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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 経営理念について (企業財務管理、国際金融/平松拓)

経営理念について

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/07/24

経営理念について

今日も前回の続きで、マネジメント・コントロールの分野の話ですが、経営理念についてお話しします。

私達のビジネススクールでは9割以上の人が職業を持ちながら学んでいますが、先日ビジネススクールの授業の中でその学生の皆さんに、自らの会社の「経営理念」、或いは「企業理念」と呼ばれるものを覚えているか尋ねてみました。その心は、経営理念は企業の経営にとり極めて重要な要素ですが、実はあまり多くの社員に浸透していないかもしれないと考えたからです。事実、私が30年近く民間企業に勤めた経験では、少なくとも若手と言われた時代には自社の経営理念が何であったか認識していませんでしたし、また、何時頃から自社に経営理念といったものが存在するようになったかということについての記憶もあいまいです。しかし、学生への質問の結果は、予想をはるかに上回る人が自社の経営理念を正確に認識していました。

続いて、それではどうして経営理念を認識するようになったかを尋ねてみたところ、中には就職活動の為にそういうものを覚える必要があったと答える人や、あるいは昇格試験で必ず出題されるからという答えもありましたが、近年、社内で「企業の社会的責任」といったことと共に、経営理念が強調されるようになってきているという人が多くいました。

経営理念、あるいは企業理念については企業それぞれに様々な解釈があって、「斯くあるべし」といった明確な定義がある訳ではありませんが、一般的には会社の「存在意義」であるとか「ミッション(使命)」、「経営についての方針」、「創業の精神」などを謳ったものが多いようです。そして理念の先には、「将来のあらまほしき姿としてのビジョン」を掲げているところが多く見られます。呼称についても「企業理念」とか「経営方針」、或いはやや時代がかった表現で「綱領」など様々です。比較的よく知られているところでは、抜粋ですが、本田技研工業の「人間尊重」、「3つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)」とか、ファスト・リテイリングの、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」などがありますが、これらは外部の人間から見ても、それぞれの企業の特色をよく表しているように思えます。

それでは、こうした「理念」がここにきて強調されるようになってきたのはなぜでしょうか。クラスの中で少し議論したのですが、以下の3つの理由で、企業として価値観を明確にする、あるいは企業の中で価値観を共有することの重要性が増してきていることがあるのではないかというのが結論でした。

第一に、戦後復興期から高度成長期以前の日本企業に与えられた使命は、当時のモノ不足を脱却すべく、とにかく使えるモノを効率的に大量に生産する事であり、それを達成すればその企業は成長し、従業員もより豊かな暮らしを手にすることができました。その中で企業に特に期待されたのは、「丈夫で長持ちする製品」、「機能の優れた製品」を作るということであり、それさえ達成しておけば商品は程度の差はあるにしても売れた訳です。そうした状況の下では、企業の価値観もシンプルで、価値観の共有も容易であり、敢えて理念といったものを強調する必要性はあまりなかったのではないでしょうか。

それに対し、モノが豊かになった今日では、企業は単に使えるモノや機能的なモノを際限なく作り出しても、市場で売れるわけではありません。かといって、売らんがために価格を下げるのでは従業員の暮らしは豊かになりません。今や企業への期待は、様々な意味で消費者が求める価値を持つモノやサービスを提供することであり、それができなければ存在感が問われるという時代になってきているのです。そのような環境の下に置かれた企業にとっては、一定のスペックを持った製品を効率的に生産するということだけでは不十分で、開発、生産、販売の各現場で、企業として顧客に提供しようとする価値が共有され、それが商品・サービスに具体化されることが必要です。そのために経営理念が強調されるようになっているということが考えられます。

第二には、企業のステークホルダー、即ち利害関係者には、なにも顧客や従業員ばかりではなく、株主やサプライヤー、そして地域コミュニティも含まれます。企業の社会的責任、いわゆるCSRという言葉は大分社会に根付いてきましたが、企業が自らの事業活動の意義やそれを通じてどのように社会に貢献するのかを明確にすることが、これら広範なステークホルダーに受け入れられるために、必要となってきています。

最後に、企業を取り巻く経済・社会は、技術革新、グローバル化、規制緩和などにより急速に変化しています。そうした中で、これまではトップによって設定された経営理念やビジョン、そして経営幹部の外部環境認識や内部資源認識に基いて策定された戦略に基いて、現場のマネージャーや従業員は業務の執行や意思決定を行うことを期待されていました。しかし、これからは、変化する現場の状況に応じて、現場により近い所で戦略の練り直しも含めた判断、意思決定が行えることが競争上、重要になってくるでしょう。そうした際に、企業としての一貫性を保ち、意思決定の向かう方向性がバラバラにならないためには、企業が目指す価値、即ち、経営理念や企業ビジョンが、社内に浸透している必要があります。

私は、以上の3つの中でも、最後の点が最も重要な点ではないかと思います。即ち、最近の若手社員が経営理念や企業ビジョンといったことに接する機会が増えているのは、現場力に対する企業の期待の表れということができるのではないでしょうか。

今日のキーワードは経営理念、あるいは企業理念としてまとめたいと思います。


分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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