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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 資本コスト (企業財務管理、国際金融/平松拓)

資本コスト

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/08/13

前回は、企業の投資評価の話をしましたが、今回は企業の資金調達方法の選択についてお話します。

企業が資金調達する場合には、大きく、負債による調達と株主資本による調達の2種類があって、このいずれかで調達した資金で企業はその資産を賄っています。負債といえば、先ず、銀行からの借り入れや社債などの有利子負債のことが頭に浮かびます。しかし、企業はその他にも「商業信用」といわれる無利子の負債(例えば商品を購入しても未だ支払が行われていない段階の買掛金など)を抱えています。ただ、この「商業信用」は事業の遂行に伴って自然発生的に生じるので、自由には増やせないこと、また、逆に売掛金などの「商業与信」の金額の方が大きいケースも多く相殺されてしまうことなどから、一般には資金調達方法に含めません。その結果、負債での資金調達といった場合には、銀行借り入れや社債の発行が対象となります。

一方の株主資本ですが、株主資本を構成しているのは、株式を発行した時に株主(投資家)が払い込んだ資本金や資本準備金、そして利益を内部に蓄積した結果である利益準備金などです。その内、利益準備金は税引後の利益から配当を支払った残りが留保利益として組み入れられたものでが、企業の資産の内、負債債権者の取り分以外は残余資産として株主の取り分となることから、利益準備金も実質、株主からの調達と考えられます。つまり、株主資本による資金調達と言った場合、株式の追加発行(即ち増資)、税引後利益の増加或いは配当減額による内部留保の積み増しということになるわけですが、後者2つは企業の思惑通りにはいかない或いは機動性に欠けるので、実質的には増資による資金調達ということになります。

では、投資などのために資金を調達する必要がある場合に、負債調達、株主資本調達の二者の内、どちらを行うべきか、どうやって判断すべきでしょうか。答えは「コストの低い方に決めるべき」です。こう言うと、極めて単純なようですが、このコストの比較は実はそんなに簡単ではありません。ちなみに、こうした調達コストのことを、負債資本や株主資本の資本コストと言います。

まず、有利子負債で調達する場合、銀行や負債投資家に決まった利息を支払わねばならず、その分利益が減少します。さらに期日には元本を返済しないと破綻、所謂「破産」と看做されてしまいます。これに対し、増資で資金調達を行う場合には、元本に当る資本金の返済義務がなく、また、利息と対比される配当金の支払も義務ではありません。仮に配当金を支払う場合でも、税引後当期純利益の処分としてなので、利益額が減る訳ではありません。よって、増資できるなら増資した方が、より低コストでより安全で良いと思うかもしれません。しかし、これは一面の真実を孕みつつも、本来の経営者がすべき判断の考え方とは大きく異なります。

その理由は、第一に、投資家である株主に対して、返済や配当の支払の義務はありませんが、株主は当然に見返りを期待するから企業の株式に投資しているのであり、その期待している見返りは、他の企業の株式や他の金融資産等で同等のリスクのものに投資した場合に得られる見返り以上であるということを見逃していることです。仮に企業が破綻した場合、株主に残余資産としてその企業の資産が配分されるのは、負債債権者にその負債を限度とした配分が行われた後、まだ残りがあった場合に限られます。即ち、株主は債権者より高いリスクを負担しており、その分、高い見返りを期待して当然な訳です。つまり企業が増資をするということは、株式を保有、或いは新たに購入してくれる投資家に、そうした高い見返りを約束するということに他なりません。

第二に、企業の事業活動の果実(つまり、収益から利息以外のコストをさしひいたもの)は、内部留保に回る部分も含めて資金の提供者、即ち株式投資家や負債債権者に配分されますが、実はその2者に加えて税務当局もその配分に預かります。この点で、負債調達による利息支払の増加は会計上の経常利益や当期純利益を減らすことから、株主の取り分を減らすように見えますが、実はそれは税務当局の取り分が減って株主投資家と負債債権者の取り分の合計が増えることを意味しています。つまり、株主資本調達と比較した場合、一定の事業活動の果実に対して、税務当局の取り分が減るということは、両者の配分額の合計が増えることになる訳です。納税を目的に経営を行っている経営者がいれば話は別ですが、負債による資金調達は株主資本による資金調達に比べ節税のメリットがあるため、多くの場合株主の取り分が増えることになります。

尤も、債務による資金調達が一定以上増えると破綻のリスクが増すため、負債調達のコストに反映して、結果的に株主投資家への配分も減る結果となります。そのため、飽くまで適度なバランスは必要です。ところがここ数年、日本企業の財務状況を見てみますと、逆に株主資本の積み増し、負債の減額という方向に行きすぎではないかと思われる部分があります。経営の難しさが増して、財務の安定化を図る必要があることも理解はできますが、株式投資家を裏切るような安易な安全策が日本の株価にも反映しているのではないかということが懸念されます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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