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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の業績評価の尺度(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の業績評価の尺度(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/06/26

前回、日本の経営者が業績の評価のための尺度として、ROE、株主資本利益率を重視しているというお話をしました。今回は、日本企業の実際のROEの水準がどうなっているのか、その点についてお話しします。

日本企業のROEを当期純利益ベースで見ると、中にはファストリテイリングのように20%前後にも達する企業がありますが、これは米国の優良企業と比較しても遜色のない数字です。しかし、日本の上場企業の平均では5%前後の水準にとどまっており、2桁のROEが一般的な米国企業との間には大きな差があります。リーマンショック前の2007年、空前の利益を上げていたトヨタでもROEは14%程度と、平均的なアメリカ企業とあまり変わらない水準でした。それでは、日本企業のROEはずっと低い水準にあったのかといえば、実は1970年台迄は平均が10%台半ばの水準にありました。しかし、その後ずっと緩やかな低下傾向を辿った結果、2000年以降やや持ち直しの傾向が見られるものの、1桁半ばにとどまっています。

こうした日米企業間のROEの格差の要因を考えるために、日本企業のROEについて、前回お話した「3つの操縦桿」、即ち、①売上高利益率(一定の売上高からどれだけ利益をあげているかという収益性の尺度)、②総資産回転率(一定の総資産を用いて、どれだけの売り上げに繋げているかという効率性の尺度)、③財務レバレッジ(資金調達面で株主資本だけではなくどれだけ負債を活用しているかという資金調達面のリスク選好の尺度)―――の要素ごとに見てみましょう。

まず、日米企業の現状を比較すると、3つの要素の中で特に大きな差があるのは1番目の売上高利益率で、日本企業のROEの相対的な低さの主因は「収益性」の低さからきていることになります。また、日本企業についての3つの要素のこれまでの変化を見ると、2番目の総資産回転率には顕著な変化がないのに対し、売上高利益率は70年頃より2000年頃にかけて継続的に低下しており、また、3番目の財務レバレッジも80年頃より低下し始めました。つまり、売上高利益率の低下に加えて、かつては米国企業などに比して相対的に高かった財務レバレッジも低下してきたことが、日本企業のROEが相対的に低くとどまる結果に繋がっています。

こうした背景には、わが国企業をとりまく経営環境の変化があります。即ち、企業は嘗てはメインバンク制度の下で銀行からの借入に頼りながら、言わば作れば売れるという需要超過の市場にも恵まれて生産を拡大し、一定の利益率を確保しながら規模を拡大させることができました。しかし、やがて需要の一巡や円相場の上昇などもあって収益性が低下し始め、一方、金融の自由化やバブルの崩壊後の金融機関の対応の変化もあって銀行との関係が変化し始めると、企業は収益性改善を目指して積極的な投資を行うために資金調達を活発化させる代わりに、安全性を志向して無借金化を目指して借入金の返済を行い、それまで低レベルに留まっていた株主資本比率の引き上げを図るようになりました。その結果、財務レバレッジが低下したことで安全性は増しましたが、低下した収益性は改善せずにROEの低迷が続いています。ROEが低迷するということは、株主の投資に対するリターンが低いということであり、結果的に株価の低迷にもつながっています。

経済が自由化、グローバル化の段階を迎える中で、ROEの低迷が続くわが国の企業経営のあり方は、一面では、運転に不慣れな新米ドライバーにも例えられるのかもしれません。つまり、免許を取って公道を走るようになったばかりの新米ドライバーが、不安感からスピードを落とし過ぎて渋滞を発生させてしまうことがあるように、銀行という監視員、指導員がいなくなった企業は、様々な経済問題に晒される中で、債務返済という安全策に徹して、リスクを伴う前向きな投資が十分に行えていない可能性があります。このことは今日の経済全体の低迷にも無関係ではないと思われます。

尤も、前回触れたように今日の日本企業の経営者はROEを最も重視する指標として挙げています。また、ROEの水準も実際に2000年近辺をボトムに若干ながら回復傾向にあります。今後はより多くの企業が実際にROEを向上させる施策を実施することで、日本経済全体の活性化にも繋がるような展開を期待したいものです。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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