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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > マーケティングの歴史2(マーケティング/出頭 則行)

マーケティングの歴史2(マーケティング/出頭 則行)

11/12/21

前回は、マーケティングの歴史のその1ということで、大衆に向けてマーケティングされていたのが、分衆、そして分衆から個、One to One のマーケティングに変わっていったという話をしました。今回は、さらにそこにソーシャルメディアというのが登場してこの後どうなっていくのかというお話です。

■ソーシャルメディアの台頭 

ソーシャルメディアという言葉が世間に行き交うようになったのは2年くらい前からです。ツイッター、フェイスブック等で、3.11の時、被災地のコミュニケーション・ツールとして大活躍をしました。それから、「アラブの春」を牽引しているのもソーシャルメディアであると言って過言ではないでしょう。簡単に言えば、中東各国を揺さぶっている若者達は為政者の言葉よりはソーシャルメディアを通して仲間の言葉を信じたということです。政治家も為政者も支配下のメディアを通して様々なメッセージを流していますが、そういうビッグ・ブラザーの言葉よりも仲間内の言葉の方が信じられるため、デモの群衆が集まっているということです。

同じようなことをマーケティング的にいうと、広告主のメッセージや広告・宣伝がかつてのようには信じられなくなってきているということでもあるのです。広告は所詮広告であり、自分に都合のよいことを言うのは当たり前で、それよりも仲間の言葉の信憑性が高いと思う人が多くなっているのです。仲間の評価、仲間の言っていることを信じるということです。為政者の言葉が信じられないのと同様に、消費者は広告主よりは仲間の言葉を信じるようになってきたということです。それは何を通してかというと、ソーシャルメディアを通してです。理由はそこには(ソーシャルメディア上には)自分達の仲間がいるからです。仲間というのはコミュニティです。今まで One to Oneマーケティングを支えていたインターネットがソーシャルな性格なものになって、コミュニティを生み出しているということでもあります。

■One to One からコミュニティへ 

ブームを引き起こしたマイケル・サンデル(Michael J. Sandel)はコミュニタリアンといわれています。彼の例を引くと、有名大学の教授の兄がマフィアのボスで指名手配中です。大学教授の弟は兄の居所を知っているようなのですが、当局の尋問に答えません。もう1つの例、ユナボマー(Unabomber、University and Airline Bomberを短縮した造語)はハーバード大学出の数学者だけれども、大学やエアラインに爆弾を送り込んで30名以上の死傷者を出したという確信犯で警察の手を逃れ、隠遁生活を送っていました。弟が逡巡の末、正義・公正という規範に準じ、犯人は自分の兄ではないかと、FBIに通報します。マイケル・サンデルが問うのは、マフィアである兄の居所を言わない大学教授は本当に正義・公正に反しているのか、ということです。家族愛や仲間意識は確かに存在していて、そのようなコミュニティへのロイヤリティは社会の基盤でもあるのではないかというわけです。

ソーシャルメディアというのはコミュニティを作ります。独立した個人、疎外されがちな個人が仲間を求め始めているともいえるでしょう。そのため、今後の大きな流れを考える時に、1つはマーケティングの父といわれているコトラー(Philip Kotler)がいっていることです。最近、彼は「マーケティング3.0(Marketing 3.0)」という本を出しています。彼は製品中心が1.0で、消費者志向が2.0だと言っています。すなわち、消費者志向というのはもう時代遅れだということです。そして、消費者の参加と協同がバージョン3.0だというわけです。すなわち、消費者を仲間と考える志向で、仲間の参加と協同がマーケティング活動の核となるというロジックです。

広告主を信じない消費者が参加して協同するマーケティングが一体どういうものかというのは、私にとっては分かりません。ただ確かに、個人は孤独に耐えられなくなりコミュニティを求め始めているとは言えるのではないか? One to One からコミュニティへという流れがソーシャルメディアを通して生じているのではないか?

■セグメントから心の中へ 

もう1つの流れ、マスからセグメント、セグメントから個へ移った先とは何なのでしょう。これは心の中や頭の中になってしまいます。消費者心理学というのがこの頃の流行でもあり、消費者の認知の限界や選択における適正な範囲はどのくらいなのかというようなことが研究されています。つまり、消費者の無意識の領域を探っているわけです。

ジョージ・オーウェル(George Orwell)の1984という小説(村上春樹の1Q84はこの小説を意識しています。)では、人々の心が為政者(イデオロギーの守護者グループ)に操作されていくわけです。しかし、もしかすると、これからのマーケターは消費者の心の中に踏み入っていかなければならなくなるかもしれません。ちょっと気味の悪さを私は感じてしまいます。

消費者視点から見ると、ターゲットが One という個人からコミュニティというセグメントへと移る流れと同時に、消費者の心の中、頭の中に入っていく時代が来るのかもしれません。そこにもやはりインターネット、ソーシャルメディアが深く関わっていくでしょう。

今日の話は結論のない話です。ただ、大きな流れでみた時には、やはりコミュニティマーケティングというのは確かにあるでしょうし、マーケターは個の先である人の心の中により入っていこうとするでしょう。このようなマーケティングにどのような呼称が与えられるのか、私にもまだよく分かりません。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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