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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 物価は安定 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

物価は安定

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

12/10/04

今日は、消費者物価指数が非常に落ち着いているという事について御話ししましょう。
日本の消費者物価指数は、20年前と殆ど同じ水準にあります。それ以前の10年間には消費者物価は2割ほど上昇しましたし、その更に前は一層大きく上昇していましたから、20年間も物価が変わらないという事は、バブル期以前には考えられなかった事です。
国際的に見ても、20年間も消費者物価が上昇しないというのは大変珍しいことです。

20年前と比べて円高だから物価が上がらないのだ、と考える人もいるでしょうが、円高のスピードはそれ以前の方が遥かに速いものでした。それより何より、20年前に比べて今の方が輸入物価指数は高いのです。原油などの資源価格が昔よりも大分高くなっているからです。

景気が悪くて売れないから値上げが出来ない、という事はあるでしょう。しかし、売れないからコストを無視しても安売りする、という行動は長続きしないはずです。
つまり、20年もの間、値上げできなくても生産を続けている企業がある、という事は、コストが上がっていないから値上げせずに済んでいる、という事なのです。これは大変重要な事です。

コストが低下した理由の一つは、技術の進歩です。たしかに、技術の進歩により、薄型テレビなどのデジタル家電が安く作れるようになりました。また、インターネットやメールの普及により、仕事が効率的に行なえるようになりましたから、企業としては人件費が節約できるようになったでしょう。もっとも、技術進歩は昔からありましたし、電気製品の価格低下も、昔からありました。諸外国でも同様の技術進歩がありますので、日本だけ物価が安定している理由にもなりません。

日本の物価が安定している最大の理由は、賃金が上がっていない事なのです。統計を見ると、日本の勤労者の平均賃金は20年前よりも下がっていますが、1人あたりの労働時間も短くなっていますから、労働力の単価は20年前とほとんど同じだと考えてよいでしょう。
実際には時間あたり賃金単価は若干上昇していますが、パートの活用などで必要な時だけ雇う事が出来るようになり、労働力利用が効率化できている事を考えると、企業の負担にはなっていないと考えてよいでしょう。

賃金が上がらない最大の理由は、労働力の需要が供給よりも少ないからです。雇いたい企業よりも働きたい人が多いから賃金が上がらないのです。高度成長期は、雇いたい企業が働きたい人よりも遥かに多かったので、賃金が急激に上昇していきましたが、最近は逆の事が起きているわけです。

皮肉な現象も起きているようです。お父さんの給料が上がらないからお母さんがパートに働きに出るとします。1人のお母さんだけがパートに出れば、その家族は豊かになれますが、すべてのお母さんが一斉にパートに出ると、働きたい人が一気に増えるので、労働力の値段が下がってしまいます。その結果、日本中の家庭が前よりも貧しくなった、という事も起こり得るわけです。皆が正しい事をすると皆がひどい目に遭うという皮肉な結果の事を、難しい言葉ですが、合成の誤謬と呼びます。

これ以外にも、企業が賃金を抑えるために正社員を減らしてパートなどを増やしている、といった事もありますが、この辺りについては次回以降に御話ししましょう。

さて、皆さんが普段使っているお金は、誰の所に行くのでしょうか。たとえば居酒屋で飲んだとします。一部は居酒屋の店員さんの給料になります。仕入れたお酒のメーカーにも一部が
行きますが、その一部は更にお酒のメーカーの社員の給料になります。一部は居酒屋の店舗の借り賃になるでしょうが、店舗の大家さんは店舗を建てる時に大工さんに給料を支払っているはずです。こうして考えると、居酒屋の勘定の相当多くの部分は誰かの給料になっています。
これは、日本人の給料が上がらなければ廻りまわって居酒屋のコストが上がらず、飲み代も上がらずに済むということになるのです。これが、物価が上がっていない最も大きな理由なのです。

なお、消費者物価は1998年までは緩やかに上昇していましたが、その後は年率0.3%程度のマイナスと、緩やかな下落を続けています。これをもって物価が下がっているから大変だ、という人も大勢います。物価が下がる事をデフレと呼び、デフレが景気を悪くして一層デフレを深刻化するということで、「デフレスパイラル」などという言葉を使う人もいます。

しかし、年率0.3%程度の下落では、経済に与えるマイナスの影響は極めて小さいので、騒ぎたてるべきではないでしょう。喩えて言えば、「海の水を一口飲んだから海の水が減った」というのは、理論的には正しいのでしょうが、かえってミスリーディングでしょう。それと同じようなものだと思います。

そこで、今日のキーワードは「デフレは恐れるに足らず」にしたいと思います。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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