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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本企業のアジアへの対外直接投資(2)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

日本企業のアジアへの対外直接投資(2)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

12/01/12

今回は、国際協力銀行とJETROのアンケート調査から、最近の日本企業のアジア
への直接投資の動向をもう少し見て行きましょう。

海外への直接投資は増えていますが、昨夏に行われた国際協力銀行の今年度調査に
よると、インド、ベトナムを除くと、日本企業が海外に持っている拠点数の増加には
一服感が出ています。直接投資の投資先として大きな割合を占めるアジアでも、拠点
するはむしろ減少傾向に転じたということになっています。これは、海外の拠点を
撤退する動きと、新規に進出する動きが交錯している、或いは企業が拠点の増加より
も既存拠点の強化にウェイトをシフトしていることを示していると考えられます。
同時に、インドやベトナムといった海外進出先としては後発に当たる地域に付いては、
投資が新規の拠点の設立に繋がるのに対して、既に進出先としてそれなりに成熟して
きている地域については、追加的な投資が新規拠点の設立に繋がる割合はあまり高く
ないということになります。

中国についても例外ではなく、国際収支統計で見たように、直接投資金額は巨額で
しかも増加しているのに、アンケート回答企業が保有する海外現地法人数や海外生産
拠点数はここ2年ほど減少しています。これは中国が進出先として成熟しつつある
ことを示唆していると考えることができます。一方、JETROの調査によると、
回答企業のうち中国に生産拠点を有している企業の割合は5割弱と、次に高いタイに
生産拠点を有する企業の2倍あるものの、この比率は頭打ちでむしろ減少傾向に
なっています。それに対して販売拠点を有している企業の割合は5割超で、こちらも
トップですがまだ増加中です。これらを考慮すると、日本企業の投資先としての
中国の意味合いが、「生産基地」から「市場」へと変化しつつあることが読み
取れるでしょう。

さらにJETROの調査では、各国で「今後3年間にどういう機能を拡大するか」
という興味深い設問を設けていますが、回答としては中国で販売・生産・研究開発・
地域統括・物流、全ての機能を強化するとしている企業の割合が他の国に比べて
圧倒的に高いのです。ところが前年の調査の数値と比較すると、中国では地域統括
としての機能を強化するという数字が若干高まった程度であったのに対して、販売
あるいは生産の機能を強化するという数字が高まったのは台湾、韓国、ASEAN、
あるいはタイ、インドネシアなど他の地域でした。中国は投資先としてはかなり検討
され尽くした状況かもしれません。

また、生産拠点としての再編、移管状況やその見通しについても聞いていますが、
「どこから移管するか」という設問に対しては、日本から移管するとしている企業が
約5割と多いわけですが、それでも前年の7割弱から低下しています。その一方で
中国からが9%から16%、ASEANからも8%から12%へと増加しています。
逆に「どこへ移管するのか」、つまり移管先としては、中国は前年の5割弱から
3割強へと大きく減少し、ASEANは大体3割で横這いであったのに対して、
それ以外の地域が2割弱から3割弱へと増加しています。これ等から、投資の動き
の流れは一様ではありませんが、中国での生産機能の拡充という、これまでの直接
投資の潮目は変わりつつあることが伺われます。

こうした生産拠点移管の理由としては、生産コストの上昇がトップ、機能を一カ所に
集中することのリスクが高まってきたという認識がそれに続いています。一方、中国
でのビジネス上のリスクについて聞いた設問の回答として、「知的財産権の問題」
や「法整備」の問題に続いて「人件費の高騰」が上位に挙げられています。また、
中国における生産拠点数は他の国を圧倒していますが、タイの洪水のときも、一か所
に生産拠点が集中していることが問題になりました。必ずしもリスクは災害に限り
ません。政治的あるいは為替相場のリスクもあるでしょう。生産拠点に関しては、
中国プラス1の動きが強まっていることが考えられます。

両調査からはもっと多くのことが読み取れますが、あえて一言で結論付けるならば、
日本企業による海外進出は、多くの中小企業による進出と、生産基地としての中国、
新興アジアから、それ等の国の国内市場へと、ターゲットの変化も加わって、非常に
多様化しているということです。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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