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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の業績評価の尺度(1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の業績評価の尺度(1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/06/25

今日は企業の業績評価の尺度としてのROEの話です。

これまで、企業の業績を表すのものとして財務諸表について触れてきましたが、それでは、実際に企業の業績を評価する時には、その財務諸表の中のどういった数字が業績の尺度として重視されているでしょうか。

一口に企業の業績評価といっても様々な視点があり、それに応じてどういう尺度を用いるかが変わってきます。例えば、営業部門や生産部門の業績を見ようとするなら、売上や売上原価の数字、或いはその増減に注目するでしょうし、財務部門の成績を見る際には、資産の運用益が含まれる「営業外収益」の数字などがチェックされることになります。また、また、取引銀行の観点からすれば、融資が利息を含めてきっちりと返済されるためには利益に着目するはずです。それも利息を支払った後の経常利益が安定的に黒字となっていることに注目するということになります。

それでは企業の経営者は業績の尺度としてどのような数字を重視しているでしょうか。金融機関の調査によると、日本の企業(上場企業の経営者)が業績評価の尺度として最も重視している尺度は、株主資本利益率(ROE、Return on Equity)という結果となっています。これは当期純利益を株主資本(自己資本)の数字で割った値ですが、株主による出資金等の持ち分を利用して、どれだけの利益を生み出しているかを表すものです。少し言い方を変えると、投資家が一定の額面の株式に投資した時に、その資本を利用して企業がどれだけの利益を上げるかという比率です。その点では「(株主にとっての)企業価値の最大化」という、財務の目的にも密接に関係した数字ということになります。

このROEを用いることの利点は、まず第一に、次の3つの要素に分解して評価できるということが挙げられます。①売上高に対する利益率、即ち「収益性」と、②売上をあげるために資産をいかに利用しているかという「資産の利用の効率性」、そして、③資産を取得するために、返済しなければならない負債ではなくて、株主がどれだけ持ち分を拠出しているかという、「資金調達面の保守性」---の3つです。つまり、同じ企業のROEが前年度から変化したり、或いは他社のROEと比較した時、その違いが収益性からくるものなのか、資産活用の効率性の問題なのか、或いは資金調達に占める自己資本の比率が主因なのかが明らかとなり、それぞれに応じた打ち手を考えることができます。つまり、ROEにはそれをコントロールするために、3つの計器付操縦桿がある訳です。この、ROEを見ることで、会社の財務業績を3つの操縦桿でコントロールするという手法を初めて用いたのはアメリカのデュポン社ですが、1920年代のことなので、かれこれそれから90年近くも経つことになります。

もう一つ、このROEの利点は、異なる業種の企業の比較が可能だということです。企業の業績を先ほどの3つの操縦桿、即ち「収益性」、「効率性」、「保守性」の観点から見ると、一般に業種によって大きな差が目立ちます。例えば、電力などのエネルギー産業などは大規模な設備が必要で、資産の大きさに対する売り上げ(即ち「効率性」)は相対的に小さくなりがちですが、しかしその分、外部からの参入が難しく競争が限られることから、売上高に対する利益の比率(即ち「収益性」)は相対的に高くなる傾向があります。同様に、資産を賄うために用いられる資本に占める株主資本の割合(即ち「保守性」)についても同じようなことが言え、その結果、ROEで見るとならされて、業種による差が消えて優良な企業とそうでない企業との違いが浮き上がることになります。

このように優れた面を持つROEですが、欠点もあります。最大の欠点は、ROEは損益計算書中の利益を貸借対照表中の株主資本で割ったものですが、株主資本の数字はあくまで簿価であり、その時の真の株主資本の価値を表しているわけではないことです。つまり、これから株主になろうとする投資家は、額面価格、例えば50円で新規に株が買える訳ではなく、あくまで市場価格で買わねばなりません。従って、株価が跳ね上がっている企業への投資は元手も大きくかかることになるので、簿価で計算したROEが高い会社への投資が有利になるとは限らないことになります。本来であれば、株主資本の簿価を使用するのではなくて、時価(即ち株価総額)で計算しないと、異なる企業のROEの比較は厳密な意味では意味を持たないわけです。ところが、業績好調の会社の株価は将来の利益を先取りして上昇してしまう傾向があるので、時価を用いると業績好調の会社のROEは寧ろ低くなってしまいます。こうした欠点はあるものの、このROEに取って替わるべきより適切な尺度がないこともあって、今でもROEが重視されている訳です。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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