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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 第11回 為替レートの決まり方 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

第11回 為替レートの決まり方

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

12/08/14

為替レートというのはドルなどの値段のことです。前回話したようにドルの値段というのは政府が決めているわけではありません。市場で売り注文と買い注文の量が同じになるところに値段が決まっています。

では、売り注文の量と買い注文の量がどうやって決まるのかが問題になります。もし正しいドルの値段という物があるならばそれが参考になるでしょう。これを求めるための考え方があって、購買力平価という言葉があります。
 
 
これは、「アメリカと日本の自動車の値段が同じになるようにドルの値段が決まるはずだ」というのが基本的な考え方です。ドルの値段がもし正しい値段よりずっと高かったら、アメリカ人がアメリカで自動車を買うより日本で買ったほうが安いので、ドルを円に換えて日本の自動車を買うようになります。大勢のアメリカ人がドルを円に換えるとドルの値段は当然下がっていきます。それで結局ドルの値段は正しい値段、つまり購買力平価に落ち着くはずだという理屈です。


歴史を振り返ってみると、高度成長期に1ドル360円だったのが今の80円ぐらいまで、40年で4分の1ぐらいになっています。

こうした大きな話をする場合に購買力平価の考え方は重要です。この40年の間アメリカの物価上昇率は日本の物価上昇率より高かったので、時間と共にアメリカの自動車はどんどん高くなって、日本の自動車よりも高くなることになります。ということは、しばらくするとアメリカ人がドルを円に換えて日本の自動車を買いに来るようになり、そうなるとドルが安くなるという訳です。

とても大きく考えると、物価上昇率が高いのでアメリカのドルが安くなっていく、この繰り返しが40年続いた結果ドルの値段が4分の1になったということです。


しかし、この購買力平価という考え方は非常にアバウトな話であるということに注意する必要があります。

まず貿易されている物は自動車だけではなく、例えば自動車は日本の方が安いけれど牛肉はアメリカの方が安いという場合はどちらを使うのかという話があります。同じ自動車でも日本車と米国車ではデザインも品質も違いますし、輸送費もかかります。つまり、360円と80円とどっちが良いのかという話は購買力平価で良いのですが、80円と100円とどっちが正しいのというレベルの話では購買力平価は使えません。

 
ここまで何が正しいドルの値段かという話をしてきましたが、全くそれと別の考え方もあります。

アメリカのほうが日本よりも金利が高ければ日本人がアメリカの銀行に貯金をしたりアメリカの国債を買ったりして、日本人がドルを買います。だからドルが高くなる、という考え方です。米国の国債などで資金を運用すると、ドル安になった時に損をするという為替リスクがありますから、米国と日本の金利の差が小さい時には日本で運用する人が多く、金利の差が開いてくると米国で運用する人が増えてくる、というわけです。

例えばアメリカの景気が良くなるとアメリカの金利が上がって、アメリカの国債を買う日本人が増えてドルが高くなるといったことが起きます。
 
 
こうした理屈は、ある程度は正しいのですが、米国で資金を運用する人以外にも、ドルを売り買いする人は大勢いるので、あくまでもドルの値段が動く理由の一つにすぎません。

実際にドルの値段を動かす最も重要な要因は、人々の予想です。

それで、実際どういう人がドルの値段を動かしているのかというと、これは人々の予想を信じて売り買いする人です。人々がドル安を信じているだろうと思うと、「人々はドルを売るだろうから私は他の人が売る前に売っておこう」と風に考える人々が世の中たくさんいるわけです。

全く主体性はありませんが、「他の人が何を考えているか」ばかり考えている人がたくさんいるということです。しかし、こういう人が多くいると実はとても奇妙な事が起きます。

例えば昨年の大震災の後に、ドルの値段が安くなりました。普通に考えると大震災というのは日本経済にとっては悪いニュースです。しかも「部品不足で自動車の輸出が減るからドル売りが減ってドルの値段が上がるに決まっているじゃないか」と思えますが、大震災の後はドルが安くなると考えた人が何故か多かったのでしょう。

後から聞いてもはっきりした理由は分からないのですが、「保険会社が保険金を払う為に外国に持っている資産を売るからそれがドル売りの注文に繋がるだろう」とか、根拠らしい根拠ではないのに"世の中の多くの人がドルが安くなるだろうと思ったのでドルが安くなった"という非常に主体性の無いことをみんながやっている、こういう奇妙なことが起きました。
  
 
このように、為替レートは、市場で売買している人々の予想によって動いていますから、理屈で考えただけではなかなか分かりません。人々の予想には、さまざまな噂も影響するので、どういう噂が流れそうかということを予想する必要があり、それは非常に難しいことです。理屈で考えて為替が予想できるのだったら、経済学者は大金持ちになれるはずですが、実際には大金持ちの経済学者は多くありません。それは、理屈では予想できないからなのです。

予想が難しい理由がもう一つあります。今のレートは、売り注文と買い注文の量が等しくなる所で決まっています。これはつまり、今のレートを見て、ドルが値下がると思って売り注文をだしている人とドルが値上がると思って買い注文を出している人が同じだけいるということを意味しています。プロたちの見解がわかれている時に、どちらが正しいかを予測するのは簡単ではない、ということです。

今回のキーワードは、「為替レートは予測不能」です。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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