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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ナレッジマネジメント(4)-「模倣困難な経営資源」と「ダイナミックな組織能力」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

ナレッジマネジメント(4)-「模倣困難な経営資源」と「ダイナミックな組織能力」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

12/08/07

前回は、経営資源としての知識が「持続的な競争優位の源泉」になり得るという点についてご理解頂くため、競争戦略の考え方についてお話しました。そこでは、まずマイケル・ポーターの競争戦略論の概要を説明し、その「企業の業績が環境条件によって決定される」という理論の問題点に言及しました。
その上で、競争優位を決定するもうひとつの要因として企業の内部資源に注目してきた観点を取り上げました。そのような観点から競争戦略論を構想することを、資源ベース・アプローチと呼んでいますが、
今回は、このアプローチが、どのようにして経営資源としての知識の重要性を見出していったのかについて解説したいと思います。

【模倣困難な経営資源】
資源ベース・アプローチの始祖は、エディス・ペンローズという経営学者であると見られています。
彼女は、1959年に刊行された『企業成長の理論』という著書の中で、企業を単に管理機構として捉えるだけではなく、資源の集合体として捉える視点を提示し、それぞれの企業の成長パターンが異なる要因を、経営資源の異質性に見出しました。
こうした考え方が、その後、1980年代の半ば頃から、持続的な競争優位の源泉を探索する経営戦略論の研究者らによって、発展させられていきました。前回も述べたように、同一の環境条件の下におかれた複数の企業が同じ競争戦略を採るとは限りません。
それは、戦略の実行に必要な経営資源を、全ての企業が保有しているわけではないからです。
例えば企業がある経営資源に基づく効果的な競争戦略を実行したとして、その経営資源がユニークであり、容易に模倣できないものであれば、競合他社はその戦略を模倣することもできません。
したがって、その戦略に基づく競争優位は持続可能性が高いものになります。
では、どのような経営資源が、模倣困難なユニークネスを持っているのでしょうか。
資源ベース・アプローチを採る論者たちは、その具体例として、組織の中に埋め込まれたノウハウ、その企業に対する顧客の信頼・ロイヤリティなどを挙げています。
このような経営資源は、長期的に一貫した学習プロセスや投資によって蓄積されるものであるため、競合他社が模倣しようとすると、相当の時間的コストがかかることになります。
また、市場での取引を通じて調達できるものでもありません。そのため、競合他社に対する参入障壁として機能することにもなるわけです。

【ダイナミックな組織能力】
ここまでの議論には、競争優位の「持続性」について、まだ曖昧な点が残されています。
資源ベース・アプローチの立場を代表するジェイ・バーニーのような研究者は、戦略の模倣困難性の問題を、模倣に時間がかかるという論点に還元しています。
そこでは、模倣に対する時間的なリードによって、競争優位の持続する時間が説明されることになります。
しかし、そもそも「持続性」とは、どの程度の時間の長さによって定義されるのかという問題は議論されていません。
企業が生産する製品やサービスのライフタイムは、そのカテゴリーごとに異なっています。
半年くらいの短い期間で新製品が投入される分野もあれば、10年以上に亘って製品の基本的な仕様が安定している分野もあります。
したがって、一口に持続可能な時間と言っても、競争戦略上、意味のある時間の長さは、製品分野ごとに異なるわけです。
しかし、製品分野のライフタイムは多様でも、その製品の市場という環境に大きな変化が生じた際、それでも競争優位が揺るがなければ、そこに戦略的に重要な持続性が存在したということは、共通して言えるでしょう。
資源ベース・アプローチを採る初期の論者たちは、環境の変化を考慮せずに、模倣困難な経営資源の特質を論じていたわけですが、ある経営資源の戦略的な重要性は、環境が変化しても普遍であるとは限りません。
では、何が環境が変化する中にあっても、競争優位を持続させる要因になるのでしょうか。
資源ベース・アプローチの論者たちは、それを変化に応じて経営資源の組み合わせや活用を行う組織能力だと考え、様々な概念化を試みました。例えば、ゲーリー・ハメルとC.K.プラハラードは、経営資源そのものの異質性ではなく、経営資源の組み合わせの異質性によって、他社の模倣できない顧客価値を提供する能力のことを、
「コア・コンピタンス」、中核的な能力と呼んでいます。また、デイビッド・ティースらは、市場の変化に対応して経営資源を統合したり、再構成したりできる能力を、「ダイナミック・ケイパビリティ」と呼んでいます。
このようにして、資源ベース・アプローチの論者たちは、経営資源そのものの模倣困難な異質性と、それを環境変化に応じて組み合わせる能力とを、持続的な競争優位の源泉として見出してきたわけです。
そして、模倣困難な経営資源の本質とは、つまるところ知識であり、また環境変化に対応するダイナミックな組織能力を提供しているものも、また知識であるということが分かってきました。

次回は、このような多様な側面を持つ知識の捉え方について論じてみたいと思います。

 

分野: ナレッジマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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