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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の大幅赤字の背景について(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の大幅赤字の背景について(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/11/22


前回は、企業の大幅赤字の背景についてお話ししました。今日はその続きになりますが、簡単に前回を振り返りましょう。

前回は、企業の大幅な赤字計上の裏には翌期以降へのV字型回復のための仕掛けが込められている場合があることをお話しましたが、その中で、現金の流出を伴わない会計処理上の費用で、且つ、1期に限って損失を拡大させる、或いは次期以降の費用を軽減する方向に働く費用として、設備等の減損損失と繰延べ税金資産の取り崩しについて触れました。今日はその2つがどういうものかということを説明をしたいと思います。

まず、減損損失は6年ほど前から日本の会計制度に適用された制度ですが、企業が抱える資産の価値を収益力によって評価しようという考え方に立って導入されたものです。例えば、通常企業は一定の将来の期間に亘って利益に貢献することを期待して機械設備等を導入します。ところが、その後の販売不振から、将来的には期待した程の利益が見込めなくなるということがあり得ます。その場合、その機械設備の会計的価値を評価するに当たって、通常のように購入価格をベースとして減価償却した値で評価したのでは、過大評価になってしまいます。そのため、将来に亘って見込める利益の割引現在価値で評価するというものです。

結果として出てくる差額分は、キャッシュ負担のない償却損として財務諸表に反映されます。こういう性格の見直しなので、販売が大きく落ち込んで当期の営業利益が大幅に悪化したような場合に計上することになりがちで、その結果、損失が更に拡大します。いってみれば弱り目に祟り目みたいなところがあります。ただ、その一方で、減損処理された機会設備などについては簿価が下がるので、翌期以降の減価償却の負担が減ることになります。減損損失を大きめに見れば見る程、翌期以降の業績改善効果も大きい訳です。

もう一つの繰延べ税金の資産取り崩しは、もう少し厄介です。先ず、繰延税金資産ということについて説明しなければなりませんが、税効果会計といわれるものの一つで、企業会計上と税制上の費用の見方の違いから、税金の前払いが生じるような場合に、将来の税金の支払が少なくて済む分、つまり税金の前払い分を繰延べ税金資産という資産として計上できるというものです。同時に、当期の税引き後利益が上乗せさせることになります。例としては、色々な場合が考えられますが、ある期に企業が税引き前で赤字を計上したような場合、それが黒字だと税務署に法人税等を納めねばなりませんが、赤字だからといって逆に税務署がお金をくれる訳ではありません。その代わり、赤字分を7年間繰り越すことが認められており、その後7年間の課税所得から控除することができます。もし、向こう7年間利益が見込めるのであれば、この状態は税金の前払い状態が生じたとみなせることから、その前払いに当る分を繰延べ税金資産という形で資産に計上することができ、最終赤字額を減らすことができる訳です。このように繰延べ税金資産として計上できるのは、将来の税金の前払い分に限られます。

しかし、もしも企業がそもそも7年の間にそれだけ税金を払うような利益を上げるような見通しが立たない場合には、税金の前払いとはみなせなくなります。その期間に実際に上げられるであろう利益に相当する税金相当分しか繰延べ税金資産として維持することはできません。従って、将来の収益に対する見通しが変化した、利益の下振れが見込まれるような場合には、一旦計上した繰延税金資産を取り崩し、その分、最終損益を悪化させねばなりません。こうした処理は、将に再び大幅な赤字を計上するタイミングに行わねばならないことから、この面でも弱り目に祟り目の状態といえます。

前回の話とも関連して、大幅な最終損失を発表、計上する企業の決算には、これまで説明したような1期限り赤字を増幅させる要因が複数働いており、その影響が相当に大きくなっている可能性があります。こうした状態を捉えて、特に新聞報道などが最終損失の数字をことさら強調してセンセーショナルに伝えがちなために、、事態の深刻さがオーバーに伝わる傾向があります。その点では、読み手としては、最終利益・損失の数字ばかりではなくて、営業利益・損失や経常利益・損失の数字にも注意して、最終利益を拡大している要因が、翌期以降のV字回復に繋がるものか、どうかといったことを見極める必要があります。

もっとも、日本の電機メーカーの最近の赤字計上の背景には、国際競争力の低下という構造的な問題が存在していますので、従来のようにV字回復が見込めるのかについては、財務諸表上の数字ばかりでなく、それらの企業の競争戦略、商品戦略などについても良く見ておく必要があるといえます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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