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成熟期のマーケティング2(マーケティング/出頭 則行)

12/02/01

成熟期のマーケティング2(マーケティング/出頭 則行)

前回は成熟期のマーケティングというお話で、日本は今成熟期だと言われていますが、そうではなく、衰退期の事を成熟期といってここまで引っ張ってきているのではないかという話でした。

■成長戦略と一心同体のマーケティング 

敗戦を終戦と言った様に、停滞した20年の後、多くの人が日本はもう衰退期に入ってしまったのか,昔のギリシャやポルトガルになってしまうのではないかと怯えを抱いていて、でも衰退という言葉ではなく成熟という言葉を使うことで,何とか納得しようとしているのではないかと思います。しかし、日本が成熟期というのは間違いない事で、日本が本当に先頭を走っているため、成熟期にどのようなマーケティングをすべきかに関しては教科書がありません。マーケティングはアメリカで生まれたもので、常に成長戦略、売る為の勝つ為の成長戦略で、右肩上がりしかありませんでした。

現今、日経新聞でジャック・ウェルチの本をとりあげていて、英語のタイトルは「Winning」(日本語タイトル「勝つ経営」)、経営書としてベスト3に入るという紹介をされていました。ジャック・ウェルチの考えたミッションとは、GEを世界で最も競争力ある企業にする、その為には全ての事業を市場で№1か№2にし、その可能性のない事業は売却するか閉鎖するというものです。これはやはり勝利、成長の為のマーケティングです。しかし、成熟期を迎えた日本にこのような考え方を援用出来るかというと、そういうことはなく、教科書のない世界に踏み入ってしまったわけです。

■留学をしない若者 

日本の若者はこの頃、留学を志さなくなったと言われています。現代の若者は覇気がない、元気がないと言われています。多くの若者は外国に行って一体何を学べるのかと内心では思っているのではないでしょうか。この成熟した日本にあって、外国の成長戦略を学ぶということに一体どんな意味があるのだろうと薄々感じているのではないでしょうか。

■東日本大震災の衝撃 

特に東日本大震災は日本人全体に大きな衝撃を与えました。関連した多くの著作が世に溢れています。佐伯啓思さんは「反幸福論」という本を書きました。幸福ではない事が常態で、幸福である事の方が異常なのだと仰っています。また、その本では、何故人は結婚(先祖と子孫の継続と、現社会との結びつきを交差させるもの)しなくなったのかを考察しています。あるいは、サンデルという、結構難しいことを書いている哲学者の本が日本ではブームです。彼が言っているのは、人間は個人としての自由や権利というものは当然あるけれど、社会というコミュニティに生まれてくるため、コミュニティの掟みたいなものを背負っており、一人で生きているというわけではないということでしょう。それが日本でブームになってしまうことに日本の置かれた現状が伺われます。東日本大震災では、絆という言葉があまりに安易に使われている気さえして、少し気持ち悪いです。サマセット・モームという人の「人間の絆」という小説があります。結構有名な本で、英語タイトルは「Of Human Bondage」といいますが、bondageとは人間を縛るものという意味です。それを人間の絆と意訳したのです。絆は縛るものなのです。日本は今まで自分を縛るも
の、すなわち絆、を一生懸命断ち切ろうとしてきました。血縁、地縁、隣との付き合いを断ち切ってきて、今現実に起きている事が孤独死であったり、年間三万人以上の自殺者であったりするわけです。振り返ってみるとあまりに一人ぼっちすぎる自分に慄然としているのが今の日本人ではないでしょうか。

■日本を豊かな成熟市場にするためのマーケティング理論とは 

東日本大震災は大きな衝撃でしたが、日本人が置かれていた非常に孤独な状況というのがより顕になったということだと思います。これから我々は、日本のマーケティングを自ら考えないといけません。世界に一度も起きていない状況で、この成熟した日本の市場の中で、どうしたらいいのかということです。

マーケティングの対象はマスからセグメント、セグメントから個人(one to one マーケティング)に移ってきて、極限まで来ています。これからのマーケティングの方向の一つとして、個人の心の中に入っていくというのがあります。消費者心理学は今、流行の学問領域になっています。もう一つの方向は個人( one to one) ではなく、もう一回マーケティング対象(消費者)をコミュニティの中でとらえようとするものでしょう。ソーシャルメディアの隆盛がこの傾向を裏付けています。日本におけるマーケティングも、 one to one からコミュニティをベースにしたマーケティングに向かうのではないかと私は予感しています。日本こそ率先して成熟市場のマーケティングのセオリーとプラクティスを開発していくべきで、その事による世界への貢献は大きいと思います。もう借り物のマーケティングでは済まない時代を日本では迎えてしまったのです。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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