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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の大幅赤字の背景について (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の大幅赤字の背景について

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/11/21


今日は、企業の大幅赤字の背景についてお話します。この時期、企業の決算の見通しが報じられる機会が多いですが、中にはその赤字の金額に最近は目を見張ることもあるのではないでしょうか。

最近では、韓国・台湾のメーカーとの競争で劣勢に転じている電機メーカーのものが目立ちますが、赤字の金額が数千億円にも及ぶものも珍しくなくなっています。ソニーは昨年度(2012年3月期)に4,500億円の最終赤字を計上しましたし、パナソニックは約8,800億円、シャープは3,700億円もの最終赤字を計上しました。そのうちソニーは今期200億円の最終黒字に転換する見込みですが、パナソニック、シャープについては今年度もそれぞれ7,000億円以上、4,000億円以上の巨額な赤字が継続するという見込みを発表しています。

これだけ大きな赤字になると、いくら大企業とはいえ耐えられるのかという素朴な疑問を感じます。特に現金の流出が心配です。一方で、2009年3月期には8,000億円もの赤字を計上したのに僅か2年後の2011年3月期には、3,500億円もの黒字を計上した日立のように、大幅な赤字から大幅黒字へとV字回復を見せる企業もあります。一体どういう理由で、同じような分野でビジネスを続けているにも関わらず、差し引き1兆円を上回るような利益の差が出てくるのか不思議ではないでしょうか。

こうした背景には、大幅な赤字を計上した企業の場合でも、商品や原材料を仕入れて製品を販売する、或いはサービスを販売するといった日常の事業活動、即ち経常的な取引によって生じる損失は、最終的な損失に比べてそれほど大きくないケースが多いということがあります。つまり、そうした会社では損益決算書の中の営業損失や経常損失がそれほど大きくないのに対して、特別損失や税金に関する費用が多くなっています。そして、それらは、業績が悪化したときに生じる1期限りの赤字要因やその現金のフローに直接関係しない会計上の処理を反映したものが多いわけです。

例えば、今期4,500億円の最終損失見込みを発表しているシャープの場合を見てみると、来年3月期の営業損失見込は1,550億円です。営業外損失を加えた経上損失でも2,100億円と最終損失の半分以下です。つまり、残りの2,400億円程については、日常の取引で発生する以外の費用、即ち1期限りの赤字要因、或いは現金のフローに直接関係しない会計上の処理が影響している訳です。

損益決算書をもう少しよく見ると、まず特別損失として、希望退職に伴うリストラ費用が280億円程計上されていますが、これは販売不振に伴って人員が過剰になったため、割り増し退職金を支払って、希望退職者を募ったことによるものと考えられますが、実際に退職金の支払が生じますので、現金の流出を伴う費用です。しかし、対象となった退職者についてのリストラ費用の発生は1回限りですし、翌期以降は退職された従業員の人件費の負担が減少します。つまり、この分については、損失の発生する今期と来期との間で、費用において280億円プラス人件費の軽減分を加えた分だけの差が生じます。

特別損失には他に事業構造改革費用として、キャッシュには直接影響しない会計上に処理に基づく損失が計上されています。具体的には棚卸資産の評価損、つまり在庫の評価損が530億円、それから設備等の減損損失300億円です。この内、棚卸資産の評価損は、市場での価格の下落等によって在庫の価値が低下してしまった分を毀損分として費用計上する訳ですが、その分、その在庫が販売される翌期には原価が下がっていることになります。また、シャープの場合には、これらの特別損失の他に、法人税等の項目として、繰延税金資産の取崩しに伴う損失が610億円計上されています。

これ等の会計処理に伴って発生する諸費用も、リストラ費用と並んで、黒字から赤字に転換したような企業の多くで発生し、当期の損失を拡大させるものですが、今述べたように、キャッシュには直接影響せず、また、発生は1期限りで、翌期以降には負担が軽減されて、急回復の要因、或いは背景となるものが含まれています。

特別損失、法人税の項目の内、減損損失と繰延税金資産の取崩しについては説明を省きましたが、ややテクニカルな話になりますので、次回、改めてもう少し詳しく説明したいと思います。

ところで、企業がこうした大幅な赤字を発表する場合、経営者の交代を伴うこともあります。所謂、引責辞任です。今日お話ししたことから、企業が大幅な赤字決算の発表に併せて引責辞任を発表するのは、将に責任を明確化させるということとともに、マイナスの遺産を次の経営者に残さない、翌期のV字型回復へのお膳立てを整えた上で経営者が交代する、ということでもあり得ることを理解してもらえればと思います。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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