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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 国際的な会計戦略の流れ1(会計/岩崎 勇)

国際的な会計戦略の流れ1(会計/岩崎 勇)

12/01/13

これまでずっと国際会計基準(IFRS:国際財務報告基準)の話をしてきていますが、今回は改めてこの国際的な会計戦略の流れをお話します。地域を大きく分けるとヨーロッパ(EU)、アメリカ、日本の3極になりますが、今回は、その3極をどういうような会計の視点でみていくかということで、特にEUと日本のお話をします。

■EUが国際会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)を戦略的に利用した理由 

最初にEUですが、なぜEUが国際会計基準の設定に積極的に関わり始めたのかということについて簡単な別の例で説明します。すなわち、米国のドルという世界通貨がありますが、EUはこのドルに対してユーロを作りました。要するに、EUというのがアメリカに対抗する形で経済的にも政治的にも全部できていると考えると分かり易いです。この会計版ということで、EUにはEU指令というEUにおける会計の指令があります。この指令で従来はやってきましたが、EUというローカルの基準というだけで、それだけであるとアメリカに対してあまり力を持たないので、アメリカに対してよりプレッシャーをかけられる基準を作りたいという話になりました。そこで着目したのが国際会計基準です。そこで、この国際会計基準をEUがリーダーシップを発揮して設定し、そのIFRS(国際財務報告基準)に基づいて作成された財務諸表をアメリカの国内市場で調整表なしに受け入れてもらう為に、現在のIFRSの設定に積極的に関わったというのが経緯になります。

そして、既にこの戦略は成功しています。すなわち、2008年に国際会計基準バージョンでEU企業が作成した財務諸表を、米国市場で調整表無しで受け入れてもらえるという状況が既に到来しています。言い換えますと、基本的にはアメリカではアメリカの基準に直さないといけませんが、自国基準で財務諸表を作成した場合はアメリカ基準への調整表が必要であるということになっております。それを無くす為に、EUの指令で作成した財務諸表ではなく、IFRSをEUのリーダーシップの下に作成し、これに基づいて作成した財務諸表を米国基準への調整表無に受け入れてもらうという戦略をとり、これに成功しているということです。

さらに、EUはそれにとどまらず、EUのリーダーシップの下で、EUが考えるような国際会計基準、IFRSを作り、全世界に採用させたいという戦略を考えています。

■EUの国際会計戦略 

EUは日本よりも会計においては戦略的です。日本では会計に戦略はないと考えられますが、EUは戦略として2005年に同等性評価という戦略を取り入れました。すなわち、EU域内で資金調達するには、IFRSまたはIFRSと同等の基準である会計基準のみを認め、それ以外のものを認めないというものです。このため、各国の会計基準がIFRSと同等であるかどうかを評価するというのが同等性評価です。日本の例でいくと従来においては日本とEUは会計基準に関しては相互承認の制度を採用していました。そのため、日本の基準を英文に訳して向こうで受け入れてもらい、向こうのものをこっちで受け入れます。従来においては、EUはアメリカに対してどちらかというとドルとユーロの関係と同様で弱い立場でしたが、同等性評価を入れることによって、評価する方という強い立場になりました。それがEUの戦略の1つです。この戦略があった為に、一挙に全世界にIFRSが広まりました。この戦略がなければIFRSはそれほど広まらなかったと思われます。そこの点でEUの会計戦略は非常に成功しているといえます。

すごいのはアメリカ等がすんなり受け入れたというか、そうせざるを得ない状況になったということです。このため、EUの立場が少し強くなりました。そこで、アメリカはIFRSで作成した財務諸表を外国企業にだけ調整表ないしに受け入れることを承認しました。このように、EU企業はアメリカにとっては外国企業なので、アメリカ国にIFRSを受け入れることを認めさせたという面では、EUの戦略が成功したと言えます。

■日本の会計基準 

米国との関係で行くと日本基準で作成した財務諸表はアメリカでは残念ながらそのままの形では認められていません。ご存知の方がいるかと思いますが、トヨタ等は、アメリカ基準であるSEC基準を使って連結財務諸表を作っています。日本では、連結に関しては自国基準とアメリカ基準(及びIFRS)を承認しています。そのため、日本では単一の日本基準で、全ての上場企業が連結財務諸表等を作成しているかというと、そうではなくSEC基準で作っているものが数十社あります。米国国内においては日本基準で作成した場合はSEC基準に調整する必要がありますが、調整表の作成は面倒くさいですし、SEC基準が日本において認められるので、日本企業は最初から連結財務諸表をSEC基準で作ります。そういうことを考えると、アメリカ基準は、アメリカの会計の世界戦略に乗っていますし、この面では、日本は非常に弱い立場です。

そのため、先程から日本が国際会計基準とどのように向き合って行けばいいのかという話をずっとしてきましたが、本当に、文化・習慣の違いを感じる話が多いです。IFRSというのは、EUがリーダーシップは取って設定していますが、EUだけで設定しているわけではなく、一応全世界からボード・メンバーを選出して基準設定するようになっております。勿論、そこに日本も入ってはいますが、15のボード・メンバーの席にたった1人です。アメリカは通常4・5人ボード・メンバーに入っています。他方、EU自体はフランスやイギリス等の国々がボード・メンバーになっていますので、アメリカと共に強いリーダーシップを取るような構造になっています。

このように、日本の会計戦略は、あまり明確でも、強力なものではないということがいえると考えられます。

分野: 岩崎勇教授 |スピーカー:

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