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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本経済の長期停滞 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

日本経済の長期停滞

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

12/10/02

これまで、景気や経済の見方について御話ししてきましたが、これから暫くは、実際に景気や経済を見てみましょう。今回は、日本経済がバブル崩壊の後で20年以上も不振を続けている状況についてです。

バブルが崩壊してから10年ほどは、バブルの後遺症で経済が不振でした。
第一に、バブル期に消費者は高級車などを買い、企業は立派な工場などを建てていたので、バブル崩壊後は個人消費も設備投資も需要がありませんでした。第二に、金融危機が起こり、銀行が貸し渋りを行なったため、中小企業が倒産したりしました。

こうした事は、どこの国でもバブルが崩壊すれば起こり得ることです。米国で数年前に住宅バブルが崩壊した時も、似たような事が起こりました。米国の場合は、需要が減るのと金融危機が一度に来ましたが、日本の場合は時間差があったため、影響が長い時間続いたという違いはありましたが、本質は同じでした。

しかし、日本では、バブルの後遺症が消えてからも、経済の不振が続きました。
小泉内閣の頃からリーマン・ショックまでは、景気もある程度回復しましたし、株価もある程度戻りましたが、これは円安などによって輸出が伸びたからで、日本国内の需要は低迷したままでした。そこで、リーマン・ショックによって輸出が減少すると、日本経済は再び大きく落ち込んだのです。

なぜ、日本経済は長期にわたって低迷しているのでしょうか。その原因については、「規制が多すぎる事などによって、供給がうまく伸びていかないからだ」、と考えている人も多いのですが、それは正しくないと思います。供給側に問題があるならば、デフレではなくインフレになるはずですし、貿易収支が赤字になるはずですが、実際はインフレよりもデフレが問題となっていますし、大震災までは貿易収支も黒字でした。

日本経済の長期不振の原因は、需要不足です。では何故、需要が不足するのでしょうか。
日本人は、勤勉で倹約家です。これは良い事なのですが、日本人全員が勤勉に働くと大量に物が作られますし、日本人全員が倹約すると物が売れませんから、結果として大量に物が売れ残ります。皆が良い事をすると悪い結果が起きるという皮肉な事が起きているわけです。これを難しい言葉ですが、「合成の誤謬」と呼びます。

余った物を海外に買ってもらったり、余った人を財政政策で雇用したりすることで、何とか過ごしている、というのが日本経済の姿なのです。リーマン・ショック前は、ある程度輸出が出来ていて、残りを政府が引き受けていましたが、リーマン・ショック後は、輸出が難しくなったので、その分も政府が引き受けています。財政赤字が拡大している事を批判している人は多いのですが、財政がバラマキを行なっているおかげでリーマン・ショックの影響から日本経済が何とか立ち直っているのです。

では、日本経済の需要不足は永久に続くのでしょうか。私は、そうは考えていません。これから少子高齢化が進むと、働く人は減っていきますが、使う人はそれほど減りません。そうなると、少ない人が勤勉に働き、出来た物を多くの人が節約しながら使う、という時代が来ます。
(*)

これは、それほど悪い世界ではありません。失業者が簡単に仕事を見つけられるようになりますし、女性や高齢者を含めて、働く意欲と能力のある人は、それに相応しい職場で活き活きと働く事が出来るようになるでしょう 。

高齢化で財政赤字が拡大すると心配している人は多いのですが、高齢化時代の政府は失業や景気悪化を心配せずに増税を行なうことが出来ますから、それほど心配する必要は無いのかもしれません 。
(**)

ここで、日本経済の生産性について御話ししておきましょう。働く人の数が一定で、GDPも一定だという事は、生産性が伸びていないという事です。これは何故でしょうか。

規制などが多すぎる事は、生産性にマイナスでしょう。たとえば、後継者がいなくて放棄されている農地を大企業が借り上げて大規模農業を行なう、といった事が許されれば、農業生産はもっと増えるはずです。

しかし、より重要な要因は、需要が増えないから生産性が上がらない、という事だと思います。
労働力が余っているから賃金が上昇せず、省力化のための設備投資が行なわれないので生産性が上がらないのです。また、工場の稼働率が低いから新しい工場を建てる企業がなく、いつまでも古くて効率の悪い機械を使い続けているのです。つまり、生産性の低さは長期低迷の結果なのです。

日本経済は生産性が伸びないから長期低迷しているのだ、という人もいますが、彼等は因果関係を正しく理解していないのです。今は、需要が足りませんから、生産性が低いことは、それほど問題ではありませんが、今後、高齢化が進み、労働力不足が進むと、生産性の低さが問題となる時代が来るでしょう。それでも、何とかなるような気はします。労働力が不足すれば、企業が省力化のための投資を増やすでしょうから、日本経済全体の生産性は上昇していくと思うからです。

今日のキーワードは、「勤勉と倹約が停滞の原因」です。

(*) 少子高齢化について、ホームページに小論を載せましたので、よろしければ御笑覧下さい。
    URLはhttp://www.tsukasaki.net/report/report1204.htmlです。
(**)財政について、ホームページに小論を載せましたので、よろしければ御笑覧下さい。
    URLはhttp://www.tsukasaki.net/report/1205.pdfです。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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