QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > タイの洪水 (財務戦略/村藤 功)

タイの洪水 (財務戦略/村藤 功)

12/01/06

昨年、日本企業は二つの天災におそわれました。ひとつは三月の東日本大震災で、これでサプライチェーンが切れて大騒ぎになりました。そしてようやく立ち直ったと思ったら、今度はタイの洪水でやられてしまいました。

洪水が始まったのは、タイの中部のアユタヤです。アユタヤ遺跡など様々なお寺がある結構綺麗なところです。毎年タイでは、六月から十月が雨期となります。十月くらいになると、軽い洪水が毎年起きます。今回の洪水は七十年ぶりに起こった大規模なもので、過去五十年間で最悪と言われています。

11月末の段階で615人が死亡、被災者は300万人、日本の岐阜県くらいの面積の農地が冠水してしまいました。日本の新聞を見ていますと、北の方からバンコクに向かって工業団地が順番に冠水していったようです。最初はサハラタナナコン工業団地や、ロジャナ工業団地が冠水しました。徐々に冠水する工業団地が増えてきて、どんどん南へ向かい、ついにはバンコクに到達するという、怖い話になっていきました。東日本大震災の時は、東北が被災すると、九州の自動車工場も止まってしまいました。今回、タイの自動車部品会社が冠水した結果、アメリカの自動車工場が止まることとなりました。サプライチェーンが、タイからアメリカまで繋がっていたということです。

タイは自動車産業にとっては東南アジアの中心で、基本的にタイで製造し他へ出すということをしています。日系メーカーが八社ありますが、すべてその生産が止まってしまいました。冠水すると、他のところへ工場を作ろうにも1、2年かかりますので大変です。去年の11月半ばくらいに、排水作業がはじまりました。ポンプで排水を行いますが、これに一ヶ月くらいかかります。その後に清掃や電力などのインフラ復旧、金型など水に浸かって使えなくなった生産設備の入れ替え、空調設備の復旧などを行いました。道路や空港、鉄道は、11月末までにおおよそ復旧しました。年明けには、被災工場の七、八割くらいは元に戻ってきたようですが、電力供給など細かいことを含めると、完全に復旧するのは4月くらいになると言われています。

日系メーカー八社は、10月一月だけで二千何百億円の売上を失ったようです。10月の生産台数は49,439台という統計が出ていますが、これは前年同期比で68%の減少です。今回も、東日本大震災の時と同じく、調達できなかった自動車部品をどこかから代替調達するという話になりました。ホンダは自社工場が被害に遭いましたが、トヨタは大丈夫でした。ただ、調達する部品を作っている工場が被害に遭いました。どこか他のところから部品を調達しなければなりませんが、たとえば日本国内の部品会社で作るとなると、部品会社は派遣会社から人の派遣を受け入れなければなりません。タイ人が洪水で働けないなら日本へ連れてくる方法もありますが、ビザの問題もあります。日本の人材派遣会社は、部品の代替供給をする国内部品会社に人を多く派遣することになりました。しかしその反面、部品が来ないためにストップしてしまった、キャノンやトヨタの工場へ派遣する予定だった人を派遣できなくなりました。色々やっても製造が減少したため、年末のクリスマス商戦においても、売り上げ減少の影響が出ることとなりました。

日本で一番グローバルな産業は自動車産業と家電産業ですが、どちらにしても東南アジアでの中心はタイです。ですからタイの工場が被害に遭うと、様々なものが止まってしまいます。タイには、ウェスタンデジタルという、世界のハードディスクの三割くらいのシェアをもっているアメリカのメーカーがあります。ウェスタンデジタルは、生産の六割をタイに依存しており、11月の末頃に生産の一部を再開しましたが、元に戻るまでに半年はかかるだろうと言われています。ハードディスクドライブがないため、パソコンの出荷数も予定より少なくなりました。

タイ政府は、もともと洪水予防のためにさまざまな策を考えていましたが、政権が変わってしまったため、予定されていた投資をできなくなりました。今回タイ政府は、水がバンコクに来ないように防塁を築いて東西に流そうとしましたが、その結果別の地域に水が溜まり、また問題になってしまいました。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ