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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業部門はカネ余り (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

企業部門はカネ余り

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

12/10/05

今日は、日本企業が銀行に借金を返している、という御話しをしましょう。銀行というと、個人から預金を集めて企業に貸し出すもので、企業は銀行から借りた資金で工場を建てる、というイメージがありますが、統計をみると、最近の企業は銀行に借金を返しているのです。

銀行は、企業から返ってきた資金を政府に貸しています。つまり、日本全体としては、資金の量は変わっていないけれども、企業が返して政府が借りている、という事になります。

では、企業は何故、借入を返しているのでしょうか?結論を言えば、一つには、企業が利益を挙げているから、今一つは企業が設備投資をあまり行なっていないから、という事になります。

はじめに企業の利益ですが、景気があまり冴えない割に、企業は儲かっています。リーマン・ショックの前は、バブル期よりも企業の利益が大きかったですし、リーマン・ショック後も、企業の利益は思いのほか回復が早く、昨年の大震災さえなければ、今頃はリーマン・ショック前に近付いていたかもしれないほどです。

企業が儲かっている最大の理由は、人件費が低いことです。前回お話したように、バブル崩壊後は雇いたい企業よりも働きたい人が多い状態が続いていますから、賃金が上がっていない
のです。売り上げもそれほど増えているわけではありませんが、仕入れ値も上がっていませんし、人件費が20年間も値上がりしていない事が利益をもたらしているのです。銀行の金利が非常に低いことも、企業の支払い金利を減らしていますから、企業の利益を増やす要因となっています。

企業は、一方で設備投資をあまり行なっていません。企業の決算書*を10年前と比べると、土地や建物や機械器具にあたる有形固定資産という項目は、5%ほど減っています。負債すなわち借金も、やはり5%ほど減っています。ゼロ成長時代で売り上げも増えていませんから、新しい工場を建てる必要性を感じないのかもしれませんが、寂しいことです。

借金の多すぎる企業が頑張って借金を返すのであれば、望ましいことですが、今の日本企業は決して借金が多すぎるというわけではありません。むしろ、企業部門全体で見ても流動資産が流動負債を大きく上回っていますし、個別にみると金融資産が負債を上回っている実質無借金企業も少なくありません。

これは、二つの事を意味しています。一つは、儲かりそうな投資の案件が無いことです。儲かりそうな投資の案件があれば、金利も低いわけですから、企業は借金をしても投資をするでしょうが、そうはなっていないのです。現在は儲かっているのに、将来に不安を感じて投資をしない、という事だとすると、日本企業がよほど日本経済の将来に自身を失っているという事なのでしょう。高齢化が暗い時代だという悲観的な話を聞き過ぎているのかも知れません。
私としては、高齢化時代はそれほど暗い時代だとは思っていないのですが、その御話しは、別の機会にすることとしましょう。

今一つは、過去20年の間に何度か銀行の貸し渋りが激しくなった時期があったので、借金は怖い、と考えて、とにかく借金を返そうと考える企業が増えているのかも知れません。借金を減らしているだけでなく、現預金を増やしている事を見ても、安全運転をしようという気持ちが伝わってくるようです。

企業には、もっと大胆に投資を行なってもらわないと、本当に日本経済の将来が暗いものになってしまいますから、是非頑張って頂きたいと思います。

企業の投資について、もう一つ気になる事があります。最近は対外直接投資が高水準で推移しているのです。日本企業は国内ではあまり投資をしていませんが、海外では積極的に投資をしているのです。海外に投資する分だけは、借金返済よりも優先されているのかも知れません。

中国など新興諸国の発展ぶりを見て、儲かりそうな案件に投資をしているのであれば、大変結構な事です。円高で海外の資産が安く買えるので、今のうちに海外の資源などを確保しておこうというのであれば、これも大変結構な事です。もちろんそうした投資もあるようですが、実際には国内市場が縮小していく事を考えて、消去法的に海外に進出している例も多いようです。
企業の行動としては、仕方のない所もあるのでしょうが、こうした動きが国内経済を一層停滞させてしまうのではないかと心配です。

今日のキーワードは「企業は国内にも投資して欲しい」です。

*法人企業統計年報の全産業全規模合計で、平成22年度と12年度を比較した。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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