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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 産学官による国際リニアコライダープロジェクト(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

産学官による国際リニアコライダープロジェクト(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

12/08/29

・スイスCERNでのヒッグス粒子の発見には、長年にわたる産学官連携の取組みが欠かせなかった。

・まず「学」にかんして、世界中から優れた物理学や工学分野の人材がCERNに結集して、日夜実験に励んでいる。CERNの研究者2,300人に加えて、欧米や日本を中心に年間1万人のビジター研究者が滞在して実験を行う。CERNの食堂を覗いてみると、様々な国から研究者が集まって談笑しており、まるで「小さな国連」の様相だ。

・前回も述べたが、wwwもCERNで誕生した。素粒子物理学では世界中の研究者がデータを交換しながら実験を進める必要があり、必要な情報に瞬時にアクセス出来るインフラとしてイギリス人のティム・バーナーズ・リーがwebを発明したのだ。優れた科学者が国境を越えたネットワークを組んで研究を進めるというスタイルが素粒子物理学の世界では当たり前なのだ。

・「官」にかんしては、欧州国家の役割が大きい。そもそもCERNが1954年に設立された背景には、第二次大戦後の欧州からの頭脳流出への危機感があった。そこで中核的な国があつまってCERNを設立し、現在は欧州20カ国によって運営されている。各国が予算を出しあって設立・運営されているので、予算措置のみならず、組織の運営方法やあらたな設備投資などで各国が調整やルール整備をしっかりと行い、科学者の実験プロジェクトを支える必要がある。

・また、大型の実験施設なので地元との調整も多数発生する。用地取得、地元説明と理解増進などだ。地元との間でトラブルが生じたら、そこで施設整備がストップしてしまうので大きな注意が払われている。LHC整備当初は、「LHCによってブラックホールが誕生する」といった噂が流れて地元に反対者も出たが、科学者や政府担当者がしっかりと地元説明を行い、誤解は直ぐに解消された。

・日常的にも地域住民への情報提供や子供たちへの物理学に関する教育機会の提供などを通じて、地元の理解を得る努力が継続してなされている。

・「産」にかんしては、日本企業の貢献も大きいと言われている。LHCには膨大な量の超伝導線材が使用されているが、その半分は日本の古河電工製で、また、JFEスチールや東芝も超伝導磁石用の鋼材やコイルを納入して実験に貢献しているという。また、素粒子の検出部分には、小柴教授のノーベル賞受賞を支えた浜松ホトニクスのセンサーが採用されている(日本経済新聞web版2012年7月5日)。企業も先端技術の粋を持ち込んで、ヒッグス粒子の検出を支えたのだ。

・さて、CERNのLHCの次世代版となるILC構想が進んでいて、福岡・佐賀の背振山地が候補地の一つであることは前回述べた。このILC誘致を目指して、福岡県、社団法人九州経済連合会、九州大学・佐賀大学が「サイエンスフロンティア九州構想」をとりまとめて発表した。これは、ILCを中心としてどのような研究都市づくりを行うべきかという構想を地元産学官でとりまとめたものだ。そこでは、

(1)世界で活躍する人材の育成、(2)新時代のイノベーションへの貢献、(3)既存基盤を活用した国際研究教育都市づくり、3つのビジョンが掲げられている。

・佐賀県の古川知事は、2012年の念頭挨拶の中で、ヒッグス粒子やニュートリノの研究について、「直接くらしや経済と関係ない事柄であっても、人類にとって意味のあるこうした取り組みに関心を持ち続けていきたい」と述べておられる。

・最近では、サイエンス・コミュニケーションとか、サイエンス・カフェといった市民に気軽に科学に関心を持ってもらおうという取組みが徐々に広がっている。ILCの誘致活動に産学官が関わることによって、福岡・佐賀地域の人々が、広く科学に関心を持ち、様々な事柄について科学的な視点を持って判断し行動できるような、成熟した社会になればと思う。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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