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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ナレッジマネジメント(2)―「情報化のパラドックス」と「BPRの挫折」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

ナレッジマネジメント(2)―「情報化のパラドックス」と「BPRの挫折」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

12/07/04

前回は、ナレッジマネジメントという経営コンセプトが、組織の内外に存在する知識を経営資源として活用し、業務プロセスの改善を図ろうとするものだということをお話しし、経営資源としての知識には、どのような特性があるのかを議論しました。

 今回は、このような経営コンセプトが、興隆した背景を概観してみたいと思います。


■【ナレッジマネジメントの興隆と定着】
 ナレッジマネジメントは、1990年代後半に欧米で注目されはじめたのですが、間もなく日本の企業の間にも普及していきました。

 文部科学省の科学技術政策研究所が行った第1回「全国イノベーション調査」では、1998年から2001年の間にナレッジマネジメントの実施に取り組んだ企業を把握していますが、その割合は全産業平均で20%に達していました。

 この90年代後半を通じて、欧米諸国や日本では、ナレッジマネジメントに関する非常に多くの専門書や啓蒙書が刊行されましたし、ナレッジマネジメントを支援する様々なソフトウェアが開発されました。

 その頃のような流行現象は、だいぶ前からみられなくなりましたが、今日でも割とコンスタントにナレッジマネジメントを扱った新刊書は刊行され続けています。経営手法としてのナレッジマネジメントは、品質管理に類する標準的な取組として、ある程度企業内部に定着したように思われます。


■【情報化のパラドックス】
では、このようなナレッジマネジメントの台頭は、何故、90年代後半に始まったのでしょうか。私は前回、経営資源としての知識の特性についてお話しましたが、その重要性に関する指摘は実は60年代から行われていました。

ピーター・ドラッカーは、1969年に出版された『断絶の時代』という著書の中で、「重要なことは、知識がいまや先進的かつ発展した経済における中心的生産要素となったということである」と述べていますし、それ以前から多くの経済学者が、経済成長の要因としての知識の重要性に言及していました。

しかし、その後、実際に先進諸国の企業において推進されたことは、知識というよりも、情報を増大させる取組でした。70年代には、業務プロセスへのコンピュータの導入が進展し、「情報化社会」というビジョンが明るい将来のイメージとして提示されました。その後も、情報技術(IT)は目覚ましい進歩を遂げ、インターネットの普及と相俟って、膨大な情報のフローを企業にもたらしました。この間、情報化の波は、生産性を飛躍的に向上させることが期待されていたわけですが、実際には、その逆の現象がしばしば発生しました。

前回お話したように、情報は知識とは異なり、それを活用する主体の存在を前提とせずに生成します。このため、高度に発達したITとネットワークの導入による膨大な情報のフローは、その中から意味のある情報を探索することを困難にし、却って業務効率を悪化させるということが起こりました。

このような現象は、「情報化のパラドックス」と呼ばれています。

この問題を克服するために、単に情報量を重視するのではなく、意味のある情報に着目し、それを知識として活用し、蓄積していくことが重要であるということが、あらためて認識されるようになった訳です。


■【BPRの挫折】
ナレッジマネジメントが台頭した要因には、90年代のはじめに流行したビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)が挫折したこともあげられます。

BPRは、企業内部の情報の流れに注目し、顧客満足度の向上という目的のために業務プロセスの根本的な組み替えを図ることを主要な手法の1つとして用いるものでした。しかし、ただ情報の流れに注目して業務改善を図っていくというアプローチは、
概して無駄と見なされるものを徹底して削減していく方向に向かっていきます。

それは組織そのものをダウンサイジングしていくことを正当化するための根拠として使われる傾向がありました。

しかし、その結果、
実は組織内部にあった重要な知識が外部に流出してしまい、組織的な思考能力がかえって減退するといった問題が生じました。
また、リエンジニアリングが導入されている企業の従業員は、常に自分たちが削減の対象となる可能性に脅かされ、主体的に業務効率の改善に取り組もうとするモチベーションを損なわれました。

こうしたことが、却って業務効率の悪化を招くという逆説的な結果をもたらした訳です。

この経験も、単に情報の流れに注目するのではなく、知識の所在に注目することの重要性を、企業に再認識させる契機となりました。


 ナレッジマネジメントは、この「情報化のパラドックス」と「BPRの挫折」を通じて企業が直面してきた課題を乗り越えるという挑戦に応えるものとして期待され、台頭してきたとみることができます。

 次回は、ナレッジマネジメントが持つ競争戦略上の意味についてお話したいと思います。

分野: ナレッジマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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