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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > IFRSにおける包括利益計算書② (財務会計/岩崎 勇)

IFRSにおける包括利益計算書② (財務会計/岩崎 勇)

11/12/26

日本で損益計算書と呼んでいるものと同様のものが、IFRSでは包括利益計算書として扱われます。しかし厳密にいえば、両者は全く同じものではありません。すなわち、損益計算書では、基本的に実現したものを収益として計上しております。他方、包括利益計算書では、さらにその他包括利益すなわち時価が動いている部分を期末に評価し直した未実現損益もそれに計上しています。

包括利益計算書が導入される以前に、損益計算書の中でも、当期業績主義という考え方がありました。すなわち、以前においては、この考え方に基づいて現在の経常利益を計算するところまで、すなわち特別損益を含まないところまでで純利益を表示していました。その後、包括主義と呼ぶ考え方が採用されて、経常損益にさらに非経常的な特別損益を含めて当期純利益を計算・表示することとなりました。これが包括主義損益計算書と呼ばれ、伝統的に採用されてきた考え方です。このように考えてくると、現行の当期純利益にその他包括利益を加減した包括利益を含む金額を全体として損益計算書と呼んでも、理論的には支障はありません。しかし、実務的にIFRSにおいて英語で書かれているものを、意訳せず、直訳すれば、包括利益計算書という名称になります。

包括利益計算書の表示の方法には、ワン・ステートメント・アプローチとツー・ステートメント・アプローチがあります。ワン・ステートメント・アプローチ(1計算書アプローチ)では、当期の全ての損益を一つの計算書を用いて計算・表示します。この場合は、理論的には、包括利益計算書と呼ばず、単に損益計算書と呼んでも問題ありません。ただし、ツー・ステートメント・アプローチ(2計算書アプローチ)では、従来の損益計算書とその他の包括利益を計算するための計算書としての包括利益計算書が必要になります。従って、どちらのアプローチを選ぶかによって名称が異なるのは紛らわしいため、両者を統一的に表現するためには包括利益計算書とした方がいいのかもしれません。

また、その他包括利益の内容ですが、そこで表示される項目の代表的なものとして日本で一番有名なものは持合株式です。これは、その他有価証券に分類されるものです。この評価損益を、その他包括利益として包括利益計算書に計上します。他にも、連結を行う場合に外貨換算を行いますが、海外に子会社を持っている場合は、連結に際して換算差損益というものが出てきます。この時外貨換算調整勘定が生じ、その他包括利益に表示するというものが代表的な例として挙げられます。

次に、個別財務諸表と連結財務諸表についてです。現行では、IFRSを導入する場合には、上場会社の連結財務諸表に入れるということが前提の議論となっております。従って、個別までIFRSを入れるかどうかという点が次の論点になります。しかし、IFRSを仮に採用したとしても、当面は連結財務諸表についてのみ適用されると考えられています。しかしヨーロッパ等の例をみますと、個別にIFRSを適用して財務諸表を作成できるという国があります。従って、日本でも、理論的には個別と連結が違う基準で作られるのはおかしいので連単を一致させるべきという議論が出てくるわけです。現行基準では連単一致となっていますが、個別の財務諸表は国内では配当や税金等の利害調整に関わっている一方で、連結財務諸表への適用が想定されているIFRSは証券市場をベースとした開示に関わってきます。そこで、日本国内の状況を考慮することなく、IFRSの連単一致を主張すると、配当や税金の計算で調整が多く出て困ることになります。このように考える場合には、(理論的には連単は一致すべきだが、)そもそもの制度の目的が利害調整と情報開示とでは異なっているので、連単を分離した方がよいという議論も出てきます。

現在、IFRSを適用するか否かを企業選択させるために、IFRSの適用は任意適用となっています。この任意選択の制度を継続し、IFRSの適用を強制しないようにすることがベストであろうと考えられます。

分野: 岩崎勇教授 |スピーカー:

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