され、彼らの保有している知識が連結されます。その際、各メンバーの知識を素早く表出化させることが重要になるものと思われます。他方、限られた期間内で遂行されるプロジェクトとは異なって、技術開発部門は、それぞれの技術課題に長期的に取り組む組織であるため、むしろ共同化をベースにした知識の伝達が重要になるものと思われます。

 このようにプロジェクト・リーダーと部門リーダーが、それぞれ重要な知識変換モードを促進する行動様式をとることにより、マトリックス型の組織全体を通じてSECIのプロセスを回していくことができるでしょう。

 この研究で得られた分析結果の中で、もう一つの興味深い点は、いずれのリーダーの行動様式においても内面化の共通因子が抽出できなかったということです。それは、内面化というフェーズが、通常の業務を離れたときに発生することを示唆しているのかも知れません。例えば、仕事を通じて得られた知識が、日常生活の経験を通じて、思いがけず腑に落ちるということはよくあることです。

組織が内面化をSECI のミッシング・リンクとしないようにするためには、社員が日常生活において豊かな経験を持てるようにすることも重要であるということになります。

分野: ナレッジマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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