QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本企業のアジアへの対外直接投資(1)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

日本企業のアジアへの対外直接投資(1)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

12/01/11

今回と次回の2回、日本企業のアジアへの対外直接投資の状況についての話です。

最近の円高、震災の影響、TPP、法人税の引下げ問題など、様々な機会に日本企業
が日本から出ていってしまうという話が出ています。つまり日本企業が、海外で現地
資産を増やしたり、研究開発など本社機能を海外にもって行ってしまうという話です。
実際はどのような状況なのか、統計の見方も交えて考えてみましょう。

企業が上記のような活動を行う場合、海外に投資するということになりますが、この
場合、海外における起業活動を直接支配する目的で行う投資なので「対外直接投資」
として、単に資金運用の目的で外国の政府や企業が発行する証券などに投資する
「対外間接投資」とは区別されます。この、直接投資の状況を見るためには幾つかの
統計・調査が利用できますが、その中には直接投資を網羅的な報告に基づいて金額を
集計した統計と、アンケート調査に基づいて件数ベースでまとめた統計の大きく
2種類あります。

まず網羅的な直接投資の統計としては、財務省がまとめる国際収支統計に含まれて
います。ここでは、現金の送金を行う際に提出する支払報告書等に基づいて作られ
ますが、原則として子会社設立や子会社への融資等、10パーセント以上出資する相手
との資金取引が計上されます。ただ、網羅的ではありますが、必ずしも現地生産等、
海外での企業活動の活発化には繋がらないような、資金取引的性格の強いものも逆に
含まれてしまうという問題があります。特にタックス・ヘイヴンにおいた子会社に
仲介させて行う証券投資など、かなり巨額の撹乱要因が含まれて、統計が大きく歪む
事があります。ただ長い傾向を見ることはできますし、またアジア諸国に対する直接
投資については、これまでのところはそういった特殊要因の影響はあまり顕著では
ありません。アジアの子会社に対する一時的な融資のようなものも含まれはしますが、
多くは実際の拠点設立やその拡充等につながる数字が計上されていると考えられます。

国際収支統計は円建てで発表されていますが、最近の対外直接投資金額を見ると、
2000年以降の傾向として、2007、8年をピークに2010年までやや減少していますが、
2011年は前年比では急増しています。特にアジアでは前年比で5割増しと、ピーク
だった2007、8年の数字に迫る勢いになっています。ただ、これも円建てなので、
実態を十分に反映してない部分もあるのではないかと思います。というのは、ドル
建てに直したものを見ると、2000年代はコンスタントに増加しており、2011年は
円高の効果も重なって円建てで見た以上の急激な増加になっています。特にアジア
向けについては目覚しく増加しています。

アジアの中では中国が全体の3分の1を占め、他を断然引き離しています。中国は
アジア以外の地域を含めても断トツといえます。中国以外のアジアでは、韓国、台湾、
香港、シンガポールといったアジアNeedsや、タイ、マレーシア、ベトナム等のASEAN
諸国が主な投資先になっています。これ等の中でも特に2011年の伸びが大きいのが、
中国、インドネシア、ベトナムといった国々です。一方、インドについては、2008年
には中国に迫る程の金額がありましたが以後はドル建てで見ても減少傾向に陥り、
2011年になってもそれ程目立った勢いは見られません。

次に、アンケートに基づいた調査ですが、主なものとしては日本政策金融公庫の国際
協力銀行(旧日本輸出入銀行)による「我が国製造業の海外展開に関する調査報告」
やJETRO(日本貿易振興機構)の「日本企業の海外展開に関するアンケート調査」など
が有用な情報を提供してくれます。これら2つの調査の内、JETROの方は企業の海外
展開という事で、非製造業に関する設問も含まれている点が国際協力銀行のものと
異なりますが、製造業の回答企業数では大体600社とほぼ同じ規模で、それぞれ
異なった角度から設問が設定されており、どちらも興味深いものです。ただ、両社は
調査のタイミグが若干異なる点、注意してみる必要があります。

こういったアンケート調査の直近のものを拾い読みして見ると、国際協力銀行の調査
では、「海外事業を拡大する」と答えている企業が過去最高の87パーセントに達して
いますが、その内9割は「国内事業を維持、あるいは強化する」と回答しています。
やや意外な感を持つ人もいるかもしれませんが、海外に出て行く企業は国内の事業
にも積極的に取り組んでいるというのは面白い点です。JETROの調査では、「中国に
おけるビジネスリスクが過去1年に高まった」、としている企業の数が多いのですが、
それでも、「中国でのビジネスを拡大する」と回答している企業が6割以上あり、
「維持する」と答えた企業まで含めると8割を優に超えています。中国ビジネスは
日本の企業にとってポイント・オブ・ノー・リターンを超えたといえるでしょう。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ