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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 目標が人に与える影響(目標設定理論) (社会心理、組織心理 /藤村まこと)

目標が人に与える影響(目標設定理論)

藤村まこと 社会心理、組織心理

12/11/13


職場や組織の中では、「人」がいてやるべき「課題」が目の前にあることが多いですね。目の前にある課題は、「目標」と呼んでもよいかもしれません。そして、この目標の設定の仕方がどのような影響を人に及ぼすのかを今回は紹介したいと思います。

まず、ふたつの状況を考えてみましょう。あるリーダーがフォロワーに対して「ベストを尽くしてくれ」「一生懸命やってほしい」と曖昧な目標設定を行った場合。そしてもうひとつは「いつまでにどれくらいのことをやってほしい」と具体的な目標設定をした場合です。さて、フォロワーの作業量やパフォーマンスはどちらが高くなるでしょうか? ロックとレイサム(Lock & Latham、1984)による「目標設定理論」では、具体的な目標設定の方が集団やリーダーの生産性が高まることを示しています。

時代は60年代のアメリカでの話です。材木会社ではフリーの伐採員を雇い仕事を進めていました。そして彼らの木を切るという作業の生産性を高めるためにはどうすればよいかを研究者に調査依頼をしたそうです。そして研究者が入って調査をしてみると、伐採員のグループリーダーは大きく3つに分類できることが分かったそうです。1つは、作業中は働く人たちと一緒にいて、一日もしくは1週間での生産目標を与えるリーダーでした。しかし、機械化はほとんど進んでいないグループです。他のグループは、機械化は進んでいるけれど目標設定が曖昧、しかしリーダーは作業中部下と一緒にいるグループ、もうひとつは、機械化は中程度進んでおり、目標設定は具体的でしたが、リーダーは作業中部下とは一緒にいないグループでした。さて、どのグループのパフォーマンスが高かったでしょうか。調査の結果、機械化は進んでいないけれど、作業中にリーダーと部下がともに過ごし、具体的な目標設定をしたグループの生産性が最も高いことが示されたそうです。この調査は、木を切るという作業を行っているため、機械の導入を進めたほうが当然効率は上がると予測されますね。しかし、機械化が進んでいるよりも、具体的な目標を設定するほうが、集団の生産性が高いことが調査で示されたことになります。ここでの具体的な目標とは、「今日はこのぐらい木を切る」というように「期間」と「量」を決めることです。機械化よりも具体的な目標設定の方が生産性を高めるという結果は、会社の幹部たちも驚く結果と考えられます。

また、ロックやレイサムたちによれば、目標は「具体的であること」に加えて、「困難であること」も生産性を高めるために重要だと指摘しています。ではどのくらい難しいとよいのでしょうか?教育心理学の領域では、簡単すぎても、難しすぎても動機づけが低下すると言われています。なので、少し背伸びをすればできそうな課題、いわゆるストレッチをかける目標設定のときに、動機づけが高まると考えられます。ここでは、松尾(2011)による「育て上手なOJT指導者」調査を紹介します。この調査では、後輩とか部下を潰してしまうような、あまり良くないリーダーの特徴を調べていくと、1年目は放置し、あまりフォローもせず目標設定もしないが、2年目に難しすぎる目標設定をしてしまうという特徴が見られたそうです。十分な指導や教育もないまま困難すぎる目標が設定されることは、部下や後輩を危機的状況に追い込む危険性があることに配慮が必要ですね。

また、目標設定を具体的に設定するとはどういうことなのでしょうか。ロックとレイサム(1984)は、目標設定には7つのステップがあることを示しています。要点をここで示すなら、まず、目標に設定する際には、客観的に測定できるものを対象に選びます。時間や金額、物理的単位、行動などです。仕事であれば、売り上げのパーセンテージや金額、勉強であれば、時間やページ数などが具体的に測定可能なものですね。そして、それを「いつまでに」、「どのくらい」実施するかを決めます。つまり、「期間(締め切り)」と「到達水準(量や質)」を決めるわけです。詳細については、ぜひ書籍にあたっていただければと思いますが、まずはここから始めてみてはどうでしょうか。

近年、成果主義の流れの中で過剰な売り上げノルマ設定の話を見聞きします。それに対して、ある会社では、売上げなどの金額を目標設定せず、従業員の行動をノルマとして目標設定したそうです。つまり、1日何回顧客のところを訪問する、1件の契約において顧客訪問は必ず何回行うといった行動を目標としたそうです。そしてそれを達成するように仕組みを変えた結果、会社の状況は良い方向へと変化したそうです。これはひとつの事例ですが、興味深い試みだと思います。


(参考文献)
金井 壽宏・依田 卓巳(訳) 2009 ワーク・モチベーション エヌティティ出版
松井賚夫・角山剛(訳)1984 目標が人を動かす ダイヤモンド社
松尾 睦 2011 「経験学習」入門 ダイヤモンド社
 

分野: 心理 |スピーカー: 藤村まこと

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