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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 「政策のための科学」拠点形成に向けて (科学技術イノベーション戦略/永田晃也)

「政策のための科学」拠点形成に向けて (科学技術イノベーション戦略/永田晃也)

12/03/14

 科学技術イノベーション政策に関するトピックを取り上げはじめて今日で10回目になりますが、今回はひとまずの締めくくりとして、これから九州大学で取り組まれる事業の構想についてご紹介しておきたいと思います。

<九州大学の構想が、文部科学省の拠点形成事業に採択されたという記者発表が1月にありました。その内容について詳しく聞かせて頂けますか。>

 それは文部科学省の公募事業で、正式名称を「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』基盤的研究・人材育成拠点整備事業」というものです。
 科学技術イノベーションに関する近年の政策論議の中で、「政策のための科学」という視点が重視されるようになってきたことについては、この放送で前に話しました。文部科学省の公募事業は、客観的根拠(エビデンス)に基づいて政策を立案できる政策担当者や、この新しい研究領域の担い手となる研究者、あるいは従来の様々な専門領域と「政策のための科学」をつなぐ役割を担う人材の育成を目的とするものです。
 公募の結果、拠点間連携をまとめる総合拠点として政策研究大学院大学、強みを活かした領域開拓拠点として九州大学の他、東京大学、一橋大学、大阪大学と京都大学が選ばれました。

<九州大学の構想には、どのような特徴があるのでしょうか。>

 九州大学の強みは、やはり総合大学として多様な教育研究資源を蓄積しており、それらを「科学技術イノベーション政策のための科学」という領域横断的な新しい拠点形成に活用していくための学内システムもあるということです。
 また、アジア諸国の大学や研究機関との連携を深めてきたことや、西日本地域の基幹大学として機能してきたという地理的なポジションも、九州大学の特徴です。今回の構想には、このようなポジションを活かした地域フォーカスも設定されています。
 さらに、今回の構想では、標準的なコアカリキュラムと、領域開拓拠点としての固有のカリキュラムからなる重層的な人材育成プログラムの開発を提唱したことが重要なポイントでした。

<こういう新しい分野で標準的なコアカリキュラムを開発するというのは、難しい課題になりそうですね。>

 その通りです。「科学技術イノベーション政策のための科学」は、まだ学問分野としての体系すなわちディシプリンが確立していないフロンティアですから、まずコアを形成することが重要な課題になりますが、それは容易な課題ではないでしょう。そこで、私たちの構想は、この課題を遂行するために拠点間連携に基づくコンソーシアムを構成することを提案しています。
 「科学技術イノベーション政策のための科学」という新しい分野の担い手となる研究者は、全国の大学・研究機関に分散しています。そのため、いかなる大学でも、1機関のみでは全国標準となるコアカリキュラムを構築できないと思われます。もし個々の大学が、別々にコアの構築に取り組めば、複数のユニークなカリキュラムができるでしょうが、結局「科学技術イノベーション政策の科学」のディシプリンが何であるのかが社会的に認知されないまま廃れてしまうことにもなりかねません。そうならないようにするためには、必要な知識を持った研究者をコンソーシアムに結集させ、どのような科目をコアカリキュラムに含めるべきか、個々の科目では最低限どのような知識や能力の習得を目的とするべきといった事項に関わるコース開発を、共同で行う必要があると思います。

<コアカリキュラムには、どのような科目が含まれることになると思われますか。>

 まず科学技術イノベーション政策の「概論」と呼べる科目は、私は必要だと思っています。そこでは、政策の目的や対象範囲、科学技術イノベーションのプロセスに対する政策介入の理論的根拠、政策史の概観、政策に関連する制度の概要、政策手段の多様性などに関する基礎知識を習得できるようにするべきでしょう。
 また、政策の立案、決定、実行、評価を支援する政策分析の手法を習得するための科目も必須です。そこでは、定量的な分析手法だけではなく、科学技術イノベーションに関する統計や、論文・特許データベースの使用方法についても習得できるようにしたら良いと思います。
 さらに、前回お話したように科学技術イノベーションを社会との関連において捉え、両者のインターフェースを構築するための視点を提供するための科目も必要でしょう。そこでは、科学者のコミュニティの特徴、科学に対する公衆理解、コンセンサス会議、サイエンス・コミュニケーションなどのトピックが扱われることになると思います。

<政策担当者を育成するという目的からみると、知識だけではなく実践的な能力を習得するための工夫も必要になりそうですね。>

 そうです。そのためには、演習形式で、政策課題を設定・分析し、政策提言をとりまとめるまでの一連のプロセスを経験する科目も必要になると思います。
 いずれの科目も領域横断的な知識を習得するためのものですから、必要に応じて複数の専門分野の教員が担当するオムニバス形式をとることになると思います。また、政策立案演習の指導者には、実際の政策担当者などを学外から招聘できると良いでしょう。

<九州大学の拠点が提供する固有カリキュラムには、どのような科目が含まれますか。>

 これには、例えば東アジア諸国の科学技術イノベーション政策をレビューし、政策の国際的なハーモナイゼーションのあり方について講じる科目、西日本地域のイノベーション・システムを対象として産業競争力を構成する要因などを論ずる科目が含まれるでしょう。また、環境・エネルギー政策のような個別の政策領域について、社会科学的なアプローチだけではなく、工学的・生態学的なアプローチで論じる科目、地域のサステナビリティをテーマに、地域医療、都市工学、農業問題、防災システム等に関するトピックを取り上げる科目などを提供してみたいと考えています。

<今後のスケジュールは、どのようになっていますか。>

 平成24年度は、拠点間連携を進めながらカリキュラムを準備し、平成25年度から、大学院の共通教育科目として開講する計画です。その後、この分野の学位を授与する新しい専攻を設置することも計画されています。
 来年度は準備期間ですが、その間に様々な公開シンポジウムなどを開催して、広く拠点形成事業に対するご理解を頂くようにしたいと考えています。そのような場で、リスナーの皆さんのお目にかかれることを楽しみにしています。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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