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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 海上の輸送の変化 (国際経営、国際物流/星野裕志)

海上の輸送の変化

星野裕志 国際経営、国際物流

12/11/05

前回は、コンテナ輸送が世界の貿易構造を変えたというお話でしたが、今日はそのルートのお話しをします。

国内産とほぼ同じ価格で販売される輸入品のミネラルウォーターの例を挙げましたが、ヨーロッパからアジアに輸出される製品は必ずスエズ運河を越えてコンテナ船で運ばれます。スエズ運河はアフリカ大陸とアラビア半島に挟まった細い紅海と地中海と紅海を結ぶ人工の運河です。さらに、アメリカから輸入される物は、太平洋とカリブ海を結ぶパナマ運河を越えなくてはなりません。これは大きなボトルネック、制約になっています。

何故かと言うと、巨大な船は運河を通れません。大航海時代にはこれら2つの運河は無かったので、ヨーロッパからアジアに船舶が航行するためには、アフリカの最南端を通らなくてはなりませんでした。アメリカ東海岸からアジアへの航行には、南アフリカの最南端のケープホーンを回る必要がありました。例えばニューヨークからサンフランシスコまで東西に移動する場合、パナマ運河を通る事によって、南米最南端を通る航路が21,000キロだとすると、12,500キロ、つまりほとんど半分で済みます。距離が短くて済むという事は、輸送日数も少なくて済みますし、船舶の数あるいは燃料の消費が少なくなります。それだけ運賃も安くなります。運賃が安くなるとそれが製品の価格にも反映されます。

ところがボトルネックになっている運河ですが、スエズ運河は結構巨大な船が航行できます。船の幅77.5メートル、深さが20メートル、24万トンクラスといえば巨大な貨物船ですが、これも通行が可能です。一方パナマ運河には非常に制約があり、幅が32.3メートル、スエズ運河の半分しかありません。深さは12メートルですから、比較的に小規模の船舶しかパナマ運河を航行出来ません。

スエズ運河とパナマ運河で何故こんなに差があるのかというと、パナマ運河は3つの湖と3つの水門を通過する全長80キロの運河ですが、太平洋側と大西洋側の高低差があり、その間を水門で緩和していく必要があって、その水門の大きさが制約になります。現在パナマ運河を通行する船は年間1万5千隻ありますが、その内の28%、約四分の一がコンテナ船いわゆる製品を輸送する船で、これが大きな制約を受けるのです。

その為に2015年の竣工に向けて第2パナマ運河を建設しています。かなりの拡張となり最大幅が48.8メートル、喫水18メートルで現在の1.5倍の幅と深さを持つ大きな船が通れることになります。例えばコンテナ船でいうと、今パナマ運河を通れるコンテナ船は4000個ぐらいのコンテナを運ぶ能力が最大ですが、第2パナマ運河が出来ると12000個、一挙に3倍の量を運べる巨大な船が通れるようになります。

パナマ運河を通って大量に輸送出来ると運賃が下がり、ミネラルウォーターの例でお話したユニットコストと言われる1本当たりの値段が大きく下がります。そうなるとまたグローバルに商品が動く可能性が出て、貿易構図も変わっていくかもしれません。

日本の場合、海に囲まれ資源も乏しい国ですから、原油や工業製品の輸送にとって運河は生命線ですが、その生命線である運河に大きさの制約があれば、通行する船も小さくなり、その分運賃が高くなる構造が出来上がっています。第2パナマ運河は、工事が少し遅れていますが、これから数年の内には完成します。日本にとっての生命線と言われますが、日本はその建設にかなりの援助をしています。それは日本にとっての重要性が認識されているからです。ほとんど全ての資源や原材料そして商品の多くを輸入しなければならない日本にとって、制約が少しでも緩和されれば、それだけ貿易構図を変える可能性もあるし、そういう国際輸送のイノベーションが更にグローバルな荷動きを活発化させる可能性があるということです。

今日はパナマ運河を例にとって、国際輸送のイノベーションが、世界の貿易構造を変える可能性について、お話ししました。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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