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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 国際企業分析(その2) (経営リスクマネジメント/中村裕昭)

国際企業分析(その2) (経営リスクマネジメント/中村裕昭)

12/03/26

前回に引き続き国際企業分析について、実際の分析手順など具体的にお話していきます。

前回は分析にあたってどういう資料を集めるか、どういう情報を集めるかという点を紹介しましたが、次のステップは集めた情報をどういう風に読み込むかという点です。

企業の総合力を分析する順序としては、分析者によってクセのようなものがあり、絶対にこうしなければならないという規則のようなものはありません。
しかし一般的には、まずマクロ(全体的な大きいところからの視点)からミクロ(小さな視点)へという分析が行われています。
外国企業の分析に限りませんが、第三者として外部から企業を分析する場合には、まず細部にこだわっていると、全体に目が行き届かなってしまうという事があるので、まずは企業の全体像を把握することから始めるという事です。

最も分かり易いステップとして、分析の最初は企業の歴史や事業ドメインから見ていきます。どこの国で誰が設立し、どのような経営の歴史をたどり、現在の企業の姿になったのか。
そしてその会社はどの地域で、どのような事業を営んでいるのかという点です。
これらをざっくりと見ることによって、財務諸表だけ分からない企業のDNAのようなものが見えてくるわけです。

企業の歴史や事業内容について、多くの企業は、ホームページで社史、会社の歴史、事業概要等を公開しています。
しかし、企業自身が公開している情報は、綺麗に化粧が施されているという可能性がありますから、客観的な情報で裏づけを取るということが必要になってきます。
それには、過去の新聞とか雑誌などを丹念に見ていくこともひとつの手ですが、これには時間が掛かり過ぎます。
そこで企業分析の専門家は、ディスクロージャー資料等に加えて、企業調査会社が提供する、有料のデータベースなどを併用しながら、多角的調査を進めていくことになります。

外国の企業と国内の企業の経営分析というのは、分析の手法としてはほとんど変わりませんが、日本企業が外国企業を分析する際に注意すべき点がいくつかあります。
まず、経営者など事業執行者の経営哲学とか、経営手法について理解することが必要です。これらは、国ごとによって色々違います。

例えば、「中国の国営企業」「韓国の財閥企業」「カリスマ経営者によって経営されて、急速に拡大したアメリカのIT企業」「従業員が参加する監査役会や、銀行が影響力をもっているドイツ企業」など、それぞれに経営の仕組みが異なるので、日本企業を分析する際の常識を持ち込めないということがあります。

更に、業種によって各国で法令や規則が異なりますので、日本企業と同業であってもビジネスモデルは異なるというような点もあります。
例えば、大型の小売企業というものを分析する場合でも、国によって経済社会の発展段階とか国民性、流通の仕組み、店舗規制などが異なる為に、各国の事情をよく理解しなければ企業を理解できないということになります。

一方、開示資料にこれらのことが全て記載されているわけではないので注意が必要です。コーポレートガバナンスに関しての組織などの記載は、概ね掲載されていますが、各国における詳細の経営手法、経営のクセというようなものは記載されていませんし、事業上遵守するべき法令や規則等については、ディスクロージャー資料に書かれている場合もありますけれども、必ずしも十分ではありません。
したがって調査をする場合は、外国企業の所在国の経営について書かれた書物、あるいは研究者の論文などを丹念に調べる必要があります。

そのほか、外国企業を分析する際の留意事項は、細かく言えばきりがありませんが、ひとつに会計制度の違いというものがあります。
各国の財務諸表に差があるということです。在庫の評価方法や研究開発費の計上の仕方、あるいはリース料の計上方法などは、国によって異なります。
また、開示資料の内容にも差があります。
企業が社債を発行する場合や、銀行借り入れを行う場合に課せられる財務制限条項というものがありますが、資産の売却の制限や、追加負債の制限などについて十分に開示されていない国もあります。
その為に対象企業において経営の自由度が失われていることが第三者には分からないという恐れがあるわけです。

各国の経営、会計、金融の違いを翻訳できたり、隠れたリスクといったものを表示できたりするようなシステムがあればいいのですが、実際には存在しません。
財務面では、主要国のそれぞれ異なる会計基準を比較可能なものしようとする国際的な検討は既に行われていて、「国際財務報告基準」というものが誕生しています。
EU諸国、カナダ、中国、ブラジルなどの国は既に適用しています。日本でも一部の企業では任意適用を開始していますし、強制適用も視野に入ってきています。
大きな国としては例えばアメリカなど、他の主要国でも採算用の方向が示されています。しかし、経営の手法とか各国の法令とか商習慣、あるいはビジネスモデルというようなところまで、全世界的に統一されるということはありませんので、
外国企業を分析する難しさというのは、依然残らざるを得ないという事になります。

これまで、2回に亘って国際企業分析の話をしてきましたけれども、最後に、国際企業分析の面白さについてお話します。

なんといっても、ひとつひとつの分析のプロセスに謎解きの面白さがあるということです。一定部分まで解明出来ると目の前が急に明るくなると爽快さを感じます。
例えば、「フェイスブックという会社はどのように収益を確保しているのか」というような謎ですとか、「フィンランドのノキアが製紙会社からどのように世界的な携帯電話事業者になったのか」、あるいは「韓国のグループ企業と、日本のグループ企業はどう違うのか」、「バドワイザーで有名なアメリカのナンバーワンのビールメーカーを買収して、今ベルギーの企業がビールメーカーとしては世界のトップ企業になっているのですが、どうしてそういう事になったのか」など、国際企業分析には、気になる「謎」が満載です。
すぐ解ける謎もありますし、中々解けないものもありますが、謎解きはスリリングで楽しいですね。

分野: 中村裕昭教授 |スピーカー:

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