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選択は多い方が良いのか1(マーケティング/出頭 則行)

11/12/12

■シーナ・アイエンガー 

選択は多いほど良いのかという話を2回にわたってお話しします。「選択の科学」という本が最近出ました。著者は、シーナ・アイエンガーというトロント生まれの女性の学者です。

彼女は今41歳で、ご両親がインド人のシーク教徒です。トロントで生まれて、3歳の時に眼病を患い、高校の時に全盲になってしまいました。しかし、研鑽した結果、今はニューヨークのコロンビア大学ビジネススクールの教授になっています。専門領域は行動心理学ですが、特に「選択」に関わる心理にフォーカスを当てて研究をしています。

■選択の科学 

選択の科学は翻訳本が日本で出ていますが、元々の英文の方は「The art of Choosing」というタイトルです。これは昨年度、ファイナンシャル・タイムズ(The Financial Times)のビジネス書としてはベスト6に入っていますので、大変なベストセラーになった本であると言えます。この本をマーケティング的に解明していきたいというのが、今回の話の主旨です。

この本では、最初にロンドンの研究所のリサーチ結果が出ていて、社長・トップはそうではない人・一般の従業員に比べて長生きするということが書かれています。その理由を色々なデータを積み重ねて説明していますが、社長というのはとにかく選択の自由度を認識している人だと述べています。その選択の自由度が健康に非常にいい影響を与えていて長生きしているのであるというわけです。

このことには、欧米の雇用関係も反映されているでしょう。例えば、ルーティン化された作業だけをやっているような人たちは、小さなストレスが重なっていき、健康に悪い影響を与えていて、社長と比べれば長生きできていないというわけです。この本の話はここから始まっています。人生における自己決定権・選択権というのはもちろん民主主義の根幹です。そして私たちも、選択できるということは人をやる気にし、モチベーションを高め、そのことは人々の幸福につながるであろうと常識的には思っています。

■結婚と選択 

しかし、シーナ・アイエンガーは果たしてそうだろうか、選択はそれほどに幸福感に影響を与えているかと問題提起します。1つ例を挙げているのは、シーク教徒の結婚慣習で、彼らは基本的に結婚相手の決定に当事者(花嫁、花婿)は関与せず、両家で決めてしまうとのことです。それ以外にも色々な慣習と制約があります。結婚相手とは結婚式まで見知りあうことをせず、結婚式当日に花婿が花嫁の顔を覆うベールを拭って初めてお互いを認識することになります。このような結婚慣習は世界的にみればそれほど例外的なものではないでしょう。シーナ・アイエンガーはシーク教徒の調査をします。自分で選んだ恋愛結婚をした人(欧米人)とシーク教徒のようなアレンジされた結婚をした人に、20年後に幸せかというようなことを聞くと、なんとアレンジされた結婚の方が幸せ度は高くなりました。約6割の人が幸せと答えたそうです。恋愛結婚をした人は、情熱が冷めることもあるのでしょうが、幸せな結婚をしたと思っている人は意外に少ないようです。そこで、選択とは何だろうと彼女は興味を持ち始めたということです。自由に結婚できた故に、更に結婚生活の中でも自由を求める結果、様々な不満が生じるのでしょう。シーク教徒夫婦の幸せは、ある意味では色々な制約がある中で結婚して子供を生んで、そして子供を育てるといった基本的なことに感じる幸福感です。幸せの尺度は一概に決められません。

■ジャムの研究 

彼女は選択とは一体何なのかということで、大学院生時代に有名な実験を行います。これはジャムの研究といい、マーケティング界で話題になりました。どういう実験か説明します。サンフランシスコに超高級な食品スーパーがあります。品揃え世界一と標榜していて、ジャムのコーナーには数多くのジャム・ブランドを揃えています。そこで彼女は24種類のジャムを置いた試食コーナーと、6種類のジャムを置いた試食コーナーの2つを作るという実験をしました。そして試食コーナーを訪れた消費者に1ドルのジャム購入割引クーポンが手渡されました。

結果としてジャム試食コーナーを訪れる消費者を100%として、60%は24品の試食コーナーの方に行って、40%は6種類の試食コーナーに行っています。しかし、両コーナーとも平均で2回(2ブランド)程度しか試食しなかったようです。実際購買に繋がったかどうか、すなわち1ドルのクーポン券を持って実際に商品を買ったかどうかというと、驚くべきことに、24種類の方で試食した人は3%しか買わなかったのに対して、6種類の方は30%の人が購買に繋がっているという結果が出ました。人の心の中で起こっていることなので非常に難しいのですが、多分選択には適正な幅というものがあり、その幅を超えてしまうと人間には処理しきれなくなってしまうのではないかと彼女は考えました。その幅とは何だろうというのが彼女の問題意識です。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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